幕間の話‐2‐
お昼を食べた後だいぶ名残惜しみながらツムギと別れ、ナックルジムへ向かった。現着し、部屋へ入ると同時にレナが近づき緊急の要件を伝えてくれる。
ワイルドエリアでポケモンの大量発生が二つ出現し、その二種のポケモンが縄張り争いで衝突しているらしい。そいつらがまた厄介なポケモンたちだった。キテルグマとタチフサグマ。
一般トレーナーが近づけば確実に巻き込まれる。ただでさえナックル側のワイルドエリアにいるポケモンたちはレベルが高い。その中でも一度闘争スイッチが入ると凶暴性が増してしまう二種。目の前を通り過ぎようものなら「なんだテメェ!オレたちの縄張りに足を踏み入れといて!素通りさせるわけねぇだろ!」と難癖をつけられ強制的にバトルになる。
現地にはレンジャーが待機中で監視してくれているが、深く突っ込んで行けない。ということはだ。判断を下せる管理人、ジムリーダーを兼ねるオレさまの出番になる。もちろん縄張り争いを力技で止めることもできる。できる……が、自然の、野生のポケモンたちの争いを人為的に止めるのは良くない。人間がでしゃばったせいで生態系に影響を及ぼす。そういうことだってある。まずは現地へ向かって縄張り争いを見守る、だな。どちらかが相手を制せば事態は沈静化する。……はず。おそらく。どっちも縄張り意識の強いクマ系なのが問題なんだよな。敗れた方の動向も数十分は見ておきたい。
「スタジアムにリョウタ、宝物庫はヒトミに任せる。レナはワイルドエリア出入り口に通達を。その後は各持ち場の業務を頼む。書類系は後日で構わない。各ジムリーダーから連絡がきたらオレさまに直接かけるよう伝えてほしい。緊急性が低い事案が起こったらリーグスタッフにも手伝ってもらおう。そっちにはオレさまから通達しとく」
「キバナさま、縄張り争いの監視は時間がかかりますよ!」
「?ああ、わかってるぞ?」
「……下手したら、夜中までかかりますよね?」
「そうだな。……。夜中、まで……」
間。
「……ッ、オレさまは!ガラルの中心都市、ナックルシティの!ジムリーダーなんでね!やるべきことはやる!よぉし!!さっさと縄張り争い収めてきて良いか!?」
「ダメです!」
「野生の縄張り争いに手を出しては!」
「キバナさま、耐えてください!」
「タイミング悪くない!?オレさま日頃の行い、割りと良い方だと思うんだけどなぁ!」
「帰れない旨をお伝えくださいね……」
「リョウタァ!慰めろ!」
「いえ、それはツムギさんの役割なので謹んでお断りします。早く現地へ向かってください」
「レナァ、ヒトミィ……」
「「キバナさま、頑張ってくださいね!」」
ちくしょう、味方がいない。許さねぇ、許さねぇぞ!今夜はツムギと、ツムギとだな!
スンッ、と感情を押し殺す。耐えろオレ。今夜がダメでも明日がある。ツムギはオレの家にいる。……おっ、タイミングよく「おでかけしてきます!」という連絡と、不思議な生き物がビシッと敬礼しているスタンプが届いた。次いでにっこり笑うスタンプが。オレに笑顔を届けてくれたのか?可愛い、ツムギが。オレも一緒におでかけしたい。手を繋いで一緒に……。
大量発生してんじゃねぇぞクマ共……ッ!
「キバナさま、レンジャーが待ってます」
「わかったよ、行くよぉ!」
「キバナさま!」
「なに!?」
「我慢してくださいね!」
「……くっ、わかってる!!」
涙を流しながらフライゴンを呼び出す。フライゴンの背中へ跨り、急ぎワイルドエリアへ。くそっ、一刻も早く縄張り争いを終わらせてくれ!
──そう、願ったわけだが。全く収まりそうにない。現時刻午後九時。多数のキテルグマとタチフサグマ。進化前のヌイコグマとジグザグマ、マッスグマも当然のようにいる。バチバチにバトルしては休戦。どこから現れるのか、度々増える。減りもするが増える方が多い気がする。なんだ?どいつが増援を呼んでんだ?レンジャー数人と高台から動向を見守る。
ツムギへは連絡を入れた。ワイルドエリアでポケモンの大量発生があったこと。今夜はおそらく帰れないこと。戸締りをしっかり頼む、ということも。
……連絡した通り、朝まで帰れなかった。高台にベースを作りテントを張る。数人交代で監視を続けた。縄張り争いが鎮まったのは午前八時頃。二種族は同じタイミングで急にその場から離れて行った。接触しそうにない距離まで離れたのを確認して、オレたちも現地解散。
はぁ、一体なんだったのか。一度帰宅してツムギの顔を見……、
──ロトロトロト!
