墓参りをしたらどうか。
そう私に言ったのは先日訪ねてきたおにいさんだった。
知らなかった、父さんが丁重に葬られていたなんて。
早く教えろよとか思ったけど、多分知っていたところですぐには行かなかったかもしれない。
なんだかんだ、踏ん切りつかなくて。

「いらっしゃいま──あ、あなたは……!」

「ああ、山中の……」

「こんにちは。どうしたんですか?」

「父親の墓前に供える花を買いに来たんだ」

花屋のカウンターにいたのは、あの山中一族の子だった。
サクラたちと同期、というのは聞いたことがある。
彼女はにっこりと笑うと、花の前で選ぶ私の隣に立った。

「墓参りって行ったことなくてね、仏花じゃないといけないのかな?」

「その人が生前好きだった花でもいいんですよ」

…………父さん、何の花が好きだったのか知らないや。
色鮮やかな花をなんとなしに眺め、結局は仏花に視線を向ける。
今日はとりあえず、これにしよう。
今度行く時に他のものにすればいい。
じゃあその仏花2束ちょうだい。
私がそう言えば、彼女は笑顔でラッピングを始めた。
墓参り、と言っても父さんだけじゃなくて、おじいちゃんのもだけど。

「はい、どうぞ」

「ありがと」

花束を2束受け取って、礼を言ってからその花屋を出る。
結構綺麗にラッピングしてもらったな。
まあ、十分だろう。
片手に花束を纏めて持って、反対の空いてる手はパーカーのポケットに突っ込んだ。
墓地へ向かうと先約が。

「……あ」

この子は日向の子だったか。
私を見て少し身構えるけど、私は気にせずその子の横を通り抜ける。
少し奥に進めば、名字の姓が刻まれた墓石が見えた。
ぽつぽつといくつか。
その中で一番新しいものには父さんの名前。
隣にはおじいちゃんの。
父さんとおじいちゃんの墓に花束を供える。

「…………今まで来なくてごめんね」

これからは、ちょくちょく来るよ。
もの言いたげな日向の子の視線を感じたけれど、それに見向きもしないで足早にその場を離れた。


20150202
戻る

ALICE+