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「は、はい」

見詰めたままで頷くと、青年は向きを変えて一歩を踏み出しながら言った。

「こちらだ」

「えっ?」

「街はこちらにある。案内しよう」

そう告げながら歩き出す青年の後を追う為に、慌てて立ち上がる。

霧が出ている夜の森の中でも、その足取りに迷いは無い。

だからだろうか。

見知らぬ人に付いて行く事に、不安や恐れは生まれなかった。

広い背中から漂っているのが、何処か自分と通じる感情と思えたからかもしれない。

一人の静寂の不安。

長い冷たい夜に慣れながら、明るく暖かな朝を待っているような。

そう、ずっと何かを誰かを待っているような。

やがて、木々の向こうに街の灯りが見え始めた。

果ての無い森のように思えていたのに、とても早く着いたような気がする。

「此処からなら、街まで行けるな?」

足を止めた青年に尋ねられ、急いで頭を下げる。

「あっ、はい。ご親切に有り難うございました」

すると、真紅の瞳にじっと見詰められた。

それだけで、不思議な程に胸が高鳴る。

綺麗な赤い色から、目を逸らせない。

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