「キバナ!カブさんから着信ロト!」
「カブさんから着信……?珍しいな」
通話画面に切り替え、カブさんから話を聞く。要件は今回の大量発生のことだった。縄張り争いは終わり、一般トレーナーの通常通行もオッケーということを伝えたら、キバナくんお疲れ様、報告ありがとう!と労いの言葉をかけられた。カブさんの優しさに泣きそう。
ワイルドエリアのことは伝えたし、挨拶をして切ろうとしたら呼び止められた。「九時からエンジンシティでジムリーダー会議だけど……来れそうかな?」と……言われた……。ジムリーダー会議。今日でしたっけ?そう、そうね……。ちょうど今、スケジュール通知がポップアップされたわ。カブさんにシャワーを借りれるか尋ね、そのままエンジンシティへ。
ツムギに今日のスケジュールを送り、帰宅は夜になる……と伝えた。夜まで会えないのか。
「近くにいるのに会えないって何?」
「ふりゃあ〜?ふわわわぁ……」
「フライゴンも眠たいよなぁ。ポケモンセンターへ寄るからもう少し頑張ってくれ」
「ふりゃりゃ〜。ふりゃりゃあ?」
「ツムギ?いないよ、家だ。……オレだって帰れるなら帰りたい!」
ツムギをぎゅーーーーっと抱きしめて!頬を赤らめて笑う彼女を!堪能したい!癒されたい!でもオレは!ナックルシティのジムリーダー!!泣いてない、泣いてないよ!
エンジンシティのポケモンセンターに寄って手持ちのみんなを回復してもらう。毎度付き合わせて悪いな……。ここからは徒歩でスタジアムへ。スタッフルームにカブさんがいたので、挨拶後シャワールームを貸してもらった。軽食を取り、ひと息ついたらもうすぐ九時。
今回のジムリーダー会議は、オレがイッシュ地方へ……ブルーベリー学園へ向かった経緯を説明するために集まってもらった。なぜ説明するのかというと、イッシュにいる間の業務を各ジムリーダーに振っていたから。事後報告は必須だ。
「お前に、恋人だって?」
「まぁた炎上するわよ。いい加減、自重しなさい」
ネズとルリナが心底呆れたようなため息を吐く。やってられねぇ〜、と副音声、いや、実際口に出してんな。こいつらは本当に遠慮がない……。ツムギ本人はここにいないが、別の世界から来た人間であることを報告しなければならない。カキツバタも言っていた、情報共有の報告義務、ってやつだ。ジムリーダーは把握しておかなければならない。
オレの説明に驚くのは新米ジムリーダーの二人。
「……異世界から、やってくる?本当にそのようなことが起こり得るんですか」
「ルミナスメイズのもりでも、過去に何度かあったねぇ」
「!?ちょっとポプラさん!そのような話、初耳ですよ!」
「おや、話していなかったかい」
「アニキ、知ってたと?」
「……まぁね。ただ、眉唾……だと鼻で笑ってたけどな」
今はオレの保護下にあり、恋人であることも告げた。
「恋人!素敵じゃない!……あれ、でもキバナくん熱愛報道されてなかった?」
「どっちつかずは……感心しませんね」
「うんうん、どちらの女性にも失礼だわ」
「キバナくん……」
メロンさんは祝福してくれると思いきや痛いところを突いてくるし、マクワとヤローからはなんだか怒られてすらいるし、カブさんに至っては引いている。いつもネズとルリナの口撃から仲裁して味方寄りになってくれる人たちが引いた目で見てくるのは地味につらい。
案の定、野次を飛ばしてくるネズとルリナ。ポプラさんは笑っておられる。サイトウ、オニオンは……、えっ?お前ら寝てない?聞いてる?会議でオレのスキャンダルの話なんかしてごめんね!?
週刊誌の件はアポ取れたからとっとと終わらせる予定。そう伝えたら、ちゃんと動く気があってよかったと安堵された。アオイやカキツバタにも約束したことだし、大人としてツムギの恋人として真摯な態度を……、誠意を見せねぇとな。
ツムギがどういう人物かは追々知ってもらうとして。ユウリのボーマンダの育ての親だ。ということを教えた途端、全員の目の色が変わる。
手持ちは何匹?来年のジムチャレンジに挑戦するの?一度手合わせしたい。ボーマンダをどう育てたのか話を聞きたい。ぜひボーマンダとバトルしたい。会いたい。会わせろ。なんでここに連れてこなかったんだ。バトルさせろ。……エトセトラ。
ガラルのジムリーダーは血の気が多すぎないか?
