霞柱の奮闘観察記

※恋柱・甘露寺さん視点のお話


無一郎くんがナマエちゃんに恋してるって一番最初に気づいたのは、たぶんわたしだと思うの。ナマエちゃんはもともと、わたしたち柱の中でも評価の高い隊士で、任務の部隊を組むときに力を借りることも多かった。無一郎くんはどんな隊士の名前が挙がっても興味すら示さない男の子で(そこがキュンとするんだけど!)、でもいつからか、ナマエちゃんの名前にだけは反応するようになったのよね。反応を示すって言っても、ちょっと手を止めたり、考えるような仕草をしたり、そういう些細なことなんだけど…でも、そんな変化に気づいている人は、他にいなかったみたい。

あの無一郎くんが恋をするなんて…!って、んもう、めちゃくちゃキュンキュンしちゃったわよ……!!!もしかしたら人生で一番、キュンキュンしたかもしれない!しかも相手があの、ナマエちゃんなんだから…!

ナマエちゃんは、すごく誠実で真面目な隊士。穏やかだし、誰にでも親切だから、人望も厚かったわ。でも、人を傷つけたり馬鹿にするような人には、一切手を抜かなかったわね。怒るとめちゃくちゃ怖いっていう、噂もあったわ。それと、”恋”には全然興味がなかったみたいで、どんなに根掘り葉掘り聞いても、浮いた話の一つも出てこなかったのよね。(残念……)

ただ、そんなナマエちゃんに憧れるっていう人はいつもいて。特に、入隊したての男の子なんかは、カッコいい!って思っちゃうみたい。(毅然とした強い女性ってキュンとしちゃうものね!)だけど、ナマエちゃんに相手にされないとわかると、その恋を諦める人がほとんど。もったいないわねぇ…。

だから、最初は無一郎くんも苦労してたみたい。というよりも、無一郎くんの場合は、やり方がちょっと…だったかな。だって救援のたびに、ナマエちゃんにネチネチ、ネチネチ…、まるで伊黒さんみたいに説教してたって言うじゃない。……蝶屋敷でナマエちゃんと会ったとき、彼女げっそりした顔でそう言ったの。そんなことする人に、女の子がなびくわけないわよね。だからわたし、無一郎くんに言ったの。
「ちょっと無一郎くん!あなた、ナマエちゃんのこといじめすぎなんじゃない?」
って。たしか、産屋敷邸で会ったときだったかな。その場には、わたしと無一郎くんのほかに宇髄さんや伊黒さんもいて。無一郎くんはびっくりしたように目を真ん丸にしてた。きっと、いじめてる自覚なんてなかったのね…うん、恋ってそういうもの。盲目になるのよ。そしたら宇髄さんも、「好きな女には優しくしろ」「これだからガキはダメだ」なんてからかいはじめて。(あと伊黒さんはどうでもよさそうな顔をしてた)…無一郎くん、神妙な顔して黙っちゃってたな。

しかも、そんな話をしているときにナマエちゃんの部隊から救援要請が入ったから、びっくり。もちろん無一郎くんは、自分が救援に行くって言ったわ。どうしよう、いいのかな、なんて思ってたけど、お館様も行っておいでって言うもんだから、わたしたちも任せることにした。今思えば、お館様も早くから無一郎くんの”ナマエちゃんへの恋心”に気づいてたんじゃないかしら。

そのとき印象的だったのは、産屋敷邸を発つ前に無一郎くんが質問してきたこと。
「女の子に優しくって、どうすればいいんですか」
……もうわたし、キュンキュンしすぎて爆散するかと思ったわ!あの無一郎くんが!わたしに!そんな可愛い質問をしてくるなんて……!!!だから、こう答えたの!
「困っているところを助けてあげたり、怪我から守ってあげたり、そういう風に優しくしてもらうと、女の子は喜ぶの!あと、ドキドキしてもらいたかったら、ちょっと体に触れてみたり……なんて、キャッ!!!!」
無一郎くんは少しだけ首を傾げながらも、「ありがとうございます」と言って屋敷を発ったわ。

…でも、あとから思ったの。わたしのアドバイス、間違ってたんじゃないかしら、って。特に”ドキドキしてもらいたかったら、ちょっと体に触れてみたり”って部分。自分にいじわるしている人から突然触れられたら、別の意味でドキドキするわよね。

だから、無一郎くんがナマエちゃんの手を握って、それを振りほどかれたんだって話を宇髄さんから聞いたときは、顔面蒼白…!!ああ、わたしのせいだって思ったわ。それから無一郎くん、調子が狂っちゃったみたいで、他の柱のみんなからも随分叱られてた。もうナマエちゃんの救援に行くなって人もいた。でも、それは無一郎くんにとってつらい選択のはず。あのときの無一郎くんは、本当にいろいろ考えてた。すごく、男の子の顔をしてた。


