最高のバトルだった。極限に高められた集中の中、ポケモンも己も魂を削り、ぶつけ合う瞬間。最高潮の視線、期待、熱の中で、相手を叩きのめす快感。数時間たった今でも、思い返せば興奮冷めやらない。熱に急かされるまま、だがそれでも冷静さを取り戻すため、敢えてタクシーは使わず、徒歩で帰路を急ぐ。
ポン、と軽い音がしてスマホを覗くと、労いの言葉と今日の夕飯の献立。自然と頬が緩む。ああ、早く会いたい。
「いいな…」
いつになく機嫌の良い俺に、日向も嬉しそうに笑う。けれど、どことなくぎこちなさを感じる。仕草や、目線。何か言いたいことがあるようだった。
「ダンデさん、あの」
「ん?」
「わたし、試合を観たいの」
「ああ、次のトーナメントはまた大分先に」
「ちがう、テレビじゃなくて、」
ちら、と視線を上げる。薄緑色の視線は俺を窺うように向けられていた。
「わたし、外に」
必死に絞り出した声。勢いのまま上げられた視線は、だが俺を見て凍り付いた。
「日向」
かちり。スプーンが皿の上に落とされて、そんな些細な音がやけに大きく響いた。さっきまでの暖かな空気は消えて、日向の笑顔も俯いて見えなくなる。
「心配なんだ」
「わかって、ます」
「君が、どんな目に合うか」
「おいで」
- 4 -
*前次#
ページ:
ALICE+