chapter:▽・w・▽つ【溺愛ほりでぃ〜】 もう一度、金色くんがぼくの名前を呼んだ時だった。 うつむき続けるぼくのアゴは重力に逆らった。 そうかと思えば、オレンジ色の夕日に照らされている、涙で濡れたぼくの顔に影が生まれる。 ……チュッ。 「っふぁっ!?」 教室に、ありもしない聞いたことがないリップ音が聞こえたのは気のせいだろうか。 柔らかい感触がぼくの目尻に当たったのは気のせいだろうか。 へ、あっ、なに? びっくりしてまばたきすると、涙は最後の一粒を落として引っ込んだ。 「よかった、泣き止んだ」 ぼくの正面には今にもくっつきそうなくらい至近距離で、にっこり微笑む金色くんがいる。 「あ、あの……ぼ、ぼくっ!!」 ……バックン、バックン。 心臓が大きく鼓動する。 「うん?」 「あのっ、あのっ!!」 ぼくはいったい何を言いたいんだろう。わからないけど、でも、何かを伝えたかった。 だから、ゆっくり口をひらく……。 「すき……です」 「僕も好きだよ」 ぼくが好きと告げたら、金色くんも躊躇(ためら)いもなく『好き』と返してくれる。 だけど、でもね? 「ぼく、泣き虫だしっ!!」 「うん、知ってる。可愛いよね」 えっ!? 可愛っ!? いやいや、それだけじゃないよ? だって、だってね? 「っ、それに、勉強できないしっ!!」 「うん、だからこの時間がとっても嬉しいんだよ」 うぇえっ!? ぼくと同じことを思ってくれてるの? ――いやいや、でもでもっ!! 「料理得意とか……男子としてどうかと思うの……」 「イチくんの料理美味しいもんね。でも、イチくんも食べてみたいな」 っふえ!? ぼくを? たべる? たしか、告白してくれた時もそう言ってた気がする。 食べるって、どういう意味なんだろう? 「あの、ぼく。骨ばっかりだし食べても美味しくないよ?」 首をかしげて尋ねてみると、金色くんはクスリと笑った。 ――えっ? ソコ、笑うとこなの?? 意味がわからなくて、話を元に戻すぼく。 「あのっ、あのっ……金色くんに嫌われたくないって思ってるの……」 「それはとても嬉しいなぁ」 金色くんが言い終えた直後――。 おでこに弾力がある何かが当たったかと思ったら、すぐにリップ音が聞こえた。 ――へっ? 意味もわからず、おでこに触れてみる。 そこだけ、ちょっと熱いと思うのは気のせい? 「……かわいい」 ……クスリ。 また、金色くんに微笑まれた。 何かがあたったおでこ。 リップ音。 それらをイコールで繋げてみると……それは……。 「っつ!!」 おでこにキスされたぁあああっ!! ふぎゃああああああっ!! すべてを理解したぼくは、顔が真っ赤になって、ボンッって音が鳴る。 頭が真っ白になったその日、ぼくは勉強どころじゃなかった。 そうしてぼくは再起不能になっちゃったんだ。 ▽・w・▽つ【溺愛ほりでぃ〜】**END |