それでも結局、無一郎くんはナマエちゃんの救援に行くことを選んだ。そして突然入った緊急任務先で、ナマエちゃんは大怪我を負い、昏睡状態になってしまう。あのときの無一郎くんは本当にボロボロだった。すごい取り乱し方で、とてもじゃないけど、他の任務に行けるような状態じゃなかったわ。お館様は無一郎くんにしばらく任務を休むように提案してくれたけど、宇髄さんだけはそれを許さなかった。

「甘えてんじゃねぇぞ、クソガキ」
宇髄さんに思いきり頬を殴られた無一郎くんは、黙って宇髄さんを睨みつけてた。口の中が切れてしまったのか、唇から血が滴っていたのは痛々しかったな…(宇髄さん、手加減しないんだもの…)
「好きな女に怪我させたから任務に行けねぇだ?笑わせるなよ。そりゃ、好きな女も守り切れねぇくせに、中途半端に手を出した、お前のせいじゃねぇか」
無一郎くんは額に青筋を立ててたけど、なにも反論しなかった。そんな無一郎の胸倉を掴んで、宇髄さんはこう言ったの。
「テメェの大事なものも守れねぇんなら、柱を、鬼殺隊を辞めろ。お前みたいな弱い奴はいらねぇんだよ、とっとと失せな!」
その瞬間、無一郎くんが宇髄さんの手首を掴んだ。骨の軋む音がして、無一郎くん、宇髄さんの骨を折る気なんだって思った。でも、宇髄さんも無一郎くんの胸倉を離さない―――”一触即発”って感じだった。だけど、お館様が「そこまでにしなさい」と言ってくださって、2人とも手を離したわ。

「無一郎、君は大事なものを守れるかい?」
お館様が優しい目で無一郎くんに尋ねた。この言葉は、お館様が無一郎くんに差し出した救いの手―――そして、宇髄さんがかけてくれた言葉も、頬を殴ったその拳も、間違いなく無一郎くんに向けられた”救いの手”だと感じたわ。
「はい、死ぬまで守り抜きます」
無一郎くんは、その2人の救いの手をしっかりと握って、こう答えた。そのときの無一郎くんの顔は、強くて、凛々しくて、男らしくて、わたし、キュンとしちゃった。そして、そんな無一郎くんの顔を、早くナマエちゃんに見てほしい!そう思ったなあ。

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そうして今では2人は恋人同士!いろんな困難を乗り越えてきた2人って、強い絆が生まれるのよねぇ〜…。はたから見ても、ナマエちゃんと無一郎くんは信頼し合ってるってわかるわ。きっと、ナマエちゃんの相手は無一郎くんでなきゃいけなかったし、無一郎くんの相手はナマエちゃんでなきゃいけなかったの。運命よ、運命。ああぁ〜〜キュンキュンする!!!

そういえば、ナマエちゃんのお見舞いに行ったとき、結局どうやって2人は交際することになったの?無一郎くんにどんな言葉をかけられたの?って聞いたんだけど、彼女真っ赤になってなにも教えてくれなかった…。一体なんて告白されたのかしら!?ああぁ〜〜気になる!!!

あんな風にキツい言葉をかけてたけど、2人が上手くいって宇髄さんも嬉しいみたい。ナマエちゃんや無一郎くんを見かけるたびに絡んでて、ちょっと微笑ましいな。
宇髄さん、ついこのあいだも、
「おいチビ助、愛しい彼女にはもう”接吻”してやったのかぁ?」
って無一郎くんの肩を抱いて絡んでたんだけど、
「ナマエと接吻?もうとっくにしてますけど?」
って彼が涼しい顔で答えるからびっくりしてたっけ。(もう、無一郎くんったらおませさんなんだからっ…!)

正直、ナマエちゃんに恋人ができて、残念がってる男の子もいる。でも、相手があの無一郎くんなんだから、そう簡単に奪おうなんて思わないわよね!意外な組み合わせだって言う人も多いけど、わたしは本当に理想のアベックだと思うわぁ〜。(しのぶちゃんや煉獄さんも「可愛らしい2人ですね」「未来ある似合いの若者だ!」って言ってた!)

これから2人が、どんどん親密な関係を築いていくのが楽しみ。幸せな人たちが近くにいると、いつの間にかそのお裾分けをもらえるんだもん。
ああぁ〜〜〜わたしにも早く、素敵な殿方が現れないかなぁあ〜〜!!




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