深海に沈む潜水艦
なまあたたかくてくらい夜
向こう岸まで連れてって
(ワードパレット フォロワー様より)

 出会った時は冷たい空気でいっぱいの冬だったけれど、また今年もじんわりと汗をかくような、そんなあたたかい夜を運んでくれる季節が近付いてきた。
 梅雨が明けて、また夜空に星が見えるようになる。別に雨が嫌いなわけではないけれど、せめて夜は雲がない方が私は嬉しい。
「なんかアヤリが外見てるの久しぶりだな」
「やっと雨が止んだからね」
 松葉杖を器用に使いながら、遊真くんがゆっくりと隣に腰かける。遊真くんのお父さんが元々住んでいたらしい麓台町のお家で、レプリカ先生も含めて三人で住み始めた。縁側がある家で、そこで私はいつも星を見る。
「もうすぐあまのがわってやつだろ?」
「すごい、覚えててくれた」
「もう何年このやりとりしてると思ってるんだ?」
 そう言って遊真くんは七夕の話をし始める。それは全部私が話したことだけど、覚えていてくれたのがとても嬉しい。
「でもほんとに星の川だったらどうなってるんだろうな」
「聞いた? レプリカ先生。遊真くんがロマンチックなこと言ってるよ」
『そうだな。ユーマはアヤリと過ごすうちにそういうことも言うようになった』
「お前らな……」
 ごめんねって謝れば、遊真くんは口を尖らせながらなにも言わない。
「でもほんとにそうだったら私は潜ってみたいよ」
「普通に潜ったら視界がぼやけるぞ?」
「潜水艦とか使って……」
 せんすいかん? と首を傾げる遊真くんにレプリカ先生が説明をしてくれる。
「深海みたいに深くまで。星の中に沈めるならば私本望だよ」
「それ、ちゃんと帰ってくるのか?」
「迷子にならなければ……?」
「しんようできんな」
 そう言って遊真くんは深いため息をつく。迷子になったり、方向音痴なのは遊真くんの方だと思う。中学生のときは本部でよく迷子になっていたのだから。
「アヤリが帰って来なかったらおれたちが迎えに行くからいいけど」
『心得た』
「ふふ、それは頼もしいね」
 遊真くんが手を差し出してくれるから、その手に自分のを重ねる。あの頃は恥ずかしくて、そんなこと素直に出来なかったけれど。
「ちゃんと私を見つけて岸に連れていってね」
「おう、まかせろ」
 あの頃と違って、大きくて温かい遊真くんの手が私の手を包み込んだ。





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