※社会人設定(+幼馴染)





今日は、待ちに待った彼とデートの日。といっても、彼の場合は何ともない幼馴染と遊ぶって日なんだろうけども。

「それにしても…。」

眩しい。待ち合わせ時間にはまだ少し早い、十分前。待ち合わせの場所へと行けば、そこに彼はもう居た。早いなぁ。そして、相変わらず美しすぎて眩しいなぁ。スマートに立つその姿は、街を歩く女性たちを魅了させている。何度目かわからない声をかけてくる女性たちを、相変わらずな笑顔でやんわりと断っている彼を見て、少しだけ憐れむ。精市も大変だなぁ。
そんな姿が少しだけ可哀想に思えた私は、すぐさま彼の元へと駆け寄った。

「ごめん、精市!待った?」

「大丈夫だよ。俺が、早く来すぎただけだから。」

ふわりと微笑むその仕草に、目が眩む。彼は、どうしてこうもいちいち美しいのだろうか。美しい上に、かっこいい。テニスをしていた時もそうだったけど、幸村精市という男はどこまでも最強な気がする。テニスに関してはあまり知らないが、彼はよく対戦相手の五感を奪っていた。その技をみたとき、心底彼が恐ろしく感じたし、自分が彼と同じ性でテニスをしていなくてよかったなと心底安心した。だって、五感とか奪われたくないもん。怖いじゃん。
私の歩幅に合わせて歩く彼を横目に盗み見、小さく溜息をもらす。彼はきっと、私の気持ちなど微塵も知らないだろう。だけど、この感情とはそろそろ決着をつけたい頃だ。どうするべきか。色々な対策を考えていれば、名前を呼ばれる。

「花乃。」

「う、ん?」

「段差、気をつけて。今、違うこと考えていただろう?」