アラビアン・ナイト
第三話





chapter:Idiot~名前





「だあああああっ、もうっ!! 名前は親が付けてくれる、自分にとって意味がある大切なものだろう? 刃物やらが普通に飛び交う、こんな物騒な世の中なんだぞ? 出会ったばかりの奴に、ホイホイと軽々しく自分の名前を口にする奴があるか?」

バッカじゃねぇ?


そういう気持ちで、両手を腰に置き、怒鳴った。



だけどさ、相手が名前を名乗ったのに、自分が名乗らないのは不作法だよな。

しかも、相手が命の恩人なら尚のことだ。


 
だからオレは、静かに口を開いた。




「……アティファ」



オレがふくれっ面をして名前を教えたのは、別に教えたくなかったからじゃない。

名前を知られるのがイヤだっただけだ。


だって、この女みたいな名前のせいで、オレはいつも馬鹿にされてきたんだ。


コイツにまで馬鹿にされるのは……なんか、かなりムカつく。


まあ、コイツの、『ヘサーム』っていう名前も大概似合ってない気もするけどな......。


だって、意味は、『鋭い剣』だぜ?


そりゃさ、認めたくはないけど、顔は美形だし、背も高い。

見た目は似合ってると思うよ?

だけどさ、こうして話をしていると、何も知らない、世間知らずなお坊ちゃんだ。



あ、別に嫌味じゃないぜ? オレが大嫌いな金持ちとは違う、いい意味の阿呆っていうことだからな。





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