キラリ。ひかりの尾を引っ張って、消える流れ星。きゅ、と両の手を握りしめて何か願い事をしているなまえを横目に、士郎は夜空を見上げた。
 今日は流星群が見れるらしい。らしい、というのも、この一時間ばかし夜空を見上げているが、流れ星を確認したのは今を含めてまだ三回程度。そんなものか、と流れ星が消えた後も願い事をしているなまえに声をかける。

「もう充分だろ」
「でもまだ少ししか見てないですよ」

 口を尖らせ、彼女はまだこの場に居座るようだ。

「空にいっぱい星が流れるなんて、ステキだと思いません?」

 ごろん、と地面に寝転び、なまえは夜空を仰ぎ見た。口元は楽しそうに弧を描いている。
 そんな彼女を前に思わず「まあ、そうだな」と、なまえを見習いもう一度だけ天を仰いだ。「さっきは」視線を星空からなまえへ落とし、彼女の額にかかる前髪をそっと撫でる。

「さっきは、なにを願ったんだ?」

 パチリと瞬きをした瞳には、夜空の星明かりが映り込み、小さな空のようだ。

「ないしょ、です。……あっ!」

 ひかりの線が一本、現れて消えた。かと思えば、また一本、そしてもう一本。興奮した様子で「見てください!」なまえは空を指差す。

「士郎さん、流れ星、すごくキレイですよ」
「ああ、」
「お願いごとを、」

 小さな空は陰で覆われる。
 無数の流れ星のかわりに、なまえは銀色のまつ毛を眺め、次に開かれた士郎の瞳を見つめた。その中に、一筋、キラリと星がひかったように見えたが、それはほんの一瞬で、瞬きの間に消えてしまった。

「なにを、願ったんですか?」
「さあな」


まぶたを閉じて綺羅を恋う夜
title 天文学