「あれ?」

 バサバサと書物をひっくり返し、さては座布団をめくってみたり。突如、奇行を繰り広げる審神者に、和泉守兼定は整った眉をひそめた。

「主、何やってんだ?」
「ええとですね、ここに政府からの手紙が……」

 なかったか、そう言い切る前に兼定が「これか?」と懐から一枚の封書を取り出す。それを見て、パッと顔を明るくする審神者はこくりと頷いた。

「それです。ありがとうございます」

 受け取ろうと手を伸ばした審神者だが、す、と封書は遥か高くに掲げられる。背伸びをしても少しジャンプしてみても、届きそうにはない距離。怪訝な顔をする審神者と、眉をひそめ険しい表情の兼定。

「和泉守さん」
「……あんた、これ読んだのか?」

 不機嫌な声。頭上高い場所にある封書から視線を兼定へ移し、彼の機嫌の悪さの原因を探る。しかしそれは考えるまでもなく、彼が手にしている政府からの封書に違いない。
 内容は政府が用意した相手との縁談。相手は他の本丸の審神者で、かなり優秀な人物らしい。強制ではないが、事実上の婚約者である。

「……読みました。ですから返事を、」
「それなら、俺がさっき出しといたぜ」

 そういうや否や、ビリビリと破かれる封書に審神者は目を丸める。

「お断りだってな」


罪ごと愛していたのだろうか
title ユリ柩