トントントン。リズミカルに響く包丁の音を聴きながら「思ったんだけど」シリウスの背中に声をかけた。包丁の音は止まることなく「ん?」とだけ返事が返ってくる。
「シリウスって、いい奥さんになれるよね」
「……は?」
そこでようやく音が止まる。振り向いたシリウスの顔は「寝言は寝て言え」と言っている。
しかし家事と花の世話が得意なんて、どう考えてもいい奥さんだ。私が男だったら放ってはおかない、と思う。
「なら、」
水で濡れた手が私の左手を掴んだ。薬指の付け根あたりに熱い唇が触れる。
「してみるか?」
「なにを、」
「結婚」
二人きりの儀式をしよう/En