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わいわいといつも通り賑やかな様子を眺めていた真宵は、特に口を出す事も無くキッチンへ向かった。

人数分のコーヒーを淹れる準備をしながら、ふと視線を感じて手を止める。

いつの間にか卓が流しにもたれてこちらを見ていた。

「冴凪さん、どうかされましたか?」

「変わったといえば、君も変わったな」

「……そうでしょうか」 

「愛の力か」

真面目に言われて、思わずカップを取り落としそうになる。

「変な事を言わないで下さい」

「そうか。私の方はいつでも、ヴィンテージワインを開ける準備をしておくぞ」

冗談なのか本気なのか分からない、淡々とした口調で卓は続ける。

「どうであれ、パートナーとの絆を深めておくのに越した事は無い。これからの戦いを考えるなら、尚更だ」

「……ええ」

真宵は頷いて、キッチンから見える至聖を眺めた。

絆。

目には見えない、曖昧な言葉だ。

それでも、信じる事が出来たなら。

人は強くなれるのだろうか。





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