光り輝くテラスタル

 ──すなあらし。
 五ターンの間、バトルの場の天候を砂嵐状態に変える。すなあらしが発動されている間は岩、地面、鋼タイプ以外のポケモンは毎ターン終了時に最大HPの十六分の一ダメージを受ける。
 ちなみに“すなおこし”も同様だ。
 天候を変えるか五ターンを凌ぎきればいい。相手が厄介なジムリーダーでなければ凌げる。……だが残念なことに相手は厄介なジムリーダー。すなあらしが終わるともう一度すなあらしを仕掛けてくる。すなあらし以外も天候を操作してくる。

 すなあらしの特徴はジリジリと体力を削ることだけではなく、岩タイプのポケモンの特防が1.5倍になる。つまり現在バトルコートに居るギガイアスの耐久値が上がっている。さらにさらに、初手でステルスロックを放っているので交代で出てくるポケモンも場に出ただけでダメージを喰らう。
 何度見ても、嫌な戦法だ。

 じわり、じわりと倒されていくカキツバタのポケモンたち。カキツバタは弱くない。長い間ブルーベリー学園のチャンピオンに君臨していただけの実力がある。間違いなく強いと言い切れる。ただ、今回は。相手が悪かった。タイプ相性はお互いが効果抜群で技自体もきちんと入る。だがダブルバトルに関してはキバナさんが上だった。誰が出てきてもコンビネーションが途切れない。どの組み合わせでも、自分の有利な場に変えられる腕を持っていた。

「これが、“トップジムリーダー”か……」

 アオイちゃんが息をのんで見つめている。勉強になるよね。私も今、思ったところだった。
 すなあらしが終わったタイミングでカキツバタがジュカインを繰り出す。キバナさんもフライゴンを戻しヌメルゴンを出した。……今度は“あまごい”だ。

『一撃で倒せていたら活路はあったかもな』

 ジュカインのリーフブレードは、特性そうしょくにより草タイプの技を受けても無効化される。相性有利のフライゴンを倒すつもりだったんだろう。火力のある技を無駄撃ちさせるなんて、交代のタイミングが神がかっている。くっ、見てるこっちまで胃がキリキリしちゃう。
 雨を降らせたヌメルゴンが狙ったのはジュカインではなく、もう一匹のキングドラ。

『ヌメルゴン!かみなり!!』

 あまごいで天候が雨に変わった今、命中率の低いかみなりは必中技となってキングドラを襲う。次に出すポケモンがやられないためにキングドラから先に倒したんだろう。……私の予想は当たり、キングドラを倒した後ヌメルゴンをすぐに引っ込めてコータスを場に出した。
次の天候は……“ひでり”。

『……やーな戦い方ぁ』
『お褒めの言葉、嬉しいねぇ!』

 カキツバタは最後の一匹、ブリジュラス。
 そして起死回生のテラスタル。威力を上げた攻撃がフライゴンに入る。半分以上削るが倒れはしなかった。フライゴンのドラゴンクローがブリジュラスへ。そしてコータスの背中から噴き上げたのは炎。“ふんえん”だ。味方にも当たる範囲技だけど、フライゴンは倒れなかった。カキツバタ側の二匹には……効果抜群だ。

 危なげなく二匹を沈め、勝利を掴んだのはキバナさん。同じドラゴンタイプを扱うカキツバタでさえ余裕をもって倒してしまうとは。やっぱり、強い。

『煽ってくるだけの力は持ってるな』
『そりゃ、……どーも』
『学べるのは学園内や自分の居る地方だけじゃない、ってのをオレさまからのアドバイスにしとくな。いいか?オレさまが居るのはガラル地方のナックルシティだ。いつでも学びに来い。オレさまが直々に相手になるぜ、なぁカキツバタ!』
『オイラみたいな奴までスカウトすんの?手当たり次第がすぎねぇ?』
『手当たり次第ではねぇよ。緩くてやる気ない素振りしてるが、観察眼はある。バトルの腕もある。状況の見極めも上手い。なによりポケモンからの信頼が厚い。これほど見込みがあって、なおかつ!クソ生意気な奴は大歓迎だぜ!』
『買い被りすぎだけど。……なかなか変わったお人だねぃ』

 握手を交わして、二人はバトルコートから離れた。
 キバナさんは手持ちのポケモンたちを回復しにカプセルの方へ向かう。

 一緒にバトルを見ていたアオイちゃんが立ち上がった。その顔は、先程まで泣いていたとは思えないほど真剣で纏う雰囲気も全く違う。ここに居るのは、パルデア地方のチャンピオンランクを取得して、ブルベリーグの頂点に上り詰めた……チャンピオンのアオイちゃんだ。

「……ツムギちゃん。ここにはカキツバタが来るから、一緒に居て?私も準備してくるね」
「アオイちゃん……」
「ツムギちゃんからの応援が欲しい、けど。無理強いはできない。私、あの人を……キバナさんを倒すよ!私たちの本気、見せなきゃいけない」

