その知らせは突然だった。ボーダー隊員、鳩原未来を隊務規定違反で解雇とするという通達が、私とユズルの耳に届くのは遅くはなかった。すぐに私とユズルは上層部に詳しい話やなにかの間違いであることを進言したが取り合ってもらえなかった。
「ユズル。何かの間違いだよね」
「そうとしか考えられないでしょ」
「うん、そうだよね……」
「でもさ、鳩原先輩 『あたしはやっぱりダメなやつなんだ』 って言ってたじゃん」
「うん……」
「あれ、オレらに何か伝えようとしてたのかなとは思う」
「私たち、ずっと一緒にいたのにね」
「うん」
「鳩原さん、なんで相談してくれなかったんだろう」
「オレらが頼りないから」
「……悔しいね」
「うん」
 その日、ユズルとはそこで別れた。鳩原さんが規定違反を起こしたことで、所属していた二宮隊はB級に降格したとのこと。二宮隊は遠征の選抜試験だって通っていて、実力だって隊員の誰もがトップレベルだ。本部の廊下を歩けば、二宮隊がやらかしたらしいんなんて噂話が聞こえてくる、私の方を見ては移動する人もいれば、聞こえるように話す人も出てくる。……馬鹿みたい。そう心で呟くことしかできずに自室のある方向へ足早に進んでいく。自室に入り、すぐにベッドへ横になる。一人だけのこの部屋はあまりにも静かで、耳鳴りが止まなかった。静寂は私に考えることをやめることを許さなくて、「どうして」「なんで」「会いたい」「せめてもう一回」と、もう会うことのできない相手への想いを募らせるだけだった。隊務規定違反ならば、もしかしたらボーダー外で会える可能性もあるが、解雇にした団体の、ましては分かれの言葉を告げなかった私とは会いたくないかもしれない。記憶処理の措置を受けていて、私たちのことなんて覚えてないかもしれない。考えれば考えるほど思考は悪い方向にしか進まない。気が付けば目から涙が流れていて、それに気づいてしまえばもう止まらなくなる、そのうち疲れて眠るだろう。私はその晩、涙が出なくなるまで泣き続けた。





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