数時間後、再び中央広場に戻ってきたヴェントゥスたちは、この祭りで一番注目されている催しもの、ミリオン・ドリーム・アワードの発表を待っていた。
 中央広場は初めて訪れたときよりも多くの人で埋め尽くされており、立つことだけで精一杯だ。
 時計の鐘が鳴る。ステージの袖から、主催であるミニー王妃と侍女のデイジーが現れた。彼女らは中央に立つと、凛とした上品な声で話し始める。

「みなさん、お待たせしました。ディズニータウン・ドリーム・フェスティバルのメインイベント、ミリオンドリーム・アワードの発表を行います」

 会場が一気に静まりかえり、場の緊張が高まってゆくのを感じる。

「今年の受賞者は、なんと複数いらっしゃいます。今年のミリオンドリーム・アワードは、フィリア、ヴェントゥス、アクア、テラの四人です!」

 ヴェントゥスはフィリアと顔を見合わせた。選ばれたことよりも、親友二人もここにいるということに驚き、喜んだ。

「テラもアクアも来てるんだ!」
「この中にいるのかな?」

 テラとアクアを探そうと会場を見渡していると「なんだと!」と声が上がり、キャプテン・ジャスティス、もとい、ピートがステージを駆け上った。
 ピートは王妃の前に立つと、投票結果は間違いだと文句をつけ、終いには「票なんてどうでもいいから賞品をよこせ」と要求した。あまりの自分勝手な言動をするピートに、王妃は静かに怒りを伝える。

「今まであなたの行動にはいくぶん目を瞑ってきましたが、あなたを思い、あなたのためを思って投票した人たちの気持ちをないがしろにする、今の言葉は許せません!」

 王妃が呼び出したほうきの召使いたちによって、ピートはどこかへ連れて行かれてしまった。
 ヴェントゥスも会場の人間と生暖かい視線で見送っていると、隣にいるフィリアが微かに俯く。

「ピートさん、投票なんてどうでもよかったんだ……」

 しょんぼり、という表現がピッタリなその様子に、ヴェントゥスは「まさか」と眉を寄せる。

「もしかして、フィリア、ピートに投票したの?」
「いろいろお世話になったし、投票が欲しかったみたいだから。でも……」

 そういえば、ピートが賞品狙いだということをフィリアは知らなかったのか。ヴェントゥスは軽く息を吐く。

「きっと、優勝できなかったから頭に血が上っただけだよ」
「……ん」
「さあ、受賞式に戻りましょう。受賞者の、フィリア、ヴェントゥス、アクア、テラ。ステージにいらしてください」
「フィリア、行こう」

 ミニー王妃に呼ばれ、フィリアとステージの上に登る。しかし、いくら待てどもテラもアクアはやってこない。

「他のお二人は欠席されているようですね」
「二人とも、もういないのか……」
「もう旅立っちゃったみたいだね」

 期待した分、落胆も大きかった。
 ミニー王妃がこちらを見たので、自分たちもそちらを向く。

「では、あなた方が代表して受け取ってくださいね」

 頷くと、ミニー王妃が表彰の賛辞を始めた。

「あなたたちはドリーム・フェスティバルにおいてたくさんの人から人気を集めました。よって、ここにミリオンドリーム・アワードを贈ります。おめでとう!」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
「受賞の記念として、あなたをイメージしたあなただけの特別なアイスクリームを贈ります」

 渡されたのは、フルーツやコーンで飾られた氷菓子。自分のものは、彼の特徴によく似ていた。

「すごいな。おいしそう」
「それに、とっても可愛い」

 特製のアイスのおかげか、フィリアは笑顔にもどっていた。そのままフィリアと己のアイスを見つめていると、観客たちが「どんな味?」と問いかけてくる。

「食べちゃうの、ちょっともったいない気もするけれど」

 フィリアと同じタイミングでアイスに齧りつく。しつこ過ぎず、ほどよい甘さに頬が綻ぶ。

「とっても美味しいです」
「すごく気に入ったよ」
「喜んでもらえてよかったです」

 ミニー王妃がにっこり微笑む。
 こうして今年のミリオン・ドリーム・アワードは幕を閉じた。





★ ★ ★





 ゲートを潜り抜ける前に、フィリアはこの世界の町並みを振り返った。にぎやかな音楽と楽しげな歌声はいつまでも鳴り止まない。

「フィリア」

 ヴェントゥスが呼んでくる。名残惜しくも町に背を向けたときだった。

「あ、いたいた。おーい、フィリア〜」
「ホーレスさん?」

 フルーツスキャッター主催のホーレスが、手を振ってやってきた。様子からして、わざわざ探しに来てくれたようだ。

「帰るところだったのか。間に合ってよかった」
「私に、何かご用ですか?」
「用も何も、君はフルーツスキャッターの大会で優勝しただろう? 賞品を渡しにきたんだよ」

 はい、と柔らかな包みを渡される。促されて開いてみれば、出てきたのは一着の服。端々にこの世界特有の装飾が施されていながらも、今着ている服に似せられていた。

「これ……」
「フィリアが着ているものと似せてみたんだ。気に入ってくれると嬉しいんだけれど……」
「気に入りました、とても!……大切にします」

 ぎゅっと服を抱きしめた。これも、絶対に大事にしよう。

「優勝、おめでとう。また遊びにおいで」
「はい!」

 ホーレスが町に戻ってゆく。背が見えなくなったところで、ヴェントゥスがやってきて、手を差し出してきた。

「フィリア。この旅が終わったら、また一緒にここに来よう」
「……うんっ」

 フィリアはおおきく頷いて、その手を掴んだ。





 To be continue... 




執筆:2010.3.17
修正:2011.9.11

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