秘密の時間
あのお願いから数日後、彼女達はまたしてもファブラの前に現れた。相変わらずニコニコと表情を崩さない彼女達に、ファブラはため息混じりに期待通りの答えを返す。
「10体全部起動しました。」
「楽しみね。」
「楽しみだわ。」
「お茶でも?」
「「ええ、頂こうかしら。」」
ここからは、彼女達とファブラの秘密の時間。
誰にも聞かれてはいけない、そもそも彼女達の存在こそトップシークレットなのだ。ロボットドールは自分達が何故存在しているのか、そんなことすら知らない。自分達を造った人間が今なお存在しているなんて、思いもせずに幸せな毎日を過ごす。
「あの子達を動かしてくれてありがとう!」
「ファブラはいい子ね。貴方を選んでよかった。」
「あれだけのワガママを聞いたんだ。しばらくは好き勝手させてもらいますよ。」
「ええ、もちろん!」
「お好きなように。」
"母"を知っているのは自分だけ。
ファブラだけが会える存在、そのはずだった。
「失礼するよ。」
「ディッセン…!」
彼が来るまでは。
「見たことない形状のドールだ…君達は?」
「…私達は、」
「貴方達の一つ前の旧型のドールなの!私は…セント。彼女はミーレ。これからこの街で暮らすわ!」
「は!?」
「よろしくね、ディッセン!」
「よろしくね、ディッセン。」
「よろしく。君達はどんな役割を?」
「「……それはこれからファブラが教えてくれるのよ。」」
「ちょっ…」
「さあ、ファブラ。教えてちょうだいな!」
「さあ、ファブラ。教えてちょうだいな。」
本当に何を考えていることやら。
だいたい彼女達の名前なんて初めて聞いた。いつも聞いてもママよ、お母さんよなんて誤魔化されてしまうのに。
「…セントは"記録"、ミーレは"編纂"だ。」
「私はセント、上位階級のロボットドール!私はこの街のすべての事象を記録するわ!」
「私はミーレ、上位階級のロボットドール。私はセントの記録した情報を編纂してここに貯蔵するわ。」
「「ディッセン、貴方は何をするロボットドールなの?」
また、面倒なことになってしまった。
深いため息をついて、ファブラは楽しそうに話す三体を眺めた。