「外、寒いね」
「帰るか?」
「ううん。星を見たいからこのまま」
そう言ってアヤリは両手をすり合わせながら白い息を吐いた。口から出るその"もや"は、いつもの黒色とは違って新鮮で、白色も悪くないと思うには充分だった。
アヤリと付き合い始めた、とはいえ生活に大きな変化はなくて、遠征に選ばれるために訓練して、個人戦を二人でして、アヤリが支部で夕飯を食べた日は帰り道を送って、その際に寄り道して話したり。変わったことと言えば、手を繋いだり、キスをしたり、俗にいう恋人がすることをできるようになったことだろう。
「遊真くん?」
おれが無言でいると、顔を覗き込んでくる。身長はおれの方が低いため、アヤリの顔がおれより下にあるのは外じゃ珍しい。
アヤリの星を見ることに付き合うようになってから、眠ることのできない時間を潰すために見ていた夜空がなんとなく好きになった。だからこの好きないつもの景色と、いつもと少し違うコイビトとの顔の位置。
「なんでもないよ」
不思議そうにするアヤリにそう答えて、キスをしようと顔を近付けた。
――ザンネンながら「外ではだめ」とアヤリに怒られてしまった。それでも恥ずかしいのか照れてるのか、顔を赤くしてそれを隠すように怒るアヤリを見ることができるのはいつだって悪くない。きっとこれはおれの特権だ。
「……帰ろっか」
「もういいのか?」
「うん」
足早に前を歩き始める。いつもはよそ見ばかりしてろゆっくり歩くから、相当外でキスするのは嫌だったのだろうか。少なくともまだアヤリに早かったのかもしれない。
一人で反省をしながらアヤリの後ろをついて行く。突然ピタリと足を止めるため、つられてこちらも足を止める。「アヤリ?」と名前を呼べば返事はなくて、代わりに困ったように眉をひそめながら、微笑むアヤリが振り返った。
「……早く帰って、続きしよ?」
言い終えてから、さっきよりも早いスピードで歩き出す。口からは白色の息が漏れていて、アヤリの本心であることがわかってしまう。
緩む口元が彼女にばれたらきっと怒るだろう。口元を必死に直して、隣に追いつくために駆け足をした。
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