 真剣な表情から一転。にっこり破顔する。

「簡単に、返してあげないんだから!」
「アオイちゃん、……ありがとう」
「そうだ!空のモンスターボール、渡しておくね。そのモンメン、まだ野生なんだよ?」
「えっ、野生!?」

 このもふもふモンメン、野生なの?アオイちゃんが捕まえたのかと思ってた。そっか。
 手のひらの上にコロンと乗ったモンスターボール。
 膝の上にいるモンメンに視線を移すとしっかり目が合う。

「モンメン、良ければ私と友達に、」
「モンメ!」

 頭で開閉ボタンをカチッ!と押した。えっ、なに!?なんて驚く暇もなくボールへと吸い込まれたモンメン。ゆらゆら揺れて、綺麗にカチッ!とボールが閉じる。

「……自分から入った?」
「……こんなこと本当にあるんだ」
「ロトム以外では初めてのゲットだね!」
「そう、だね。よろしくね、モンメン」

 手のひらのボールが揺れた。私の初めてのポケモン。
 ロトムみたいに仲良くしてくれると良いな。

 ゲットを見守ってくれていたアオイちゃんが再びキリッと表情を引き締めた。それじゃあ、行ってきます!と気合いを入れる彼女へ、行ってらっしゃい、と見送ることしかできない。……今からキバナさんとバトルするアオイちゃんにどう声をかけたらいいのか。情けないことに、わからなかった。
 保健室を出たアオイちゃんと入れ替わるように、カキツバタが入ってくる。開け放たれているカーテンを静かに閉じてベッドの方へ近づいてきた。
 服がちょっと砂っぽくて、しっとり濡れている。

「負け犬のご帰還でーい」
「カキツバタ……、お疲れ様」
「ん。ポケモンたちはめちゃくちゃ頑張ってくれた。オイラも本気だったん……だけど、な」
「見てたよ。本気で戦ってくれてありがとう」
「……おう。……悔しいったらねぇや」
「ふふ、カキツバタから悔しいって言葉が出るの、なんか嬉しいな。まだまだ強くなれるね」
「それ誰目線のセリフ?親戚のおばさ」
「お姉さんにして!せめて!」
「へっへっへ、そうだよな。ドラゴンから宝を掻っ攫うには……強くならなきゃ、だ」

 私の目の前に来た時にはちょっとしょんぼりしていた前髪も、少しだけ元の形に戻ってきた。緩さの権化なカキツバタが悔しがっている……って良い傾向、だよね。
 珍しく握られた拳。ちょいちょいと手招きしたら素直に近づいてくれたので、その拳に触れる。一瞬、強ばったがすぐに緩められた。

「カキツバタ、チャンピオンたちのバトルを見たいな。もう体は動くから、一緒に行こう?」
「……一緒に。オイラと?」
「そう、オイラと!はい、手を引っ張ってください。もし、何かに躓いたら全体重かけてカキツバタに倒れる予定だよ。しっかり歩いてね!」
「寄りかかり方が全力すぎるんだよなぁ」

 カキツバタの右手を握り、ベッドガードに手を付いて足を床へ下ろした。ぺたり、素足が床の感触を捉える。そこから一歩踏み出す。……うん、ちゃんと歩けた。これなら本当にバトルを見に行ける。自分の靴と靴下を見つけて、時間はかかったがきちんと履けた。

 スグリくんとのバトルはどこで始めるんだろう。やっぱり学園の入口にあるエントランスのバトルコートかな?
 そうそう、なぜスグリくんにチャンピオンとして白羽の矢が立ったかというと。

 一連の出来事でリーグ部を退部してしまったスグリくん。そんなスグリくんを再びリーグ部へと引き込んだのは、四天王とゼイユちゃん。長年チャンピオンに君臨していたカキツバタを倒し、頂点へ至った彼の実績。過去の並々ならぬ努力、現在の謙虚さとポケモンに対する知識の深さ。一度は手のつけられない暴君の如く……、うんまあ実際、だいぶ暴君だったけど、そうなってしまった経緯をリーグ部の部員たちに、一部事情は伏せるが話をした。すると部員たちは各々思うところ、悲喜交々ありつつも受け入れてくれた。
 そしてスグリくんは下位ランクから瞬く間に駆け上がり現在はアカマツくんの下についている。パーティのバランスの良さも学園内でピカイチ。

 アオイちゃんをパルデアのチャンピオンとして。“ブルベリーグのチャンピオンだった者”として自分よりスグリくんが代表に立つべきだ、とカキツバタが推しに推したのだと言う。

 ……カキツバタは人をよく見ている。

「おーい?ツムギちゃーん?」
「!はいはい、お待たせしました!」
「おう、んじゃ行きますかぁ」
「ちょっと待って」
「うん?どした」
「カキツバタ、両腕を広げてもらえる?」
「両腕?両手じゃなくて?」
「そう、腕!ほら、ぱかーっと開いて!」
「?なにすん、」

 返事を待たずにどーんとカキツバタの正面に飛び込んだ。自分の腕を背中へ回してぎゅう、と抱きついてみる。む、やっぱりカキツバタの方が上背あるな……?

