ふと、誰かに呼ばれたような気がして目が覚めた。時計を見ると、昨夜仕掛けた目覚ましよりも早起きだ。自分にしては一年に数回あるかないかの出来事で、ちょっと得をしたような気持ちになる。今日は、何か特別なことが起きそうだ。
のびをしながら窓の外に目を向けた。黄色い朝日が海といつも遊んでいる島を照らしている。
この調子なら、リクやカイリより先に島に行けそうだな。そう、のんびりあくびをしているときだった。
「ん──?」
おおよそ朝らしくないものが、きらっと空をよぎって海に落ちた。
「朝なのに、流れ星?」
リクに言ったら馬鹿にされるかもしれないが、間違いなく、今この目で見た。
確認してみよう。思ったときにはすでに足は動き、いつものボートを操り島に着いた。当然のことながらこの時間に島へ来る人は滅多にいないので、波の音と風が鳴らす葉の音しか聞こえてこない。
「いったい、なんだったんだろう?」
しばらく探索してみるも、島は別段、いつもどおりで何も新たな発見はなかった。もしこの場にリクがいたら「やっぱり寝ぼけていたんじゃないか」なんてからかわれてしまうかもしれない。想像して、つまらない気持ちになる。
「あーあ。腹へったな……」
先ほどの不思議な現象から興味をなくすと、とたんに空腹を思い出した。朝食を食べたらどうせ一日じゅうこの島で遊ぶのだから、家に帰るのは面倒だ。適当に、魚でも捕まえよう。魚たちがよく好む場所を知っているので、そこへ向かった。
思ったとおり、ほどよい大きさの魚たちが岩場の影に潜んでいるのを見つけると、海に靴ごと足を踏み入れ、慣れた仕草でそっとゆっくり忍び足で近寄る。魚たちはこちらに気づいていない。──今だ! 掴み取ろうとした瞬間、視界の端に捉えたものに気を取られ狙いを外した。ぱちゃんっ、と水を跳ねさせながら魚が逃げる。
「なんだ、あれ?」
はじめはよく分からなかった。よく見ようと瞼の上に掌を添え、目を細めて正体を探る。波に遊ばれぷかぷかと漂う、布切れにモップと棒がくっついたもの──。
「……人だ!」
布切れは服、モップは髪、棒は手足だと気づいて慌てて泳ぐ。近づくと、自分と年の近い女の子がぐったりとした様子で浮かんでいた。
「だいじょうぶか? しっかりして!」
呼びかけに反応はない。死体かと疑ったが、息はあった。とりあえず、陸に戻らなければ。
砂浜に横たえた彼女の全身を見て奇妙に思った。事故にでもあったのか、ひどく汚れてボロボロになった服を身にまとっている。左の腕には大きな傷跡まで刻まれていた。彼女は、何か大変な経験してきたに違いない。
眺めていると、突然、彼女が咳き込んだ。目を覚ましたかと期待する。
「ねぇ君! 俺の声、聞こえる?」
「う……」
しかし呼びかけるも虚しく、彼女の目は開かなかないまま、また気絶してしまった。
眉を寄せて考える。自分にはこれ以上どうしようもできない。とりあえずリクと、大人のひとを呼ぶべきだろう。
「ちょっと待ってて。すぐに戻るから」
朝早くからここに来る親友なら、もう到着しているかもしれない。
ひとまず少女をその場に残し、ソラはボート置き場の方へ駆けだした。