「レプリカならいいの?」
「なんのこと」
「近界民が嫌いなくせに、レプリカはトリオン兵だけど気に入ってるだろ」
「……」
「それはいいのかってこと」
ナシモトは近界民が嫌いらしい。以前の侵攻で家族を亡くしたからなんだろうけれど、なぜかレプリカのことを気に入ってるようだった。レプリカはおれの相棒でいい奴だ。でもトリオン兵であることは変わりない。なのにナシモトはレプリカのことを迅さんのように「レプリカ先生」と呼んでいる。
「レプリカ先生は、いいの」
「なんで」
「信頼できるから」
「トリオン兵なのに?」
「そう」
「トリオン兵の方が嫌いだと思ってた」
おれがそういえば、ナシモトはため息を大きく一つ。それでも視線はゆっくりとこちらに向けて説明を始めた。
トリオン兵はプログラムで動く、それはつまりプログラムを設定する近界民がいるってことでしょう? レプリカ先生は自律型なのはわかってるけど、きみが敵にまわればレプリカ先生だってきみの味方をするでしょ? 人よりも味方か敵かはっきりすると思うから。実際はどうなるかわからないけれど。あとは、私の知らないことを教えてくれるから、星を教えてくれるから、話しててとても楽しいよ。
そう話すナシモトの顔はいつもおれに見せる険しい顔ではなく、少し緩みを含んだような複雑な表情だった。
「さすがおれの相棒」
「どういうこと?」
「ナシモトの信頼を得るとはなって」
「きみには無理だろうね」
「それはどうかな」
挑戦的に言えばナシモトが顔をしかめる。ナシモトは表情によく出てわかりやすい。防衛隊員としてどうかと思うくらいだ。表情の変わる様子は面白い、自分が得しないウソばかりついてその理由を聞きたくなる、かといっておれには正直すぎる嫌悪をぶつけてくる。へんなやつ。だから面白い、気になるんだと思う。もっと話したら色々わかるようになるのだろうか。
「レプリカのこと答えてくれてありがとな」
「え、なに急に」
「おれはお前にきょうみがある。また話そうよ」
「わっ、私は近界民と話すことないよ」
そう言ってその場を去ろうと背を向けるナシモト。勢いよく体勢を変えたから、揺れる髪の毛の隙間から見える耳が赤くなってるように思えた。
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