「っ、ほんとに何してんの!?」
「頑張ってくれてありがとう、キョーダイ!」
「!……おう、いいってことよ。キョーダイ」

 遠慮がちに抱きしめ返してくれる。見てたよ。真剣なカキツバタを、ちゃんと見てた。
 顔を見合わせてお互い気の抜けた表情で笑う。さぁて行きますか。うん、行こう!体を離すと差し出された右手。逃げないよ?と笑えば、オイラが繋ぎたいだけ。と返ってくる。
 なんとも、可愛いキョーダイだ。

 エレベーターに乗り込み、上へ向かう。地上に近づくにつれて大勢の生徒の歓声や、バトル中のポケモンたちの鳴き声。技と技がぶつかり合う音。指示を出す二人の声までも、エレベーター内に聞こえてくる。
 到着してゲートを抜ける。受付を過ぎると目の前のバトルコートでは大迫力のダブルバトルが繰り広げられていた。リーグ部の人たちも在校生も、先生までもが集まって観戦している。

 立ち止まった私たちの元にゼイユちゃんが駆けつけてくれて、空いている所に案内された。

「……悔しいけど、スグが押されてるわ」
「え、でもジュラルドンが出てるってことは」
「ツムギ、あっちはあと一匹残ってるぜぃ」
「一匹残ってる……?」

 キバナさんの手持ちはフライゴン、ギガイアス、ヌメルゴン、コータス、バクガメス、ジュラルドンなはず。それでジュラルドンが場に出てるなら六匹目で最後だと思うんだけどな……。

「バクガメスは一度も出してないな」
「あ、じゃあサダイジャだ!」
「そいつも出してない。最後に残してるのかもだし、そもそも別のポケモンかもしれない」
「その二匹じゃない?キバナさんの切り札はジュラルドンだよ。でもあと一匹いる……?」
「チャンピオン相手でも余裕があるねぃ。いやぁトップジムリーダーの名は伊達じゃねぇや」

 カミツオロチとジュラルドン。お互いの攻撃がぶつかり、コートから激しい蒸気が噴き出る。白い煙がなくなるとそこに立っているポケモンが見えてきた。このバトルに勝利したのは……。

「強ぇなあ、オレの負けだ」
「いいや、お前も強いよ。その歳でここのチャンピオン。末恐ろしく感じるぜ。今回はオレさまの勝ちだった。だが次バトルしたらどうなるかわからない。可能性の塊だな!うちの新旧チャンピオンにスグリのこと、しっかり伝えておくな!」

 握手を交わす二人。
 スグリくん、負けて悔しさも見えるけど嬉しそう。いいバトルができたんだね。
 ゼイユちゃんがこちらに戻ってくるスグリくんを迎えに駆けて行く。私も、と足を一歩踏み出せば。繋がれた右手がそれを阻止するように強く引き止めた。振り返って、カキツバタ?と声をかければ、カキツバタは私ではなくバトルコートの方をまっすぐ見ている。こちらへ戻ってくるスグリくんに向けた視線ではなく……その先。コートの反対側にいる人を、見ている?

 反対側にいる……人。カキツバタの方を見たまま体が動かなかった。視線を背中に感じる。

「ツムギ、観念する時が来たな?」
「ふ、振り向けない……」
「んー?そんなら、ずうっとオイラを見ててもいいぜぃ?」
「そしたらアオイちゃんも見れなくなるじゃん……」
「あー、そりゃキョーダイが悲しむなぁ。おっそうだ、オイラで練習しとくか!」
「練習。なんの?」

 決まってんでしょーよ!

 先ほどの感謝のハグとは違い、繋がれた手を力強く引かれてカキツバタの腕の中へ飛び込んだ。腕の中に収まると、すごく……優しく包まれてしまう。するりと首筋に擦り寄られてくすぐったさに身を捩る。……ん、なんだ?耳の後ろあたりでスゥーッという謎の音が……。

「ハグする練習でーい!」
「は?ハグする、練習……?」
「そ。くぅぅ、オイラ好みの匂いがする〜〜!」
「キッッッッショいのよそれ。やめな?」
「ツムギにしかしてませーん」
「ちょ、目を覚ましたの今日でしょ!?何日かお風呂入ってない!それで匂うって……」
「匂うんじゃないの、好みの匂い。魂の匂いってやつ?」
「頭大丈夫?どっかぶつけた?正気?」

 緊張で動かなかった体がほぐれていく。緩い緩いカキツバタの空気に安心したんだと思う。
 匂いを嗅ぐのは本気で止めてほしいけど。ゾワゾワ感と鳥肌が止まらんのよ。やめようね!?


