破面の襲撃に備え、日番谷先遣隊として現世へと着いてきたわたしは、一護くんたちが通う制服を装着し、隊長たちが自由に過ごす中、校内の花壇に水遣りをする。
どうせ行くあてもないし、それならば学校に来て好きに過ごすことにしようと決めた矢先、誰だか知らない先生に捕まり、水遣りを頼まれてしまった。それにしても、現世の花も綺麗だなぁ。チューリップって言うんだっけ。可愛い。その場に座り込み、花を眺める。そんなことをしていれば、聞き慣れた声で名前を呼ばれ、そちらへと顔を向ける。

「一護くん。」

「花乃さん、何してんすか。」

「何って、水遣り?」

「アンタ、現世に水遣りしに来たのかよ。」

呆れた顔で言った一護くんに、小さく笑う。「先生に頼まれちゃって。」と応え、「そんなもん、断りゃいいじゃねーか。」「大人の言うことは、きちんと聞くものだよ、少年。」「なんだよそれ…。」なんて会話する。
それにしても、一護くんは背が高いなぁ。立ち上がって、彼を見上げてそんなことを考えていれば、一護くんが口を開いた。

「そーいえば、花乃さんはなんで、冬獅郎たちに着いてきたんだよ?」

「あれ?言ってなかった?」

「聞いてねぇよ。」

不服そうな顔でそう呟いた彼を見て、また笑う。特に理由はないのだけれど、彼を驚かせる理由が余り思いつかない。なんて答えるべきかなぁ。ふと、彼が頬を紅く染めた時の顔を思い出す。そういえば、女性にあまり免疫はないのか、彼はよく顔を真っ赤にしている気がする。そんな姿が「可愛いなぁ。」と思ったのは、つい先日のことで。
また、あの顔が見たいなぁなんて、意地悪な自分が出てきてしまった。ああ、ごめんね、一護くん。
彼の手を取り、自分の頬へと持っていき、彼を見上げた。

「一護くんに、会いたくて。」

「っ、はぁあ!?」

わたしの言葉に、耳まで真っ赤にした彼の反応は予想より遥かに上で。きゅんっと高鳴った心臓に、戸惑いを覚える。あれ。わたし──。
自分の気持ちに気づいた途端、一気に恥ずかしくなったわたしは、一護くんの手を咄嗟に離し、身を翻す。

「冗談だよ!可愛い反応するんだね、一護くんて。」

「かわいくねえ。」

「可愛いよ。」

熱くなる顔がバレないよう、必死に平静を装う。何してるんだろう、わたしってば。バクバクと煩い心臓を無視して、「一護くんて、揶揄いがいがあるね。」なんて言葉を口にしつつ、足を動かし、歩みを速める。未だに、熱いままの顔を誤魔化すように。

「まだまだ、暑いねぇ。」

生暖かい風が、頬を掠めた。