この流れでブルーベリー学園のダブルバトルについても話す。オレとしてはガラルにあるスクール全てにダブルバトルを普及……させたいところだが、まぁ、現実は難しい。教育機関についてもどうしていくか、の話へと内容が広がっていく。強いトレーナーを育てれば、自分も強いトレーナーとバトルできるからな。せっかく元チャンピオンがオーナーのバトルタワーも出来たんだ。若い芽はどんどん育てていきたい。
こうして話をすること二時間弱。会議は無事終了した。
「あんたパルデアのチャンピオンに釘刺されたんでしょ。中途半端なことしちゃ絶対ダメよ」
最後にルリナがそう締めくくって。
それからエンジンシティを後にしたオレは、ツムギの元へ!……行きたいのは山々だったがシュートシティに向かう。チャンピオン・ユウリに会議の報告。あとダンデがいるか確認。ユウリへの報告は滞りなく済ませ、バトルタワーに足を向ければ「オーナーはまだ、」と受付スタッフが困ったように眉尻を下げた。
……あいつ、もうここに住めばいんじゃね?最上階あたりに住めば、あとは降りてくるだけだろ。もうここに住め。スタッフの心労軽減のために。頼むから。
昼を過ぎるとツムギから連絡が入った。「おにぎりを作ったので公園へ行って、みんなで食べてます!」モンメン、ボーマンダ、ロトムにツムギ。公園の木の下でおにぎりを食べる写真が添付されていた。そこにオレはいません……。悲しい。ツムギが作ったおにぎり、オレも食べたい。ちなみに今はワイルドエリアの巡回中だよ。くそっ。ホロリと涙が出そう。
電話をかけて声だけでも聞こうと画面をタップした瞬間、ロトムの着信音が響いた。
……なんだ、嫌な予感がする。
『お疲れ様です、キバナさま』
「おー、お疲れさん。……やだ、聞きたくない」
『バトルタワーから応援要請が』
「ダンデか?放っとけ、あいつはいつか帰ってくる」
『マスタードさんが探してこいと』
「てめぇの弟子だろうがぁ〜〜〜〜!?」
『キバナさま、お口が悪いです』
「へーい。で、目撃情報とかは?」
『そうですね、キルクス方面に……』
「それオレさまが行くべき?マクワに回そ?」
『マスタードさんのご指名です』
このジジィ!と叫ばなかったオレは大人。叫んだ日にはバトルでボコされる。理不尽。
特大のため息を吐いてフライゴンを呼び出す。
「!ふりゃ!ふりゃ〜、ふりゃりゃっ」
「帰んないよ……、ダンデ探し」
「ふ!?ふりゃ、ふりゃああああ!」
「オレだってやだよ〜、ツムギに会いたい〜〜!」
「ふりゃりゃあ!」
キルクス方面へ飛び、雪に震え、見つからず。キルクスタウンに着いてメロンさんに連絡をするも来ていない、と返ってくる。もちろんマクワも同様。方向音痴の思考はわからない。つまり予想がつかない。電話をかけても出ない。……出ろ……電話に出ろよ……!なんのためのロトムフォンなんだ、この野郎。奥歯を噛み締める。雪を払って飛びたつとネズから着信。
ネズの情報はエンジン側のワイルドエリアでダンデらしき人物をレンジャーが見かけた、と。ほんとか?疑心暗鬼に陥ってんぞ、オレは。
フライゴンもやれやれ、と首を振り空を駆ける。ほんっとやれやれだよ!世話を焼かせる男だ。ナックルシティ上空を通り過ぎ、エンジンシティをも通り過ぎ、ワイルドエリアへ。
上空はフライゴンが、地上はオレが。名前を呼びながら探す。ピクニック中の家族連れに声をかけて、ワイルドエリアでレベル上げ中のトレーナーたちに声をかけて、それでも見つからない。イライラしてきた。最初からイラついてはいたが。折り返しの電話もない。
だんだん日も暮れてきた。ここで再び着信。またも嫌な予感。
『……お疲れ様です、キバナさま』
「リョウタか、お疲れ。あいつ見つかったのか?」
『はい。先ほど……バトルタワーに現れたそうです』
「ちょお……っと、文句言ってくるわ」
『手は出さないでくださいね』
「出さないよ!ジュラルドンは出すけど」
『ダメですよ。落ち着いてください』
「で、今度はなに〜?」
『ナックルシティ内で火事が。放火した男を捕まえたのですが、火を放ったポケモンはワイルドエリアへ逃げてしまったようです……』
「……まさかアレか、例のモデルのファンか?」
『察しが良くて助かります』
「もぉぉ〜!オレさまのせいだけど、オレさまのせいじゃないやつ〜!!」
『そのポケモンはガラル本土にはいなくて』
「はぁ!?生態系が乱れる!誰だ!?」
『ファイアローです』
