体調を崩すところを見たのは初めてかもしれない。
苦しそうにしながらも眠っている姿を見るのは新鮮だ。
声をかけても「うー」と唸るような返答だけ。
父親の光さんがオレに殺されて、ひとりで逃げ出した後どうやって過ごしてきたんだろうか。
こうやって体調崩した時、寂しくなかったんだろうか。
中忍とはいえ当時弱冠10歳。
臆病だった彼女は、どうしていたのか。

「こうして見ると兄妹ですね」

「可愛いでしょ」

「寝てる時は。出かける時になんて僕たちに殺気向けるんですよ?見張られるのが嫌いみたいで」

「……それは仕方ない。子供の頃から暗部は大嫌いだから余計に」

そのおめん、きらい。
そう言って顔面目掛けてクナイ投げたことがある。
子供だったのに、忍者なんて知らなかったはずなのに、凶器なんて持ったことなかったはずなのに、名字というだけでその言動全てに納得してしまった。
納得しちゃ、いけなかったのに。
やけに布団を強く握り締める名前の手に気づいて、その手の隙間に指を入れればそのまま掴まれる。
少し穏やかになった表情、そして小さく呟かれる名前。
……そんな関係だなんて知らなかったぞ。
湯呑に茶を注ぐヤマトが笑いを噛み殺すようにして耐えていた。

「ほ、ほら!寂しいんですよやっぱり。体調崩すと人恋しくなるでしょう?」

「ま、そうだけどさ……」

きっと弱音を受け止めていたんだろう。
名前の近くにいたそいつは。
意地っ張りで天の邪鬼で、でもやっぱり臆病なところが抜けない名前の全部を受け入れたんだろう。

「ちょっと悔しいというか、何と言うか」

「ぷっ」

「笑うところ?」

「お兄さん通り越してお父さんかと思って」

「保護者なのはあってるよ。一応」

こうやって、少しは心を許してくれてるみたいだから。
その後、夕方になるまで手は掴まれたままで。
起きた名前が困惑した表情を浮かべたのは日が沈んでからだった。


20150206
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