「──ツムギ」


 様々な声が入り乱れる、騒がしいエントランス。私に絡みつくほど近いカキツバタの声はもちろん聞こえる。が、他の生徒の声や会話を聞き取るのは難しい。そんな状況なのに……。
 なぜかキバナさんの声は、……届く。

「迎えにきた」

 じわり、目の奥が熱くなる。悲しいわけじゃない。辛いわけでもない。一番当てはまるのは戸惑い。本当は、会いたかった?ううん、会ったらダメなんだ。会いたいと思ってはいけない人。……もう、自分ではよくわからない感情が、頭の中と心の中でぐるぐると渦を巻き始めていた。キバナさんがいる。ここにいる。私を、見ている。
 振り向けない。……こわい。私は、私は……。

「ツムギ、ほら、オイラを見な?」
「カキ、ツバタ、どうしよう……。こわい、かも」
「うんうん。怖いよなぁ。怒ってるドラゴンの威圧ほど、身が竦むモンはないからなあ。まあアレはオイラに向けてんだろうけど。よーしよしよし。ちっとだけ、我慢してくれぃ」

 背中を摩りもう一度ぎゅうと抱きしめてくる。片腕が外れて、ぽんぽんぽんとボールを放ったカキツバタ。音がした方をゆっくり見てみると、カイリューにフライゴン、ジュカインが出ていて、私の背後に来たかと思えば三匹は横に並んで私を囲った。そしてそのままぎゅぎゅっと抱き着いてくる。並んでる、可愛い。意味わかんないけど。そっとカキツバタを見上げる。

「オイラの仲間が壁を作ってこわぁ〜いドラゴンの視線から守ってやるよ。安心しな」

 三匹ともニコニコ笑ってそれぞれ鳴いた。くっ、可愛い……!息を吐いてカキツバタから離れる。壁となってくれる三匹にお礼を伝えて抱きつかせてもらった。癒される……。

「ドラゴンストームの旦那ぁ、オイラいっちばん最初に言ったと思うんだけど。会いてぇ人がいるんなら、ブルベリーグ四天王とチャンピオンを倒せ……ってよ。全員倒したと思ってるなら、ざーんねん!あと一人、残ってるぜぃ?」

 オイラたちの、総大将が。

 バトルコートがざわついた。彼女の名前を呼ぶ人さえいる。生徒たちが割れるように道を空ける 。彼女はパルデア地方からの留学生。彗星の如く現れ、特別にブルベリーグへ参戦することを許された唯一の人。全ての四天王を倒し、瞬く間に頂点へ登りつめた。

「……チャンピオンが二人もいるのかよ 」
「そうさ。パルデアのチャンピオンであり、現ブルベリーグのチャンピオンでもある!」

 カキツバタの手持ち三匹はキバナさんから守る壁となってくれていたが、三匹に声をかけたら少し隙間を空けてくれた。そこから見えるバトルコート。
 グレープアカデミーの制服に身を包み、黒いグローブをギュッと締め、トレードマークの帽子を整える。大事なバトルの前の大切な身だしなみ。バトルコートの中央へやって来たアオイちゃんは……キバナさんを見据えていた。その姿が……とても、とても格好良い。

「初めまして、キバナさん。チャンピオンを務めるアオイと言います。準備はいいですか?」
「ああ、いつでも来い」
「違いますよ。ガラルへ帰る準備、です」

 アオイちゃんの雰囲気は、可愛さと笑顔が溢れる天真爛漫なものではない。ブルベリーグの頂点に立つ、チャンピオン。その風格が、纏うオーラが。観戦する全員を黙らせている。身を刺すようなピリピリとした緊張感がエントランス全体に広がっていく。

「……なるほど、こいつは“チャンピオン”だ」
「誰かのために戦う私は強いですよ」
「奇遇だな、そりゃオレさまも、さ!」

 二人のボールが宙を舞う。

 アオイちゃんが出したのはキョジオーンとマスカーニャ。
 キバナさんはフライゴンとギガイアス。
 先に仕掛けるのはアオイちゃん。マスカーニャのトリックフラワーが決まり、フライゴンに急所が入る。なんとHPをオレンジ色まで削った。持ち物はなんだろう、こだわりハチマキかな?キョジオーンはギガイアスにしおづけ。
 こうして最後のバトルが始まった。それと同時に壁になってくれていたカキツバタの手持ち三匹がボールへと戻される。そして手を引かれるがまま今まで立っていた場所から後方の観戦席まで下がり、そこに腰を下ろした。さも当然のように、カキツバタも私の隣へ座った。

「あの人バトルが始まれば対戦相手以外に意識がいかなくなるっぽいから。へーきへーき!」

 とのことで。観戦席の前方はテーブルにもなっている。そこへ腕を乗せてだるーんと溶けるように座るカキツバタ。もう少しシャキッ!と座りな?そう声をかけたらゆるゆると腕を下ろし、私に寄りかかってくる。なぜそうなる。

