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 胸にのし掛かるズッシリとした重さで目が覚めた。昨晩は私の隣で本を読んでいたはずのメローネが、私の胸に頭をのせて寝こけているのが見える。
 まるで安心しきった子供のような寝顔だ。起こしてしまうのは忍びないけれど、重いものは重い。

「起きてメローネ、重い」

 頬を指先で軽く叩いてみても、少し身動ぎを見せるだけで起きる様子は微塵も感じられない。
 どうやら夜更かしもしたようだし、穏便に済ませるのは中々手強そうだ。しかし、今日は午前から仕事がある。
 どうしたものかと頭を捻ったときに、メローネの口元が弛んでいるのを見とめた。

「メローネ、狸寝入りもほどほどにね」
「もう少しぐらい行けると思ったんだがな、さすがノエミは鋭い」

 体はそのままに、首だけを起こしたメローネが語りかけてくる。イタズラがばれた子供のような顔をしているのが妙に可愛らしくて、頭をわしわしと撫でてやった。
 くすぐったそうに身をよじる仕草が、やけに彼を幼く見せる。
 窓越しの光で、透き通るメローネの甘い色の髪。私の重ったるく暗い色の髪とは大違いだ。美しく輝くメローネの髪が、内緒だけれど私はとても好きだったりする。

「朝ごはん作ってあげる、それ食べたら一緒にアジトに行こうよ」
「この前置いていった俺の服はそのままか?着替えを持ってきてないんだ」
「クローゼットの右下、下着はその上の引き出し」
「Grazie」

 ノロノロとベッドから起き上がるメローネをおいて、洗面台に赴く。鏡の前には当然のように歯ブラシが2本。なんならキッチンに食器は2揃いずつ、リビングのクッションは2つ、寝室の枕だって2つだ。私の家がそうなのだから、勿論メローネの家とてその状況は変わらない。
 ここまで一緒にいるのに、私たちは恋人でも家族でもなんでもない。改めてその事を考えると、何だか可笑しくって笑いが止まらなかった。


 こんなに一緒にいるんだから、いっそ家は同じでも良いのではないだろうか。そう漏らした言葉に「なるほど、名案だな」と深く頷いたメローネは翌日、少ない荷物と共に私の家に転がりこんだ。
 ずいぶんと急に思えるけども、家賃も少しは浮くしまあいいか。


 アジトのリビングで、事の顛末を聞いたギアッチョは唸るようにしてため息をついたけれど、お腹でも痛いのだろうか。
 そうなんだったら、その目の前のバウムクーヘンもらっても構わないかな。これ美味しいんだよね。

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