心残りを取りに来る話3
「これ…」
想像通りの反応だ。静かで美しい町には不釣り合いなほどの黒。ぽかりと口を開けた闇の回廊を前に、日向が不安そうな目でこちらを見遣った。
「一緒に行こう」
咄嗟に子どもを庇い、俺と対峙する日向の手には、やはり。
「…覚えていたんだな」
ぎりぎりと火花を散らすのは、二振りの鍵。その向こう側で、日向が悲しそうな顔をする。
この鍵が、悲しい記憶を開いてしまいそうな気がしたからーー。迷い、揺らぎ。
彼女の手から離れた鍵は光の束になって消える。
手を伸ばすとびくりと肩が跳ね、体が強張った。その体を出来る限り優しく引き寄せる。
「ぜ、ゼアノート?」
思っていたことと違ったのか、日向が焦ったような声を出した。ぎゅうと閉じ込める腕の力を強めると、日向がこちらを見上げる。翡翠の目と視線がかち合うと、困惑に揺れる。
「あ、あの」
「傷つけるつもりは初めからない」
記憶が戻ったかを確かめるために試しただけだと告げても、不安は消えないらしい。それでも幾分か力の抜けた日向、腰に腕を回すとぴくりと震えた。
「日向が好きだ」
たっぷりと間を置いて、翡翠の瞳が見開かれる。え、と口にした、そのままの表情で固まった日向の頬に手を添える。僅かに首を傾げて日向の開かれたままの唇に自分のそれを重ねると、ようやく我に帰ったらしい日向。抵抗も見通してしっかりと彼女の手首を拘束する。
無防備に開かれたままだから、簡単に舌先も押し込めた。入ってきた熱に明らかに不慣れな日向の舌は慌てて奥に引っ込むが、しつこく追いかければ簡単に絡み合う。
腕から力が抜けたことを確認して、日向の後頭部に手を回す。コートに縋る手が愛しい。
「……い、いじわるしないで」
半分泣いている。そういう顔をしているとますます虐めてやりたくなるが、今回はこの辺にしておこう。
「一緒には、いけない」
胸の中で、日向が呟く。腕は背中に回されて、胸に顔を埋めて。わかっていた。彼女が進んで闇へと続く道を歩くはずがない。記憶がなくとも、彼女は光の守護者なのだから。
「え」
「スリプル」
翡翠の目は途端にどろりと濁る。意識を失って崩れ落ちる体を抱きとめると、
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