私は施設長に呼び出され、応接室へと向かっていた。なにか悪いことでもしたのだろうか。コンコンコン三度とノックをすると、中からどうぞと返ってきたので、失礼しますと告げ中に入る。そこには施設長とスーツを着た見知らぬ男性がいた。目が合ったので会釈をすると、座りなさいと施設長に告げられる。今一度、失礼しますと呟きフカフカのソファに腰をおろした。
「梨本さん、こちら、ボーダーの方だ」
「ボーダーってあの?」
「初めまして。きみが梨本彩里さんだね」
 にこりと笑うボーダーの方にはじめましてとだけ挨拶をする。なぜ有名な組織の方が私になんの用事なのだろう。
「本人も来てくださいましたので、改めて説明させていただきますね」
「……はい」
「梨本彩里さん、ボーダーに入隊していただけませんか?」
「え?」
 頭が真っ白になる。ボーダーに入隊?私が?なぜそういう経緯になったのか、なぜ私なのか、さっぱりわからない。わからないことだらけであるが、あの白い化け物たちと戦えるのならば、家族の、私の今の生き方の復讐になるのであれば。私は首を縦に振った。
「まだ梨本さんは十一ですよ。梨本さんもよく考えた方がいいのでは?」
「梨本さんの身の安全についてはボーダーが保障します。教育も生活もなにも心配なく過ごせることをお約束します」
「施設長、私入隊します。年齢のことが気になるのであればあと少し、中学生になったら」
「こちらとしては皆さんが納得できるタイミングでいつでも歓迎します」
 私たちが貴方を求めていますので歓迎するというのは可笑しな話ですがね。とボーダーの人は笑顔で付け足した。きっと悪い人たちではない、そう思えた。施設長の方を見てもう一度入隊しますと告げれば、中学校に入学したらにしましょう、と許可を得ることが出来た。私はよろしくお願いします、とボーダーの人に告げて退室した。きっとこのあと大人の、金銭に関わる話があると思ったから。

 戦場で敵と戦うことで命を落とせるのであれば、それはきっと本望だ。





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