確かにガラル本土にはいない。が、確かヨロイ島には生息していたはず。現在アーマーガアがガラルの空を制している。空飛ぶタクシーの運び手としても活躍中だ。が、ファイアローが増えてしまえば生態系のバランスは絶対に崩れる。……それにしても素早さの高いやつが来たなぁ……。頭を抱えた。フライゴンも心なしか嫌な表情をしている。わかる。オレも全く同じ気持ちだ。本日何度目かの、空を飛ぶ。
今夜も家に帰れない。あー、ツムギが恋しい。我慢ができなくて電話をかける。数コールで出てくれた。ダンデも見習え。常に着信音量を最大にしとけ。
「ツムギ、昨日は帰れなくてごめん。今日も帰れなさそう。今からファイアロー探しなんだ」
『お疲れ様です。ファイアロー、火事の原因の子ですね。探して捕まえる……んですね。キバナさん、お体は大丈夫ですか?眠れてますか?』
「体は大丈夫、睡眠も。ただ、ツムギが恋しいよ」
『……私も、寂しいです』
絶対しょんぼりしてる。ツムギの悲しそうな顔が目に浮かぶ。オレの!恋人が!寂しいって!あのツムギが!寂しいって!!今すぐ、今すぐに自宅へ帰らせろ。
『キバナさん』
「ん。なぁに?」
『明日は帰ってこれますか……?』
「午前中に予定が入ってて、それが終われば報告書や書類関係を片付けるから、夜には……」
『わかりました。カレーを作って待っていますね』
「ほんと!?嬉しい。急いで帰ってくるよ」
カレー!ツムギ作ってくれるの?マジか。明日は帰る、絶対帰る。どんな味付けなんだろう。以前ワイルドエリアでユウリと作ってくれたカレーはめちゃくちゃ美味しかった。
明日を楽しみに、ファイアロー捜索も頑張れそうだ。
『キバナさん、』
……電話越しのツムギの声、好きだなぁ。もちろん面と向かっての肉声も好きだが。何にも配慮しないで素直に正直に言うと、ツムギの声は下半身にクる。本能が訴えてくる。ツムギが欲しい、って。脳に響いて残る声だ。あー、好き。名前を呼ばれるのがこんなにも嬉しい。
無言でいたからか、もう一度『キバナさん』と声をかけられる。
「なぁに、ツムギちゃん」
『……あの、お忙しい中すごく申し訳ないん、ですけど』
「うん?どうしたの?」
『す、好きだよ、って……言ってほしい、です』
か……っ、可愛いーーーーーーーー!!!!!!!!!!
あー!!可愛い。オレの恋人可愛い〜〜〜〜!心臓がヤバい。可愛すぎて叫びそうだった。好きだよって言ってほしい!?何度でも言わせていただくが!?かわ、かっわいい〜……!
今の心の叫び、声に出てなかった?ワイルドエリア上空で叫ぶと下から撮られる。そしてオレのアカウントが炎上する。我慢だ、叫ぶのは心の中だけにしとけよキバナ!
「ツムギ、好きだよ。だぁいすき!」
『私もキバナさんが好きです……』
「帰ったらいっぱいハグさせてね?ツムギ不足でしんどい。フライゴンもそうだよな?」
「ふりゃりゃあ!ふーりゃ!ふりゃあ〜!」
「ははは!ツムギに会いたいってよ!」
『ふふ、お二人ともお気をつけて』
『おう!はぁ、ツムギの声を聞けてよかった。元気が出たよ!また、明日な!』
早く、会いたいです。そんな小さな呟きもしっかり耳に届いた。帰る。定時で帰るぞオレは。あー、帰りたい。今すぐ。でも帰れない、オレの馬鹿。身から出た錆。適当な記事を適当に無視していたが故の報い。……クソが。どんどん心の声が汚くなる。許さねぇ、オレ自身を。
気合いを入れ直してワイルドエリアへ。ファイアローは夜目が良いんだっけな?鳥ポケモンらしく、大人しく木の枝に止まっててほしいもんだ 。
低空飛行で飛び続ける。そろそろフライゴンも体力的に限界が近い。頭を撫でると鳴き声を上げた。……早く帰りたいから早く見つけよう、か。そうだな、全くその通りだ。
大型の鳥ポケモンがいそうな場所をしらみ潰しに探し、……ついに見つける。オレが何年このワイルドエリアを巡回してると思ってんだ。なめんじゃねぇぞ。どれだけ探しても見つからないのはダンデくらいだ。……あいつのスマホにGPSアプリを入れよう。ユウリとホップと、リーグ本部に要相談、だな。
急いでナックルジムに連絡。ファイアローを保護した旨を伝え、放火した犯人の元へ。なんとか今日中に落ち着きそうだ。空を見上げれば真っ暗。薄雲がかかっていて、残念ながら星はひとつも見えない。
