「その娘が大鳥居の上に立ち、両手を掲げた途端……我が照日大鏡に日輪の光が照射された。見るが良い、あの、厳島を照らし溢れ出(いず)る光こそ天照…日輪の加護に相違ない!」
「その目は竹の節より腐り切った役立たずか!貴様も分かるだろうあれはこの方の婆娑羅だッ!」
「我が城にてもてなそう!」
「 聞 け ッ ! !」

目々を星のように輝かせ、ぐいぐいとわたしの手を引く毛利を威嚇しながら#name02#は何度目か分からぬ程に声を張り上げた。
その間、わたしはなんとか光をおさめようと頭を回転させていた為、二人のやり取りには意識が入っていなかったのだが。
はあっと息を吐いた#name02#が毛利の手を弾いて、わたしをその背に隠した。
毛利が弾かれた指先、そして#name02#を睨み付ける。

「っ貴様……」
「疾く消え失せろ、私達は貴様に用など有りはしない」
「フン、遣い如きが大口を叩くな。そも、顔の一つも窺い知れぬ木偶が我を愚弄しようなどとは、笑止!」
「そうだ、それだ……貴様のその態度………全てが己の手の内と思い込むその顔が昔から気に食わなかった……!!」
「嗚呼、やっとおさまった」

わたしの苦労の末の呟きなど、気にも留めていないのだろう。
二人は睨み合ったままだ。
毛利は#name02#の記憶そのままだからこそ、余計に腹立たしいのだろうな、と予想を立ててみる。
ぎりり、と唇を噛み締める音が背中越しの此方にまで聞こえてくる。
昔からというその言の葉に、毛利は当然ながら首をかしげ鋭い視線をますます鋭利なものとした。
しかし顔が嫌いとは、#name02#も中々に直球である。

「か……否、可笑しな事を。貴様のような痴れ者、我の知る所になし」
「………………貴様」

まさに一触即発といった所だが……此処で一つ、この世界に来るに当たってわたしと#name02#とで交わした約束事を思い出してみる。
それは、#name02#の姿を知る者がいる場では顔を晒さない。
この世界の"石田三成"にその情報が流れるだけで色々と面倒だわ、とわたしが単純に考えた結果の約束だ。
……しかし、まあ、速さを第一とする#name02#の居合いなど使われてしまえば一瞬で、

「#name02#、ちょっと待っ」
殺してやるぞおぉおぉぉぉぉぉッ!!!
「そっちかぁ」

確かに約束を気にしたのか、抜刀した訳ではない。
しかしそれを使うと、お前、婆娑羅を高めて放出する為に大きく仰け反るのではなかっただろうか。
そうなれば、深々とフードを被っていようが、当然重力に従って。

――ぱさり。

「あっ」
「……貴様」
「だから言ったのに」