13

「レディ〜、ドーナツ!」
ドーナツレース開始の合図が鳴った。
ロングリングロング島一周を目指し両舟がスタートしたと同時、突如発砲音が響き渡る。
ナミたちの乗るタルタルタイガーが、銃弾の集中砲火を浴びた。

「ナミさん達に何しとんじゃコラァ!!」
「ギャアアア!」
すぐさまフォクシー海賊団の妨害行為に反応したサンジが、一瞬にして銃を持った船員らを蹴り込み一掃した。
と、サンジが攻撃を仕掛けた反対方向からも
「うわあああ!」
と痛々しい悲鳴が上がった。

「強ぇ……誰だこの可愛子ちゃん! 手配書にはいなかった、はず」
「君たちずるいなぁ。妨害しようだなんて」
「妨害は海賊の基本だろ!」
「僕海賊じゃないしぃ」
見れば、銃を構えていた男たちは倒れ伏し、リタがその一人の腕をヒールで踏みつけていた。
ゴスロリ少女が人の悪い笑みを浮かべ男を足蹴にするという、なかなか絵になる光景であった。

この時、可愛い顔をしながら一瞬にして全員を叩きのめしたリタの姿を遠くから眺める者が「……いい」と呟き評価したが、リタは当然知る由もない。

三下たちを蹴り上げた脚をパンパンとはたきながら、サンジがそんなリタに声をかけた。
「なんだテメェ、ちゃんと応援してんじゃねぇか」
先ほどまで応援する気もなかった様子からすれば、かなりの変貌である。
サンジの問いに対し、リタは少し考えた。
「うーん。というより防御手段ないやつに一方的に攻撃するとか、単にムカつくから」
「盗賊がよくいうぜ」
「僕弱者からは盗まないもん」

リタとサンジがそのような会話をしているその頃。
ウソップのインパクトダイヤルの使用によって、魚人が舟を引くことから遥かに優勢と思われたキューティーワゴン号に対しタルタルタイガーは一時リードをつけていた。

「うわぁ、やるじゃんあいつら」
リタが感心の声を漏らす。
と、ポンとその肩が叩かれた。

「お嬢ちゃんお嬢ちゃん、お食事、お菓子各種取り揃えていますよ!」
「お酒好きかい?」
「オレたちイケメンたちとお話ししませんか?」
「美女はどう? お友だちになりましょう!」
「君たちうるさいなぁ! 僕今応援してるんだけど!」
リタはその可愛らしい顔を不快そうに歪め、何の意図か敵船からの様々な勧誘を一緒くたに跳ねつけた。

「いやぁ〜ツレねぇなぁ! お嬢ちゃんも他のお仲間さんたちみたいにもっと楽しく行こうぜ!」
「いやだから僕、応援してて……え? お仲間?」
リタが不吉な言葉に違和感を感じて、辺りを見渡してみれば。

「うんめぇ〜!」と寿司とうどんを頬張るルフィ、
美女に囲まれて「デービーバックされちゃおうかなぁ〜♡」と猿のように鼻の下を伸ばすサンジ、
りんご飴に釣られるチョッパー、酒の飲み比べをしてるゾロ……

「いや君たち馬鹿なの!??」
結局仲間でもない僕が一番まともに応援してるじゃん!!
リタの至極真っ当なツッコミは、「……やっぱりいい!」と何やら感嘆するフォクシーにしか届かなかった。

(「誰だあの可愛こちゃんは!」)
(「えっオヤビン、あの子ですかい?」)


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