留置所でファイアローをボールへ戻させると、そのまま回収。ジュンサーさんに犯人とファイアローのボールの引き渡しを行う。手続きを済ませた頃には、日付がとうに変わっていた。猛烈に眠い。ジムスタッフ、スタジアムのリーグスタッフ全員の疲労がやばい。明日のスタジアム開場は二時間ずらそう。これくらいは許される。……本音?一日休場させてくれ。だ。まぁ無理な話だが。明日の開場時間を全員に通達して帰宅させる。
みんなお疲れさん……。今日もありがとうな……。
オレも歩いて帰宅。これ以上フライゴンに無理はさせたくない。静かに家へ入る。当然ながら部屋はどこも暗い。起こさないよう気をつけながら、ゆっくりツムギの部屋のドアを開けて様子を確認する。……眠っているみたいだ。寂しい思いをさせてごめんな……。
触れたい気持ちをぐっと堪えてシャワーを浴びに向かう。シャワーを終えたら寝よう。睡眠大事。もう正常に頭も回らない。とにかく眠い。
手持ちのみんなを部屋に出し、各々眠ってもらう。みんなも疲れ切った顔をしている。オレもベッドへ沈むと、気絶するように意識を飛ばした。
◇ ◇ ◇
──朝。アラームの音で目が覚める。
今日はジムの方へ訪問がある。その準備のため、早めに家を出なければならない。夜と同じく、ツムギを起こさないよう静かに支度をする。
出発、しないとだが。あー、ツムギに触れたい。抱きしめたい。そっと部屋に入った。気持ち良さそうに眠るツムギ。このまま飽きるまで、飽きないからずーっと眺めていたいが……。行かなければ。額にひとつキスを落として、家を出た。
午前十時。ジムの応接室へ訪問客。客、と呼んでいいものか。相手は週刊誌の編集者と例の記事のライター。特に茶なんぞ出さない。暗に早く帰れ、という意味もある。本当に招かれざる客、以降は招きたくない客……だからなぁ。
「貴重な時間を我々に割いてくださり、ありがとうございます。ドラゴンストーム・キバナ」
「お気遣いどうも。お呼び立てしたのはこちらなので。早速本題に入りましょうか」
「世間話は結構ですか?」
「スケジュールが立て込んでいるもので」
きっちり話すからそれ聞いたらとっとと帰れよな!とは言えない。頑張れ、温厚なオレ。なるべく素を出すなよ。
まずは記事の真相についてお聞きしたいのですが。と、編集者。真相。んなもんないけど。モデルの方とは仕事上だけの付き合い。オレの私生活に一切関与はない。リーグ本部にも否定の連絡が来たことをオブラートに包んで返す。あっちも迷惑してんだよ、わかんねぇのか?わかろうとしないだけか?あぁん?
当然付き合ってすらいないから熱愛に発展しようもなく、結婚なんて論外。根も葉もない噂だ。その噂の出どころもそちらの週刊誌だけどな!取材もすっぱ抜き方も雑なんだよ!
「ではなぜ、今回我々を呼び出したんです?」
「そちらの記事に対する完全否定と、……そうですね。ある意味肯定しようかと思いまして」
「ある意味、肯定?ですか?」
「ええ。自分には結婚を前提に、真剣に交際している恋人がいるんですよ。このことをメディアに伝えるのはそちらが初めてです。もちろん記事にしてくれても構いません」
「と、特大のスクープじゃないですか……!」
「ですが、自分の彼女は一般人です」
「なるほど!トレーナーやジムリーダーでもない、と!どんな方かお聞きしても!?」
一般人だっつってんだろうが。耳にタタッコでも詰まってんのか?笑顔が引き攣る。
「一般人なので!詳細は伏せますが、自分にはもったいないくらい……素敵な女性です」
「今まで頑なに女性関係で反応がなかった、何も話さない姿勢を貫いていたキバナさんがそこまで言うとは。俄然、お相手に興味がわきますね!」
「そう、そこなんですよ!」
「「……はい?」」
首を傾げる二人にビシッと指差す。人に向けて指を差しちゃダメだぜ?こいつらは例外。
「公には出てこない、普通の一般人。名前や外見、経歴等、事細かく週刊誌に載せようものならすぐさま訴えることが可能です。そしてその訴えに対し、あなた方は勝つことができない。相手が一般人だから。……自分の恋人が世間に晒されて興味を持つのはオレさま自身のファン、厄介なアンチ、外野にいるただの野次馬。オレさまだけを攻撃したり陥れようと企むなら……まだスルーできる。放置もしてやる。だが、その矛先がオレさまの……オレの、心から愛してやまない彼女に向けられた日には」
間違いなく、牙を剥く。
