「遊真くん」
 名前を呼ばれることが嬉しいと感じるようになったのはいつからだろうか。自分とは目標も、生き方も、考え方も違うコイビト。彼女にとっておれは憎むべき立場なのは重々承知していた。それなのに、おれを認めて、知ろうとしてくれて、なるべく一緒にいたいって言ってくれて。おれだけの一方通行じゃないとわかったとき、今までおれの中になかった感情が、ここにないはずの心臓を満たした気がした。
「アヤリ」
「ん? どうしたの?」
 夜空を指さして、線を引く彼女に声をかける。星と星をなぞって星座を探すのが好きなんだと以前教えてくれた。向こうに行けばもっと色んな星空があって、惑星ごとに空の見え方も違うけれど、きっと今の彼女は興味より嫌悪が先に立ってしまい見ようとはしないだろう。
――それでも、いつか。
「いつか、向こうの星も見に行こうな」
「近界民は嫌いだよ」
「知ってる。でも近界の星も、こことは違う魅力があると思うぞ」
「たしかにレプリカ先生もそう言ってたけど……」
 近界……、と顔を険しくしながら考え込むアヤリ。自分に愛国心はない。ただ転々としてきたから色々な空を知っているだけ、あの頃は何も思わなかったけれど、今ならきっとあれを見て喜んでくれる人が隣にいるから。
「どう? アヤリ」
「……遊真くんとレプリカ先生が一緒なら、いいよ」
「そうか。じゃあこのまま、オサムたちと頑張らないとだな」
「うん、応援してるよ」
 おれだけの、A級目指す理由がまた一つ増えた気がした。向こうでも隣にコイビトと相棒がいてくれる未来は、きっと幸せなのだろう。





_ /reload/novel/1/?index=1