あー! っと叫び声が聞こえて、すぐにドタバタと小走りでアヤリが走ってくる。ここはアヤリが本部に借りてる部屋だから走るような距離はないけれど、何かしら焦るようなことがあったのだろう。視線を音がする方向に向ければすぐにアヤリの姿が見えてくる。
「遊真くん!」
「なんだ?」
「冷蔵庫の中のゼリー食べたでしょ!?」
「あのプルプルしてたやつか?」
「そう!」
「名前書いてなかったぞ?」
「支部とは違って私の部屋なんだもん、名前書かないよ!」
つい、と誤魔化せば、もう、と怒る。そんなやりとりがおかしくて、ほほえましいなんて気持ちになるけれど、目前の彼女はそうもいかない。楽しみにしていたらしいその「ぜりー」が無かったことにかなりショックを受けている。
「悪かったって」
「……おいしかった?」
「おう」
「ならいいんだけど……」
話をきくと、このこだわり用は貰い物のだったかららしい。アヤリは自分で食べ物を用意しないぶん、人から貰う物は大切においしく食べる、そんなマメな奴だ。
これは仕方ないと、アヤリが出してくれていた座布団から立ち上がる。
「どうしたの?」
「同じの探してくるよ」
「そんなことしなくていいよ!?」
「でもアヤリも食べたかったんだろ?」
さっさと外に出る準備を整える。同じものが見つかればいいけれど、そもそもどこに売ってるかもわからない。それでも動きたいと思った。
いつも通り窓から出ようとしたら、服の裾が引っ張られる。
「アヤリ?」
「私も行く」
「待ってていいんだぞ?」
「……遊真くん迷子になりそうだし」
「大丈夫だろ」
おれのことを方向音痴と思っているのだろう。本部内のように似ている場所ばかりじゃなければ戻ってくることなど容易だ。そんなことはアヤリもわかっているだろう、きっと言いたいことはそれじゃないはずだと、彼女の言葉の続きを待つ。
「……私が一緒に行きたいんだよ」
だから玄関から一緒に行こ? と照れながら言う。コイビトから外出のお誘いというものは思ったより嬉しいもので、次はわざと彼女の物を食べてしまおうか、なんて考えてしまった。
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