「お?ツムギ、モンスターボール持ってんの?」
「うん。モンメンを捕まえたよ」
「ああ、ツムギが助けたやつな」
「そう!もふもふしてて可愛いの」
「もふもふ。ぜひ触らしてくれぃ」
「枕にしないでね?」
「枕ならツムギの膝を借りるから大丈夫」
「借りる気なら私に許可を取りなさいよ?」

 出してあげたモンメンに触るカキツバタ。
 ほんとだねぃ!もっふもふぅ!もふもふもふ。もふ、もふ……。

「カキツバタ!」
「んお、寝てない、寝てないぜーい?」
「体が傾いてるから!重っ、ちょ、寄りかかりすぎ!アオイちゃんのバトル見えない!」

 ぐい〜!とカキツバタの頬と肩を両手で押して離そうと試みる。負けずに寄りかかりまくる、ゆる男。いつまで経ってもパーソナルスペースのバグが直らんなぁ!
 離すのを諦めて両手を離した、その──刹那。

「チャンピオン!!バトルに水差してすまねえ!ちょーっとだけ待ってくれないか!」
「えっ!?……?……ああ〜、はい。どうぞ!」

 キバナさんが大きい声を上げてバトルを止めた。
 申し訳ない、ありがとう。アオイちゃんへ声をかけてバトルコートから外れ大股で歩き出すキバナさん。え?こっちに向かって歩いてくる!?待って、なんで。心の準備が!
 慌てる私をよそに、カキツバタはどこ吹く風。余裕そうでいいなカキツバタ!

「バトルに!集中できねぇんだよ!!」
「ん"ん"っ!ふっ、ははははは!」
「ツムギ!!」
「は、はい!」

 汗や雨でしっとり濡れて、ちょっと砂にまみれた褐色の腕が私に向かって伸びてくる。
 ……が、体に触れそうなところでピタッと止まった。何度も手を広げては、握って。迷ったその手は拳を強く握り離れていく。突然の出来事に勢いで顔を上げてしまっ、た。
 ここに来て……初めて、目が合う。

「……ツムギ、だよな」
「……はい」
「オレさまの後ろでバトル見てて」
「キバナ、さん」
「おう。……くそ、早く勝って抱きしめたい。なぁ、もっかいオレさまの名前呼んで?」

 ふっ、と目元が優しく緩む。先ほどの鋭く射抜くような視線が嘘のように、見たことのある……柔らかな表情を見せてくれた。
 それにつられて私の表情筋も緩くなってしまう。

「……キバナさん」
「うぐぅ……!っ、カキツバタァ!あんまツムギにベタベタベタベタ触んな!べったり引っ付くな!なんなんだその距離感は!?近すぎるんだよ!」
「へっへっへ、オイラ、ツムギのことがだぁーいすきなんだもーん!それにしてもバトル中に観客席へ来るたぁ……いったい何を考えてんのかね?トップジムリーダー様の名が泣くぜぃ?そんじゃツムギ、向こうへ行っかい」
「お前はこっちに座ってろ……」
「ええ?嫌でやんす、ね、ツムギちゃん!」
「カキツバタが手を離さないので……」
「ほーらね!ちゃんとそっちに移動するんでドラゴンストーム様はとっととバトルへ戻ってちょーだい。うちのチャンピオンを待たせないでくれーい!」

 いい性格してんな、お前。眉間に皺をこれでもかと寄せたキバナさんはため息を吐きながら自分のバトルコートへ戻っていく。その後を追うように席を立ったカキツバタに手を引かれて、反対側の観客席へ向かう。

「へへへ、めっちゃくちゃ意識してたなぁ?全然へーきじゃなかったわ。いやぁ腹が痛ぇ!」
「カキツバタ、悪い奴だね……」

 少々中断したバトル。アオイちゃんに頭を下げて、ポケモンたちにも声をかけた。
 アオイちゃん側は、「ああ、カキツバタがまーたなんかしたの?納得」という鳴き声で、キバナさん側は「バトル中に何してるの!しっかりして!」そんな意味合いを含む鳴き声に聞こえた。私の中での変換だから間違ってるかも……。
 キバナさん側へ移る際にフライゴンが私のことに気づいたようで、目をパチパチと瞬かせ、「ふりゃりゃあ!」とひと鳴きすると……飛んできた!