「普段の自分は温厚ですよ。それも相手にもよりますが。ただ、大事な人に手を出すようなら容赦しない。黙ってもいない。オレは、ドラゴンストームキバナ。荒れ狂う嵐を呼んで、全てを吹き飛ばす男だ。ああ、そんなことは当然……ご存知ですよね?編集者さんもライターさんも記事を書くなら、まず人となりを取材しますもんね?」
にっこり、人当たりの良い笑みを見せた。
「伝えておきたいこと、胸に留めておいてほしいことをまとめます。一つ目、例の記事の否定。記事の当事者である自分たちが真正面から否定している。なんなら相手の事務所やリーグ本部に確認してもらって構いません。
二つ目。結婚を前提にした一般人の恋人がいるという公表。他には出していない情報ですがそちらで公表されなければ、他誌にも声明出しますし自分のSNSでも発表します。
三つ目。恋人への接触は断じて許さないこと。少しでも恋人に異変が見られたら、真っ先にあなた方を疑います。……オレの逆鱗に触れたこと、一生後悔させてやるからな……。……というわけで。面白おかしく信憑性の欠片もない記事を書き、出版まで行ったあなた方へ、この三つのことをお伝えしたかったんです」
少しずつ声が低くなっていく。分かりやすく相手の顔が青ざめてきた。
よしよし、だいぶ伝わったようだな。
「こ、これは、脅し……ですか?」
「脅し?とんでもない!……警告だよ。オレは怒っている、というあなた方への警告さ」
テーブルを挟んで向かい合う二人。顔を青ざめさせたままの二人へ向けてオレは腰を上げ、ぐっと上半身を近づける。息を飲む音が聞こえた。
「今回の話をどのように書かれて出版されるのか……。それはもう楽しみに待っています!」
今日イチ良い笑顔を作る。壁の時計を大げさに見て声を上げればすぐさまドアが開き、リョウタ、レナ、ヒトミが入ってきた。時間です、と編集者とライターを立たせる。慌てる二人。おーおー、ジャケットのポケットが膨らんでんなぁ?ボイスレコーダーを入れてんならもう少し上手く隠せよ。こっちにバレバレだぞ。まぁ、好きに使えばいい。それは盾にならないし、窮地に立たされることも喋ってない。
「キ、キバナさん!このことは本当に我々にしか話していないんでしょうか!?」
「メディア関係ではあなた方が初ですよ」
「記事にしても構わないんですね!?」
「ええ。記事の内容、期待しています!」
「お相手は芸能関係者ではなく!?」
その言葉を聞いて、ドン!!と、足を一歩、強く踏みしめた。
「紛れもなく一般人だ。相手を間違うなよ……?」
オレの視線より低いところにいるそいつらを上から睨みつけるように凄んでしまう。ドスの効いた低い声も相まって、そいつらは明らかに固まった。
どうやらようやく、戦意喪失したようだ。
リョウタたちに目配せする。さぁ、お帰りいただこう。なぜならもう素が半分以上出ちゃったから!これ以上は威嚇ですまない。脅しと捉えられないギリギリはここだ。オレの指示を察知した三人は各々のポケモンを出し、出口はこちらです。と案内を始める。
空飛ぶタクシーを呼んでいたので、中へ押し込むように追いやり、飛ぶまで見送った。
「……キバナさま」
「おう」
「非常に微妙なラインでしたよ」
「オレさまもギリギリだな〜!と思ったわ」
「ちょっとアウトな気もしますが」
「そこはあの二人の判断に委ねるぜ!」
「キバナさまだけの炎上ならいいんですが」
「よくないよ?炎上に慣れてはないよ?」
「そうですね、ツムギさんに飛び火しないか。それだけが……私たちとしても心配です」
「オレさまの心配もしてくれる?」
「「「キバナさま慣れてるじゃないですか!」」」
「そんなことない!息を合わせるなよぉ!」
やいのやいの言い合いながら、ジムの事務所へ。適当な記事を書けばオレさま怒っちゃうから!という趣旨は伝わっただろう。それでいい。それが目的だったわけだし。温厚なオレにも許容できないことがあるよ!限度があるよ!ってのを身を持って実感してくれたはずだ。
さて、早めにお帰りいただけたし書類を片付けるとしますかぁ。スタジアムの開場も、だな。
ぐーっと背伸びをして肩と首を回す。よし!今夜はツムギのカレーが待っている!楽しみがあると頑張れるな!気合いを入れてデスクワークを始めた。
現在の時刻、午後五時。
書類関係は全て無事に終えた。サイン漏れも恐らくない。緊急の連絡も入ってこない。
よっしゃ、定時で上がれる!スタジアムの見学者も少なく、これならば各施設のスタッフたちも通常通り上がれるだろう。よかった。
