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(ああ……。もう夕方なのね)
夕暮れの柔らかな光を感じて、小さく息をつく。
通りを歩く人は、夕食の材料を抱えて家へと帰って行く。
セレネは集まってくれていた人々に頭を下げて、その場を後にした。
宿に帰ろうかとも思ったが、足は自然と街の外へと向かっていた。
その間に柔らかな光は少しずつ薄くなり、森に着く頃にはすっかり日が落ちていた。
訪れた夜の中、今日も森には霧が出ていた。
また迷わないよう、少しだけ木々の間に踏み込む。
此処に来たところで、また会えるとは限らない。
それでも街で捜すより森で待っている方が、彼に近付ける気がした。
また会えるかは分からない。
でも少ししか知らない貴方に、少しでも近付きたいから。
体を包み込む霧の静寂を感じながら、目を閉じる。
唇が紡ぎ出す旋律は、頼りなく揺るぎなく。
例え今は届かなくても、歌に込めた想いが巡って。
いつか貴方の元へ、届くだろうか。
そう信じているから。
信じていたいから。
今はこの森に歌を捧げよう。
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Reservoir Amulet