「ふりゃ?ふりゃりゃ、ふりゃりゃあ、ふりゃー!!」
「うわわ、えっと、フライゴン?私は大丈夫だよ、ありがとう。バトル頑張ってね」
「ふりゃあ!」

 ニッコォ!!と満面の笑顔を私に向けて再びコートへ飛んで行く。じ、自由だな。

「ありゃ主人に似たな」
「そう、だね。ふふふ、似たんだろうねぇ……」

 フライゴン!こら!キバナさんに叱られているけど、え?なんで怒るの?キバナも行ってたじゃん。みたいな態度をとるフライゴン。相変わらず仲良しだ。

 アオイちゃんも今のやり取りに笑っていたが、さぁ!仕切り直しますよ!の一声で止まったバトルが動き出す。バトルコートに立っているのはキョジオーンとデカヌチャン。フライゴンとコータス。

 一進一退の攻防が続く。いや、僅かにアオイちゃんの方が一手先を読んでいる気がする。相性で上をとり、なおかつ攻撃力も高い。アオイちゃんもキバナさんと同じく魅せるバトルをする。一つ一つの行動でワッと歓声が上がるのもその証拠だ。私と一緒に冒険していた時のパーティとは違うメンバーで編成されているのも、なんだか感慨深い。子どもの成長って……早いんだね……。ほろり。私は親戚のお姉さんよ。

 バトルも終盤、アオイちゃんは残り三匹。キバナさんはフライゴンを倒されて、残り二匹。ジュラルドンと、ついに最後の一匹。ガラル地方でのキバナさんの切り札はジュラルドンだったのに、今回はどうやら違うらしい。

「ふー、流石に追い詰められてるな。……さて。今日ばかり今回だけでもオレさまの指示を素直に聞いてくれると……助かるんだが」

 そう言ってモンスターボールを高く放つ。……キバナさん、モンスターボールでポケモンを捕まえたんだ。ハイパーボールを使ってるイメージが強いから珍しい。ボールから飛び出してくるポケモンを見つめた。

「出番だぜ、ボーマンダ!」

 その瞬間、私とアオイちゃんの声が重なった。

 ボーマンダ。すごく、既視感がある。キバナさんは持っていなかったよね。新たに育てたのかな。それなら……、指示を素直に聞いてくれると助かる、って言う必要ないよね……?
 バトルコートへ出たボーマンダはアオイちゃんを一瞥、そしてなぜか後方にいる私の方へと振り返った。ぶわっ!と空へ舞うと嬉しそうに鳴き声をあげた。

「……まさか!?」
「お、チャンピオンは気づいたか?」

 こいつは、ツムギが育てたボーマンダだ。

「対オレさま用で、な」
「でもその子は誰かに送ったはず……」
「そう。その“誰か”ってのはガラルの現チャンピオンのことだ。特別に預かってきたんだ。間違いなくチャンピオンが主人、なんだけど。こいつはちょーっと気難しくてな?……主人以外の誰かをずーっと探してるんだ。ずーっと、な」

 なるほど、ユウリちゃんから預かってきたのか!でも……誰かをずっと探してる?ユウリちゃんの手持でユウリちゃんが主人なのに?

「ははーん、ボーマンダはツムギを探してたんだねぃ。そりゃ誰の指示も聞きたくないわな」
「え?私!?」

 私の声に応じるようにボーマンダが鳴く。私の、ボーマンダ?確かにあの子は……キバナさんを倒すために手塩にかけて時間もかけて、個体値厳選して性格も変えて技構成もあれこれ考えて……ガッチガチのバトル用で育てた。育てた、と、しても。やはり親はユウリちゃんのはず。……どうして私を探していたんだろう。

「たまごから生まれた時にそばにいた。キョーダイと長い時間をかけて一緒に育てた。向こうのチャンピオンと共にバトルに勝った。そして……姿を消した。あ〜、ツムギ。こりゃ親はツムギだと思ってるぞ?ずっとツムギの姿を見てたんだから。へっへっへ、ドラゴンストームの旦那、ボーマンダに嫌われてそ〜!」
「距離近いから全部聞こえてんだわ。おいコラ、カキツバタァ」
「おっと、図星だねぃ!」

 オレさまを嫌ってても、負けるわけにいかないってのが分かってるんだよ。
 ボーマンダは。

「連れて帰りたいよなぁ!ボーマンダ!」
「グルルルル、ギュァァア!!」

 羽ばたいた時の風圧が思っているより強く、バトルコート以外にも吹き荒れる。連れて帰りたい、……私を?あなたは私の元に、帰りたい、の?

「愛情深いだろ?ドラゴンってのは。たまごから生まれて、じっくり育てられて、努力値もコツコツ振られて、つきっきりで最終進化までさせてくれて。ドラゴンは他のタイプより成長が遅い分、愛情も深くなってくんだよなぁ。ツムギのこと大好きになるってモンよ」
「そう、なんだ……」

 キバナさんの指示に、一拍置いて行動するボーマンダ。それを見て笑いを堪えるカキツバタ。ワンテンポズレるが、その攻撃力は……絶大だった。
 アオイちゃんのドラパルトを一撃で沈め、最後の一匹、相棒のマスカーニャが出てくる。これでお互い二匹となった。マスカーニャとパーモット、ジュラルドンとボーマンダ。

 アオイちゃんがマスカーニャをテラスタルして、草テラスタルの姿へと変わる。

「アカマツとのバトルで初めてテラスタルを見たが……綺麗だよな。それでいて強くなるんだもんな。テラスタルの粒子を専用のボールに溜め込むのか。なるほど、こっちでもそういうボールを作れないか研究できそうだ」
「そちらの特殊な変化はダイマックス、でしたっけ?ここでは使えませんが応用できるなら面白そうですね!」

