隣に並び立つ為に/TOAR

 ルディは今、過去最大の敵と対峙していた。

「……ッ」
「大丈夫だ、ルディ、お前ならやれるはずだ!」
「勢いでそのまま行くんだよ! ほら!」
「男にはやらねばならぬ時がある。君ならわかっているだろう?」
「〜〜〜〜〜っ、」

 大きく息を吸って、意を決して目の前の敵へと挑む。そう、ルディの一番の敵。それは水だ。バシャン、大きな音を立てて勢いそのままに水へと飛び込んだルディだが――…

「「……」」
「うむ、大胆に飛び込んだな」
「……って、感心してる場合かよ! 浮いてこねぇじゃねぇか!!」
「ルディ!!」

 見守る事少し、一向に上がってこないルディにロウとアルフェンは慌てて後を追い飛び込んだ。川の底に沈むルディは完全に伸びていた。

「ルディ、大丈夫か?」
「ゲホッ、うぇ……うぅ〜〜〜」

 彼にしては珍しく頭を抱えて泣きそうな声で唸る。それは恐怖というより自分自身に対しての情けなさの現れのようだった。

「旅の間も水場はずっとアルフェンにしがみついてたもんな。大将がふざけて滝壺に飛び込んだ時なんか泡吹いてたし」
「言わないでよぉ……。記憶から消して……」
「にしても、なんで急に水嫌いを克服したい、なんて言い出したんだ?」

 うずくまった体制のまま顔だけ上げた何とも情けない姿のまま、ルディは言いづらそうに答える。

「……ナザミルと一緒にいても恥ずかしくない男になりたいの」
「……ナザミルの為?」
「違う、僕の為。情けない姿なんて見せたくないだけだよ」
「好いた女性に相応しい姿になりたい、か。立派な志だ」
「こんなのシオンさん達になんて恥ずかしくて頼めないし……、アルフェン達ならこんな姿見ても笑わないだろうし……」

 もごもごと口ごもると同時にまた顔も埋めてしまったその少年はここ何年かで身長も中身も成長したように見えていたが、今は年相応の少年のそれだ。久々に帰ってきて早々に「苦手克服を手伝って欲しい」と言われた時は何事かと思ったが、蓋を開けてみれば何ともルディらしいお願いだった。

「そうだな。驚きはしたが、ルディが俺たちに頼ってくれたのは素直に嬉しいよ」
「確かにお前はいつも自分で解決しちまうもんな」
「これこそ仲間冥利に尽きると言うものだ」
「うぅ、みんなぁ……」

 なんだかんだと大人びていてもアルフェン達にとっては可愛い弟分だ。少しの間離れていた所でそれは変わることはない。きっとこれからもずっと。

「水に慣れるのならばまずは顔から慣らすのが良いのではないか」
「お、大将からまともな意見が出た」
「ロウ……。まぁ確かに、いきなり飛び込むのは無理があったな。少しずつ慣らしていこう」
「うん……! 頑張るよ……!」

 意気込むルディにアルフェン達も力強く頷く。気合いの入った訓練は続く。――ルディが水を克服するのは、もう少し先のお話。
 

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