「ふぁ〜…美味しかったお腹いっぱい…!」
「うん、すっごく美味しかった…!」
色とりどりのオードブルや、ベルベット特製のキッシュ、アイゼンが作ったパスタなど、一同はたらふく平らげ、まったりとした夜を過ごしている。
「ライフィセット、眠くなる前にお風呂入ってきなさい」
「うん、そうするよ。いってきます」
ライフィセットが席を立つのを見送ると、缶ビールを飲み干したロクロウがニコニコと一升瓶を手に取った。
「食い終わったことだし…ユクラ、これ飲むぞ!」
「わ、美味しそうな日本酒だ〜!」
「ユクラがイケるクチで良かったな、ロクロウ」
「そうだな!アイゼンも、ほら」
ユクラとロクロウ、アイゼンは乾杯をすると、それぞれアルコールの味を楽しんだ。
「エレノア、マギルゥ、片付けるわよ」
「あ、わたしもやるよ」
「ユクラの歓迎会なんですから、そのまま飲んでてください!」
「ありがとう!じゃあ、お言葉に甘えて…」
「儂は今アイスを食べようと思っていたというに〜…」
「とっととやるわよ、じゃないとアイスは私が食べるけど」
女子たちが手際よく片付けているのを横目に、ユクラはお猪口を傾けた。
「はぁ、美味しい〜っ。幸せ…!」
「ユクラは酒好きなんだよな?普段何飲むんだ?」
「何でも飲むよ!お酒は癒やしだよ〜」
緩んだ笑顔でそう答える。程よくアルコールが回ってきて、気持ちがいい。
「おぉ、アイゼン、いい客になりそうだぞ」
「ああ。…仲間とバーを経営していてな。今度連れて行ってやる」
「骨董品店とバー…!大人…!」
「大人と言うかおっさんだけどな〜」
「おっさんじゃねえ、お兄さんと呼べ」
金髪碧眼でガタイの良い体、そして鋭い目つき。普段だったら間違いなく近づかない人種だが、このシェアハウスの管理人になったからこそこうやって話せている。何だか嬉しくなり、酒が進む。
「ロクロウは、普段何してるの?」
「俺か?俺は、剣の腕を磨いてるぞ!」
「…剣?」
大学生だとか、フリーターだとか、音楽やってるとか、その類の答えを予想していたユクラは、思わず鸚鵡返しをした。
「応!趣味は道場破りで、兄貴を斬るのが夢だ!」
「なんか物騒!」
「こいつの実家は代々続く剣術の流派だからな」
「なるほど…。なんか、すごいね」
こんな人懐っこくおちゃらけているのに、剣を持ったら変わるんだろうか。なんだか不思議な感じがして、ロクロウをふと見ると、にこりと返された。なんとなくこの二人は色恋沙汰が激しそうだなぁ、と思いながら、ユクラはまたも酒を煽った。
ひとり、またひとりと自室に戻り、最終的に残ったのはロクロウとアイゼン。ふと時計を見ると、1時を回っていた。すっかり酔いも回り、二人を見ても同じく酔っ払っている。
「そういえば、ユクラは今彼氏いるのか〜?」
「残念ながらいないんだよねぇ〜…」
「ユクラ、一つ言えることがある。…こいつはやめておけ」
「その言葉、そのまま返すぞー」
「…じゃあふたりとも、遠慮しておく〜」
三人での会話は尽きない。リビングの明かりはもう少しの間灯ることとなった。楽しい夜はまだまだ続いてゆく。
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