 キラキラ、クリスタルのように輝くマスカーニャ。とても格好良い。おそらく狙うのはジュラルドン。パーモットかボーマンダかな。素早さに軍配が上がるのはアオイちゃんだろう。

「なぁ、チャンピオンにカキツバタ。オレさまが今朝、このブルーベリー学園へ来たことに疑問を持たなかったか?」
「来たこと自体に疑問を持ちましたよ」
「オイラもアオイと同じく〜」
「そうか。まあ、それもそうだな。本来ならガラルから一日かければここへの到着は可能なんだ。だが、昨日は別の目的でパルデアへ寄っててすぐには来れなかった」
「別の目的で、パルデアに寄った……?」
「!……あんた、まさか」
「奥の手、ってのは最後まで残してこそ……だ」

 キバナさんを印象付けるドラゴンパーカーのポケットから取り出したのは黒く透明な、ボール。このバトルを見守る誰もが、見慣れてしまっているそのボール。

「なあ、ツムギ。オレさまは震えたよ。こいつを預かってステータスを確認した時。どう転んでも、あの日、お前はオレさまを倒す気でいたんだな」

 キラキラ、キラキラ。光の粒が収束していく。
 ──たくさんの宝石が集まるように。
 ──夜空の星を閉じ込めるように。

「輝きを魅せてくれ、ボーマンダ!!」

 テラスタルオーブが飛んでいく。ボーマンダに当たると、数多の結晶がボーマンダを包む。
 一瞬の間をおいて、結晶が勢いよく弾けた。

 ボーマンダの頭上に乗るのは五つのキャンドル。炎テラスタルの姿で再び雄叫びを上げた。

「……炎」
「おいおい、本当にパルデアへ足を伸ばしてたとは。こうなるのを見越していた?なんにせよ、用意周到だねぃ……。オイラたちとのバトルで見せなかったのも策のひとつで?」
「ああ、今回のとっておき、ってやつだ」

 そう、そうだ。ガラルでは使えないと分かっていたけど、ボーマンダのテラスタルタイプを炎に変えていた。ジュラルドンへの対策として。
 私はキバナさんを絶対倒す子を、育て上げた。奇しくも、マスカーニャの弱点を突く、炎。

 先に動いたのはパーモット。ジュラルドンのHPが半分まで削られる。そしてマスカーニャのトリックフラワー。攻撃力の上がったそれは、ジュラルドンの体力を削りきった。
 倒されたジュラルドンを労いながらキバナさんはボーマンダへ指示を出す。だいもんじ。

「へえ、かえんほうしゃじゃなく、だいもんじ!」
「ダイマックスするのを念頭に置いてたから、威力が高い方を覚えてもらってさ……」

 テラスタルタイプと一致の技。先ほどドラパルトを倒した時にHPが減ったのを確認したので、持ち物はいのちのたまで確定。一撃の威力は相当なものだろう。それを示すように、マスカーニャのテラスタルが割れて消えた。
 パーモットの攻撃は炎タイプへと変わったボーマンダに対して効果抜群が入らない。
 格闘が付いたパーモット。そこへダブルウィングを外すことなくボーマンダが襲いかかる。

「ダブルウィング。……残りの技構成は?」
「じしんと、りゅうせいぐん」
「なるほどねぃ。特攻に振ったんだな〜」
「そう。ギリギリまで攻撃と迷ったんだけどね。ダイマックスで一番ダメージを与えられる技がりゅうせいぐんだったから……特攻に振ったんだよ」
「完全にダイマックスが前提にあったわけか」

 ひええ、こえぇ。自分の肩をさするカキツバタ。一匹でこの反応だから、バトルガチ勢の皆さんのパーティや技構成、その他諸々、耳にしてしまったらひっくり返るんじゃなかろうか。私はボーマンダでその大変な労力……惜しみない努力を知ったので、もう二度としない。
 何度でも言う。厳選作業は二度としない。

 パーモットが倒れ、アオイちゃんの手持ちは全ていなくなった。バトルコートに立っているのは、ボーマンダ一匹だけ。キバナさんは今日、この一日だけで四天王とチャンピオン二人を倒してしまった。

「キバナさん、バトル、ありがとうございました。噂に違わず……とても強かったです」
「こちらこそ、良いバトルだった。ありがとう。ところでチャンピオンアオイ。スグリもだ。ガラルのジムチャレンジに興味はないか?」
「ジムチャレンジ、ですか?」
「ちょ!ちょいちょいドラゴンストームの旦那!手当り次第がすぎるんじゃねーかな!?パルデアのトップが出てくる案件になっちまうぜぃ!」
「うちの元チャンプのお達しでな!原石たちをバンッバンスカウトしてこい!ってよ!」
「ガラル人こわすぎ……戦闘民族かよ……」

