どうしてこうなったのかを考えようとするも、思考することも妨げられる熱気と衝撃に、ただ従うことしかできない。浴室にこだまする嬌声と水の音がやけに耳についた。










「ただいまー」



金曜日。仕事を終え帰宅したゆくらは、ソファに腰掛け一息ついていた。半同棲する恋人は未だ会社に残っているらしい。彼が帰宅する前に夕食を作ろうと食材を買って帰り、準備を終えた。未だ少し肌寒い季節だ。いつのまにか体は冷え切っていた。




(先にお風呂入ろうかなぁ…半身浴でもしよっと)




恋人の帰宅を待つ間、先に温まっていよう。そう思うと、ゆくらはソファから離れた。











「はぁ…極楽〜」





久々にゆっくりと湯に浸かり、つい声を漏らす。小説を読み、水分も摂りつつしばらく過ごすと、漸く体が温まってきた。もう少しこのままで、そう思ったとき、浴室の外から声がした。




「ゆくら…?風呂に入ってるのかい?」




「あ、徐庶さん!おかえりなさい!すぐ出ますね!」




急いで風呂から上がろうとするゆくらだが、その行動は徐庶によって遮られた。



「…いや、大丈夫だよ。ゆっくりしていてくれ」




「…でも、徐庶さんお腹空いてるでしょ?ご飯、作りまし…」

「出る必要ないよ、俺も入るから」




少しひやりとした空気が浴室に入り込んだと同時に、ゆくらは、わ、と小さな声を上げた。付き合ってから未だに目にしていない裸が、目の前にあった。



「わ、ちょ、徐庶さん…!?なななななにして」


「何って、俺も一緒に温まろうと思って…」


「わたし、上がりますから!お風呂狭いので!タオル取ってきてください!」




男性経験があっても、初めて見る裸も、見られる裸も恥ずかしい。湯船に深く浸かると、ゆくらは徐庶の方をなるべく見ないように声を上げた。



「駄目だよゆくら、まだ完全に温まってないだろう?…それとも、一緒に風呂に入るのがそんなに嫌かい…?」




徐庶は狡い。ゆくらが断れないことを知ってか知らずか、子犬のような目で悲しげな声で呟いた。




「っ…嫌じゃ、ないですけどっ…恥ずかしいんですっ…!こっち!見ないでくださいよ…!」



仕方なくゆくらは壁に対面して顔を伏せた。膝を抱いていると、シャワーが止まる音がして、水面が大きく波打った。




「温まるな…。ゆくら、もっと楽にしたらどうかな」



「ら、楽にって…ひあっ!?」




水の音が聞こえたと同時に、背中と腕が強張った。いつのまにか徐庶に後ろから抱き竦められたゆくらからは、オーバーな声が漏れた。



「徐庶さん、なにを…」



「こうした方が疲れないよ」



首筋に息を感じて、思わず体が震える。その反応を楽しむように、徐庶はゆくらの腕に手を滑らせた。その動きに伴って、胸の先に微かに徐庶の腕が当たるたび、意識が集まってしまう。だんだんと、息が荒くなっていく。




「どうかしたかい、ゆくら…落ち着かないようだけど」


「…っ!なんでも、ないです…!」



悪戯っぽい声がして、少し身じろいだとき、背中がぞくりとした。それと同時に胸元に自分のものでない手が滑り込んできた。



「ぁっ…!徐庶、さん…」



触れられる所が熱い。徐庶はうなじから肩まで何度も口付けると、ゆくらの耳元で囁く。



「俺は焦らすのは好きだけど…焦らされるのは嫌いなんだ」



両胸を揉みしだかれ、先端を指で弾かれると、吐息が声に変わった。反響する声が恥ずかしく、口元を隠そうとするも、腕が徐庶のそれによって抑えられていて動かない。下唇を噛んでくぐもった声を出す他なかった。




「…気持ちいいかい…?ゆくら、こんなに硬くして」



「んん…っ!」



「声、聴かせて…」




徐庶の長い指が、唇に触れ、そして口内に滑り込み舌を撫でた。胸の先をこねくり回され、抓まれると、次第にゆくらの口はだらしなく開いていく。その様子に徐庶の口角が上がる。



「ふあぁ…っ!じょ、しょ、さ…っ!」



「ああ、ゆくら…可愛い」



胸の先にあった指が、下に降りてゆく。その感触にゆくらの腰が浮いた。



「とろとろだ…胸だけで、こんなに…」



嬉しそうな声。自尊心とともに征服欲が膨らんでいく。ぬるりとした感触が徐庶を喜ばせた。




「ひあぁっ!そこ、やだぁ…っ!」




「嫌じゃ、ないだろう…?」



ぷっくりと硬くなった蕾に少し触れると、一際大きい反応が返ってきた。優しく擦り上げると、ゆくらは体を震わせ、くねらせる。その応酬が愛おしくて、何度も何度も繰り返した。



「…もっ…やらぁ…っ!らめ、れすぅ…っ」



「イキそうなんだな…ゆくら、俺の、指で」



「いゃ、あ、あ、らめ、イっちゃ…!ふあぁ…!んんんっ!!」



大きく痙攣したゆくらは、力なく息をした。上下にゆれる肩が愛おしくて、徐庶はきつく抱き締めた。そして、ゆくらの息が整うのを待たずに蜜壺を探った。




「ひ…っ!?ナカっ、ま、って…!」



「待てない」



耳朶を吸いながら、ゆっくりと指を出し入れすると、きゅうきゅうと締め付けられる感覚がした。湯とはまた違った温かさに、くらくらする。付き合ってからこれに至るまで抑えていた煩悩が、一気に溢れて止まらなかった。




「…気持ちいいところ、教えて」



中の指が折り曲げられ、擦り上げられると、ゆくらの思考力はどんどんなくなっていった。ただただ刺激に反応している自分は動物のようだ。頭の中が白くなる。



「んあぁっ…!そ、こぉ…!や、ぁ…っ!!」



「ここが、いいんだな」



甘ったるい声を聞き続け、徐庶もそろそろ限界を感じた。指の動きを早めると、あっという間にゆくらは達した。ぐったりとしたゆくらを抱き上げて正面に向かせると、普段からは想像がつかないような蕩けきった顔をしている。徐庶はペットボトルの水を口に含むと、ゆくらに口付けた。こくり、とゆくらの喉が鳴ると、早く彼女を感じたい、そんな欲求に支配された。徐庶は、そのまま浴槽から出て彼女の両腕を床につかせると、吐息を漏らした。




「ゆくら、…すまない、優しくできないんだ…っ」



ゆくらはぼんやりとその声を聞いていると、大きな衝撃と快楽に襲われた。突然の圧迫感からか、知らぬ間に涙が零れた。頭がおかしくなってしまいそうだ。遠くで愛しい声が自分の名前を呼ぶたび、意識が揺さぶられる。



「んぁっ…!じょしょさ、きもち、ぃっ」


「…俺も、凄く…いい…っ」



突かれるたびにふしだらな音が響いて、脳を刺激した。



「あっ!あ…っ、だめぇっ…!また、い、くぅ…っ」



何度も何度も絶頂を迎えるも、快感の波は決して引かなかった。

















「うぅ…ふらふらする…」


「大丈夫かい、ゆくら、その…すまなかった…」


「大丈夫じゃないですぅ…」


「食事の準備は俺がやるから休んでてくれ…でも、ゆくらがあんな乱れるから悪「なーーーーーーー!!!!!」




顔を赤くするゆくらを見つめる徐庶は穏やかに笑っていた。
















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