chapter:Idiot~名前 「だあああああっ、もうっ!! 名前は親が付けてくれる、自分にとって意味がある大切なものだろう? 刃物やらが普通に飛び交う、こんな物騒な世の中なんだぞ? 出会ったばかりの奴に、ホイホイと軽々しく自分の名前を口にする奴があるか?」 バッカじゃねぇ? そういう気持ちで、両手を腰に置き、怒鳴った。 だけどさ、相手が名前を名乗ったのに、自分が名乗らないのは不作法だよな。 しかも、相手が命の恩人なら尚のことだ。 だからオレは、静かに口を開いた。 「……アティファ」 オレがふくれっ面をして名前を教えたのは、別に教えたくなかったからじゃない。 名前を知られるのがイヤだっただけだ。 だって、この女みたいな名前のせいで、オレはいつも馬鹿にされてきたんだ。 コイツにまで馬鹿にされるのは……なんか、かなりムカつく。 まあ、コイツの、『ヘサーム』っていう名前も大概似合ってない気もするけどな......。 だって、意味は、『鋭い剣』だぜ? そりゃさ、認めたくはないけど、顔は美形だし、背も高い。 見た目は似合ってると思うよ? だけどさ、こうして話をしていると、何も知らない、世間知らずなお坊ちゃんだ。 あ、別に嫌味じゃないぜ? オレが大嫌いな金持ちとは違う、いい意味の阿呆っていうことだからな。 |