 バトルが終わったことで、中央エントランスから少しずつ人が減っていく。生徒の中にはキバナさんにサインください!と駆け寄る子もいた。ジュラルドン見せてください!とか。他の地方のジムリーダーと交流、とても新鮮だろうし貴重だよね。先生が生徒に混じってサインをもらってる姿には思わずほっこりした気持ちになってしまった。

 横目に見つつ、アオイちゃんへ駆け寄り、手を握った。

「ツムギちゃん。……負けちゃった」
「アオイちゃん!かっこよかった、すごく!アオイちゃんもみんなも格好良かったよ!!」
「まさかボーマンダが出てくるなんて、ね」
「テラスタイプ、炎に変えてたの忘れてたよ」
「宝食堂だよね。ミントも使ったりしたっけ」
「特攻を上げるために、だよね」

 顔を見合わせて笑う。その目尻に涙が見えた。アオイちゃんがポケモンバトルで逆転負けしたことは……ない。悔しさゆえの涙。戦っていない私は何も言えない。言えない、けど。

「ありがとう、アオイちゃん。真剣に本気でバトルしてくれて。ありがとう……!」
「う、ううう〜!悔しい!この胸のモヤモヤ感!!すっごく悔しいよ!ツムギちゃん、後でパーティの編成について相談に乗ってくれる!?」
「私で、いいの?」
「ツムギちゃんが!いいの!」

 みんなを回復させたらリーグ部へ行こう!そう言って抱きしめられた。抱きしめ返すと、胸にぐりぐりと顔を押し付けて、数秒止まる。そして、いつもの眩しい笑顔で顔を上げた。
 涙は、見せないんだね。……強い子だ。

 悔しい、負けるの悔しい!と言いながら歩き出す。そんなアオイちゃんにスグリくんが声をかける。あの時はこの技だったかな、やっぱりあの子をパーティに入れた方がよかった?オレはこうしたらいいと思う。私はあの持ち物変えた方がいいと思う!んならまた後でバトルしながら試してみる?やろう!スグリ付き合ってくれる!?もちろん!
 二人でお互いのバトルの反省をしながら回復カプセルの元へ向かう。微笑ましく二人の後ろ姿を見つめた。この二人も仲の良い関係に戻ってよかったなあ、なんて。

 ふと、人の気配を感じて振り向くと。

「──ツムギ、」

 近づいてくるキバナさん。

「全員倒して、会いに来た」
「……どうして、ですか?」
「ツムギがオレさまを呼んだから」
「でも、私はキバナさんと何も関係ないです」
「あるよ。関係ある。……なあツムギ。オレさま勝ったよ。ツムギに会いたくて、頑張った」

 一人分の距離を空けて私の前にしゃがみ込む。

「よしよし、してくれる?」

 にっこり。その笑顔も……見たことがある。
 身長が高い、顔面偏差値も高い、人々を魅了し惹きつけてやまない、ガラル地方のドラゴンストーム。そんな彼の、とっても可愛い……ワンパチスマイル。

「くっ、う"っ……!私はこの笑顔に……弱い……!」

 少しだけ、この手が届く位置まで近づいて……。そっとオレンジのバンダナへ手を伸ばす。キバナさんの頭に触れる、直前で。手を掴まれた。

 カキツバタに。

「ストォーップ。はいはい積もる話がありやすねぃ!続きはリーグ部でしましょうや!」
「……カキツバタァ、良いところだってわかるよな?あ?負けた奴がなに仕切ってんだ?」
「へっへっへ!ツムギちゃんっ、帰ろーぜぃ!」
「おい!なに自然に手を繋いでんだよ!」
「逃がさないよーに!繋いでんの〜!」
「離せ、逃がせ。オレさまが捕まえる」

 空いている反対の手を捕まえようと腕を伸ばしてくるキバナさん。それをひらり、ふらり、私と手を繋いだまま躱わすカキツバタ。どうなってるのこれ、避けるの上手すぎでは?
 ふふっと笑みをこぼせば、カキツバタも笑った。

 さあて!今日のバトルはおしまーい!!ブルベリーグ部のみんな、及びブルベリ生徒の諸君、観戦と声援ありがとなぁ!オイラたちはこの通りボコボコに負けちまったけどねぃ!先生方、報告書は後日まとめて出しやーす!んじゃ!ここいらで解散〜!

 それだけ言ってさっさとエントランスを後にした。振り返るとキバナさんが苦笑いで着いてくる。「最初はめちゃくちゃ刺々しかったのに、最後は緩いなあ」と呟いていた。
 この緩さがカキツバタたる所以なのです。

 アオイちゃんもやって来て四人でエレベーターへ。四天王とスグリくん、ゼイユちゃんは先にリーグ部へ向かったらしい。乗り込む直前、空を見上げた。茜色に染まる空。
 怒涛の一日が……終わろうとしていた。


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