明日のスケジュールを確認、すると。休み。休みになっている。予定何もなかったか?ワイルドエリアの巡回すら入ってないし。その翌日の出勤はなんと昼から。オレの見間違いじゃない?……何度見ても見間違いじゃない……。スケジュールアプリも休みに更新されている。一応三人に確認を取れば、いい加減まともに休まないと倒れますよ。とのこと。どうやら調整してくれたようだ。仕事の出来る仲間たちで助かる。
遠慮なく帰ろう!オレが帰らないと帰らない奴も少なからずいるし!足取りも軽くジムの外へ。休み、休みかぁ!明日はツムギとお買い物へ行こう!日用品や雑貨、私服の数も少なそうだったし、そっちも一緒に選ばせてもらおう!はーやばい、楽しみだ。
スキップしそうなくらいウキウキで歩を進めた矢先、オレの名前を呼ばれて立ち止まる。
視線の先には、ツムギ。
「キバナさん!」
「……ツムギ?」
「キバナさんを待ってました」
「オレさま、を?」
「はい。早く会いたくて。……帰りましょう?」
「……うっ、」
「キバナさん?……!な、泣かないでください!」
「嬉し泣きだからいいの〜!ツムギ〜!!」
可愛い可愛い、オレの恋人。早く会いたくて?オレに会いたかったのか。嬉しい。そりゃ泣いちゃう。手も繋いじゃう。絶対離してやんない。もしかしたら早く帰ってくるかも。と、ジムの近くまで来てくれたらしい。優しさが沁みる。
「カレー、出来てますよ!私の中では美味しいと感じたので……、きっとキバナさんもみんなも食べられるはず!です!たくさん作りましたよ」
「そっかぁ、楽しみ!ありがとうツムギ」
照れたように笑う彼女。ああ、癒される。先ほどまでの疲れがどこかへ飛んで行ったかのように、足取りどころか心もふわふわと軽くなった。
帰宅して「ただいま」「おかえりなさい」と挨拶を交わす。一緒に帰る人がいるっていいな。ただいま、に返ってくる言葉も。ツムギの存在を噛み締める。
ご飯の準備してもらっている間、サッとお風呂に入る。オレのポケモンたちも久しぶりの我が家だ。のんびり過ごしてもらおう。
フライゴンなんかすーぐツムギに引っ付いた。みぃんなツムギに寄ってった。さすがオレの仲間だな、と笑ってしまう。みんなも癒されたいよな。わかるわかる。振り回された二日間だったから、特に。一匹一匹、丁寧に接してくれるツムギ。触れていい所は遠慮なく、嫌がる所は絶対に触れない。ポケモンたちの表情を見て接してくれる。可愛い、可愛いと声に出して全力で愛でてくれる。嬉しくないわけがないんだ。風呂に入っている間、ロトムに写真を任せておいた。後で見るのが楽しみだ。
全員揃って晩ご飯。おかわりまでして完食。そう、鍋にはもう入っていない、完全なる完食。ビビるくらい美味しかった……。一晩寝かす分くらいは残せばよかったと後悔するくらい美味しかった。ツムギはロトムにレシピを教えてもらいながら作ったので、レシピに感謝です。なんて謙遜するが、そのレシピ通りに作れるってのはすごいことなんだぞ。オレともまた一緒に作ろう!と誘えば嬉しそうに頷く。
少しお腹を落ち着かせてから、後片付け。オレが皿洗いと皿拭きまでして、ツムギはお風呂へ。ポケモンたちは専用の部屋で寛いでいる。
ツムギが風呂から出てきたら今日の話を聞く。オレも昨日を含めた話をする。その中で、ツムギが意を決したような表情で働きたいと言った。
……無理しなくていいのに。働かずに家で過ごしたって構わない。オレはそれなりに、甲斐性がある……つもりなんだけど。そう伝えてもツムギは首を縦に振らない。オレのお金に頼りたくない、と。……金銭感覚、しっかりしてるなぁ。
働き口はまだ見つかっていないが、求人誌を見ていることも教えてくれた。どうやらツムギは本気だ。オレが送金したお金もまだ手をつけてないと言う。……じゃあ、カレーの材料は自分の手持ちから出したのか!?あの量を!?なかなかの出費だっただろう。
身ひとつでこの世界へ来たツムギが、所持金を多く持っているとは思えない。家事に給料は発生しないが、日用品の補充や食材費、その他。生活しているだけでお金はかかる。その分をオレに出させてほしい。……だが、ツムギは首を縦に振らない。くっ、常識ある大人だ。ちょっと頭固めの。ツムギには伸び伸び暮らしてほしいんだよなぁ。
オレを含め、ポケモンたちは大型が多い。食材費はマジでかさむ。料理は得意ではないと言っていたツムギが頑張ってくれている。その対価を支払いたい。お互い譲らなかったが説得を重ね、ツムギが折れてくれた。よし!
