08


ガソリンスタンドからの帰り道、勇は不意に寒気を感じて体を震わせた。

「どうしたの?」

いつものように隣を歩いているひかりが尋ねて来る。

「いや、何か朝から寒気がするんだ」

「風邪じゃない?」

ひかりが立ち止まって勇の額に手を当て、自分の額の熱と比べる。

「……熱は無いみたいだけど」

すっと手を引いて、ひかりが言った。

「ああ……」

額にはまだひかりの手の感触が残っている。

それが不快ではなく、何だかとても暖かく感じたから。

歩き出しながら、勇はそっと自分の額を押さえた。

ひかりが再び立ち止まったのは、しばらく経ってからだった。

「どうした?」

「感じない?凄い殺気……」

ひかりは、いつかも見せた厳しい瞳で辺りを見回す。

勇の背に、更に強い寒気が走った。

やがて前方から落ち着いた足音が聞こえた。

街灯の明かりに、一人の背の高い男の姿が浮かび上がる。

黒い服を着ており、左の頬に傷跡が一本走っているのが見えた。

その時、勇もはっきりと感じた。

男の纏う、静かで確かな殺気を。

それはあまりに静かである故に、逆に恐ろしさを覚える。

隣のひかりも同じ事を思っているのだろう。

それは、いつの間にか勇の腕を強く掴んでいる事から容易に想像がついた。

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