落葉
雨音が戻って来る。
恋しさの響いた、切なさの記憶が。
閉じ込めていた苦しさと愛しさが。
懐かしく新しく、絶え間無く駆け巡るから。
胸が詰まって、何も言えない。
ただ見上げる、深い色の瞳。
髪に体に降り注ぐ、冷たい雨。
それでも触れ合うところから、熱が生まれて。
今、彼が生きていると何より確かに教えてくれるから。
泣きたい程、嬉しい。
静かにこちらを見下ろしていた彼の手が動いて、雨が伝って顔にかかる髪をそっと払う。
そして顔に触れて、そっと撫でる。
涙なんて、雨に流れて見えない筈なのに。
優しく拭ってくれる仕草に、胸が熱くなる。
体に回された腕に力が込もり、更に引き寄せられる。
二人の隙間を埋めるように、ゆっくりと彼の顔が近付く。
やがて重なる唇の温もりを、目を閉じて受け止める。
降り続く雨の中、二人だけの世界のように。
彼だけを感じている。
永い時の別離を満たす程。
あたたかさが溢れてくる。
ずっとずっと、捜し続けていたから。
いつも想いは貴方の元へ向かうから。
- 176 -
[*前] | [次#]
しおりを挟む
ページ:
Reservoir Amulet