▼
黒く細長い手足は針金のように蠢いて、絶えず甲高く吐き出される音は言葉にすら成っていない。正気を疑うような見目のソイツが、ガキのころ隣家に住んでいた少年だと俺は知っていた。
たまには昔馴染みと話すのも悪くない。食事なんかどうだろう。
そう考えて、手招かれるままに鏡に指先で触れようとして。ふいに後ろから呼び止められた。
「イルーゾォお前今日仕事だろ、そっちに行くんじゃねえぞ」
そうか、なら今日はダメだ。軽く頷いて、リビングへと向かうホルマジオの後を追った。
後で思い出したけれど、今日は俺に仕事なんてないし、隣家に少年なんて住んでいなかった。恥をかく前に勘違いに気がつけてよかった。
▲
- 1 -back