※失恋



幼い頃から、彼が好きだった。最初こそ、子ども也に「恋に恋している」状態だった。でも、知らないうちに私の中での彼の存在は、物凄く大きなものへと変わっていた。
あのときに、終わらせていれば。「恋に恋している」状態で冷めていれば。こんな哀しい想いはしなくて済んだのかもしれない。
一護が、石田くんや茶渡くん、織姫ちゃんと仲良くなったきっかけは、何となく知っていた。だからこそ、幼馴染みである私に教えて欲しかった。たつきや啓吾くんもそうだけど、同じような感覚は感じていたはずだから。ずっと、隣に居たのに。知らない間に、彼の隣にはいつも彼女が居た。

「これは、負けですねぇ。」

先を歩く啓吾くんや水色くんの背中をゆっくり追いつつ、独り言ちる。わたしの言葉が聞こえたのか、ふと、啓吾くんがこちらへ振り返った。

「花乃ちゃんは、それでいいの?」

「浅野さんはホント空気読めないですよねぇ。」

「水色、敬語やめてえ!!!!」

二人の変わらないやり取りに、声に出して笑う。二人には、感謝してる。勿論、たつきにも。ずっと、応援しててくれたから。たつきは、辛かったかもなぁ。彼女も彼を好きで、わたしも彼を好きで。
わたしは知らない間に、一護と帰っていた帰り道を、彼の友人たちと帰るようになっていた。わたしは、あの輪に入る勇気がなかった。たつきとか、それこそ、啓吾くんや水色くんが居たからその場に居れるだけで、一人ではきっと、入れないだろう。あーーあ、羨ましいなぁ。

「ずっと、好きだったのに、なぁ…!」

滲んでいく視界の中、足元のコンクリートを濡らしていく。ごめんね、一護。今はまだ、この気持ちは消えないけれど、いつかきっと、消してみせるから。
先を歩いていたはずの啓吾くんと水色くんが、気づけば隣にいて。二人して頭を撫でたり、背中をさすってくれていた。そんな優しさに、また涙を溢れさせる。
一頻り泣いたわたしは、鼻を啜らせ、掠れた声で呟く。

「ありがと、ふたりとも。」

「どういたしまして。」

「さてと、帰りますか!!!」

ニコッと笑う水色くんと、ニッと笑った啓吾くんを見て、わたしは「うん!」と返事をしたのだった。
この気持ちとサヨナラするのは、まだもう少し先。