11


再び歩き出そうとした時、一人の少年の姿が目に映った。

夕焼けの日射しの中、校門の柱に寄りかかって本を読んでいる。

誰なのかは、すぐに分かった。

「……勇?何してるの?」

躊躇いがちに声を掛けると、勇は本から目を上げた。

「ああ、遅かったな」

それだけ言って柱から背を離し、帰り道へ足を向ける。

少し行ってから、立ち尽くしたままのひかりの方を振り向く。

「どうした、帰らないのか?」

「あっ、待って」

ひかりは慌てて勇の隣に並んで歩き出した。

足を動かしながら、勇の横顔を見上げて尋ねる。

「ねえ、こんな時間まで何をしてたの?」

「見て分からなかったのか?読書だよ」

それは見ればすぐ分かった事だが、それなら家へ帰ってから読めば良いのだ。

何もわざわざあんな所で読む必要は無かった筈だ。

それにも関わらずあそこにいたのは、もしかしたら。

こう思ってしまうのは思い上がりだろうか。

自惚れだろうか。

もしかしたら、勇は自分を待っていてくれたのではないかと。

そんな事は無いと笑い飛ばされてしまうのが怖いから、声に出しては訊けないけれど。

ほんの少しだけ、この嬉しさを自分の胸に抱き締めていて良いだろうか。

- 67 -






[*前] | [次#]

しおりを挟む


ページ:



Reservoir Amulet