ボーダーは人が多い。だからいちいち顔も名前も覚えていられないし知らない人の会話なんて気にしたことなんてない。ただ、私も気になるものはあるわけで、知らない人たちが自分の知っている人の名前を挙げていたら聞き耳だって立ててしまう。
 知らない女の子たちが、遊真くんのことを可愛いと言っていたのを聞いてしまった。自分と恋人という関係の彼が褒められるのは嫌ではない。ただ遊真くんが可愛い、と繋がらなくてモヤモヤしてしまう。
 確かに身長は小さいけれど、それにも理由があるわけで中身は年相応。食べ物を食べている時は確かに可愛いのかもしれないけれど。
 うーんと、彼の姿を思い浮かべる。可愛いと思える姿が浮かんでもいいと思うのだけれど、なかなか出てこない。
「アヤリ」
 遊真くんの声が聞こえた気がした。私にとって、表情よりも声の方が先に浮かぶようだ。
「アヤリってば」
 やけに近くで、話しかけられている気がした。今日、本人は防衛任務と言っていたからここにいるはずはない。なんとなく、好きな人の幻聴なんて恥ずかしい。
 ぐいっ、と、突然引かれた。目の前には、私のことを真っ直ぐ見つめてくれるけれど、本音を見抜いてくる赤い目。
「ちゃんとおれを見てよ」
 そう言う彼は見た目とは釣り合わない、異性の顔をしている。
(ああ、そうか……)
 彼を異性の、かっこいい人と思っているから、私は彼を可愛いよりこっちの印象が強いんだろう。





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