日用品、生活雑貨。食材費。共有するものはオレが渡す。ツムギ自身が使うものはツムギが払う。大きいものを買う時はお互い相談すること。独断で買ってこないこと。これで決着!納得してない表情だが、無理にでも納得してもらうぞ。……それにしても、金銭感覚の擦り合わせ、か。なんかこう、むず痒いな。散財するタイプではないと思っていたが本当にしっかりしている。そうだよな。ツムギ、働いてたんだもんな。
まだ不服そうなツムギの唇に口づける。キスひとつで絆されませんよ!なんて言うとそっぽを向く。可愛い。頬と耳は真っ赤で正直なのに。ほんっと、可愛い。
のんびり、まったり過ごせる時間は貴重だ。ポケモンたちもストレスなく過ごせている。隣にはツムギ。……そうだ、まだ抱きしめてない。ハグしたい。
腕を伸ばせば手を掴まれてどこかへ誘導される。歯磨きしよう?早……くはないか。もう遅い時間だ。お互いのポケモンたちも眠りにつき始めている。
なんだ、もう寝ちゃうのか。……いや、ツムギはオレを寝かせようとしてるな?昨日の今日で疲れてるだろう、って。優しい。ときめいてしまう。
歯を磨き終えた。寝支度するか。そうだ、明日はお休みだからお出かけしよ?と告げれば嬉しそうな顔。はぁ、可愛い。……さっきから可愛いしか言ってない。仕方ないよな、可愛いものは可愛いんだ。
「おやすみ、ツムギ。また明日な」
キスしようと屈めば、抱きしめられた。……んん、柔らかい。ツムギもハグしたかったんだなぁ。オレと同じ気持ちで嬉しい。……もう少し力入れて抱きしめていいかな。余計な隙間を空けたくない。密着したい。ああ、ツムギの匂いに誘われる。
……これ以上はまずい。体を離す。……あれ、離れない?いつもは抵抗なく離れるのに。ぎゅうとオレの背中に回った腕は思っているより力強く、胸元に顔を埋めて擦り寄るツムギ。え、珍しい。甘えて、る?そうだ、寂しいって……言ってたもんな。
「もう少しソファーでお話する?」
首を横に振る。でも離れていかない。
キスしたくて頬に触れると顔を上げ、た……。
オレを見上げる瞳。赤らめた頬。頬に添えたオレの手に擦り寄ってくるツムギ。背中に回した手が胸元にきて、控えめに服く掴む。オレの名前を呼ぶ声を聞き逃しはしなかった。
ズクン、と。本能が疼いた。喉が鳴る。
……ほしい、ツムギが欲しい。
「ね、ツムギ。もう眠い?」
「まだ、眠たくないです」
「オレの部屋へ連れて行ってもいい?」
「……はい」
「部屋に入ったらもう出れないよ?出さない」
「は、い」
「今ならまだ、……なんとか。離せるけど」
嘘だ。離せる、って言いながらツムギを抱きしめる力を弱められない。嫌がることをしたくないのは本当だ。ツムギが今、拒否してくれたら……全力で、理性を総動員して。“優しいキバナさん”を繕って、離す。……これ、離せるか?離さなきゃ、だよなぁ。
「キバナさん、」
「ん。なぁに」
「……私、キバナさんがほしい、です……」
一瞬、思考が止まる。
キバナさんがほしい?オレのことを?ツムギが?……ほし、い??
言葉の意味を理解した瞬間、抱き上げた。
もうだめ。離さない。言わせた責任を取らせてもらう。オレが誘うべきなのに。ツムギを思って逃げ道を作ったつもりが、言わせてしまった。オレらしくない。情けねぇぞ、キバナ。抱き上げたツムギを連れて自室へ。ドアを閉め、鍵をかけると優しくベッドの端に下ろす。目線を合わせるようにオレも膝を折った。
「ツムギ、オレがほしいの?オレもね、ツムギが欲しいよ。心も、体も。全部欲しい。ツムギに触れたい。オレの全身で、好きって伝えたい」
溶けるような瞳でオレを見つめる彼女。求めていたのはオレだけじゃなかった。震える指先がオレの頬に触れ、ゆっくり包まれる。柔らかく優しい手のひら。しっとり汗ばんできているのも愛しさに拍車をかける。触れる……っていうのは、緊張するよな。……オレもだ。
目は口ほどに物を言う。それでも言葉にしろ、声に乗せろ。想いを伝えたいなら口に出せ。……そう、思うけど。目の前の彼女を見ていると言葉はいらないな。とも、思えてくる。オレがツムギを好きなのはもちろんだが。彼女もオレを想ってくれている。オレと同じくらいの熱量で。それが目に見えて伝わるから嬉しくて、愛おしくて、……興奮してしまう。
「キバナさんの全部、欲しいです。私に……触れてほしい。好き、……だいすき、です」
オレの理性をいとも簡単に崩した唇を塞ぐ。このまま食べてしまいたい。ぐちゃぐちゃのドロドロに甘やかして溶かして愛でまくって、オレの腕の中で乱れる姿を見たい。
──ああ、ツムギの全てに煽られる。
……優しく、触れよう。一回では到底収まりそうにないから。時間をかけて……何度も。
会えなかったあの日々のもどかしさを埋めるように。
触れる距離にいるのに、触れることができなかったあの時を取り戻すように。
たった二日、少し離れただけで溢れてしまった想いを確かめ合うように。
心と体に触れ、互いに求め合い……深くなる夜は、過ぎていった。
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