03

 メローネと初めて会った時のことは未だによく覚えている。まだチームにこれほど人がいなかった頃、私は少女でリーダーすらもまだ暗殺者として初々しかった頃だ。

「リーダー、この子はあたらしい子?私とおんなじくらいだ」
「そうだ、年の頃はノエミと同じくらいだろう、ほらメローネ」

 あの頃のメローネは天使かと見紛うような美少女っぷりを発揮していたのだ。照明の光を受けて艶めく髪、宝石のように目映く輝いた瞳、細枝のようにしなやかな肢体。リゾットの背中に身を隠して、チラチラとこちらを伺い見る姿は目を蕩けさせる程に美しく、思わず微笑んでしまうほどに可愛かった。

「お名前、メローネっての?わたしノエミ、お話ししようよ」
「……嫌」
「えっ、なんで?なんでよリーダー」
「俺に聞かれてもな……どうしたんだメローネ、さっきまでは普通だっただろう」

 手を差し出しても、リゾットの服裾を掴んだメローネは、首をふるふると振ってこちらに出てこようとしない。会ったばかりだから失礼なんてしようもないし、まったく原因に思い当たらなかったのだ。
それでも、メローネは私とリゾットが困惑していることは感じ取ったらしく、おずおずと首だけを私の方へと向けてきた。

「……俺のスタンドはさ、女を材料にして子供を産むんだ」
「メローネ、それは」
「だからさ、アンタみたいな女は近づいたらどうなっちゃうかわかんないよ」

 再び顔を隠してしまったメローネを、リゾットが気遣うように見下ろす。なるほど。きっと彼にとっては女は資源でしかないのだ。もしくは資源にしても構わないだけの振る舞いを、彼に与えるもの。
 それでも、私の手を握らずにそうして隠れているのは彼の優しさなんだろう。子供の頭ではろくな答えも出なかったけれど、それが、あの頃の私が必死に考え出した答えだった。

「じゃあ大丈夫、私は女じゃなくて女の子だからね」
「えっ……」

 予想外の答えだったようで、顔を隠すことを忘れたメローネがこちらを凝視する。今だと言わんばかりに、私がメローネの手を握りしめても、驚いた彼は振りほどくことすらしなかった。

「女はアンタにとって、材料にしても構わない事をしてくるんでしょ」
「う、うん」
「わたしは女の子だからそんなことはしない、だから一緒にいても危なくないんだよ」
「そう、なのかな」
「そうなんだよ、信じられなくてもいいよ」
「うわっ!」
「わたしがこれから教えてあげるから、ほら!」


 そのまま手を引いて扉の方へと走りだす。教えてあげたい事がたくさんあるのだ。部屋になんていられない。ハラハラしながら見守っていたらしいリゾットが、安堵のため息を漏らすのを横目に見た。

「リーダー!今日はもう仕事無いでしょ、わたしたち遊んでくるから!」
「日没前には帰ってこい、あまり無茶はさせるなよ」
「はーい!メローネ、ここら辺のこと教えてあげるね!」
「……うん、うん!」

 その時だ。それまでどこか身を強張らせていたメローネの、手の力が抜けた。私は何だか嬉しくなってしまって、どこまでも走っていけそうな気分だった。きっとこれから、私たちはとっても仲良くなれる。そんな期待で胸がいっぱいだった。

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