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続く歌声を頼りに足を進め、通りに立って歌っている娘を見付けた。
周囲には立ち止まって耳を傾ける人々の姿もある。
ライオスもその中に混ざって、続く歌を聴く事にした。
周りの聴衆も、今だけは心から安らいだ顔を浮かべている。
それ程に、歌声は切なく優しく胸に落ちて来る。
やがて曲は終わり、娘が頭を下げた。
人々は拍手をし、思い思いの言葉は娘に掛けてその場を去って行く。
他に人がいなくなってから、ライオスも話し掛けた。
「こんにちは。素敵な曲ですね」
「有り難うございます」
娘は愛想良く微笑んで応じた。
「何という曲なのでしょう」
「私にも分からないんです」
ライオスの質問にそう答えてから、娘の視線が空を向く。
「私は、ずっと昔から歌い継がれて来たという事だけしか知りません。それでも、とても好きな曲だと思ったので、時々此処で歌っているんです。こんな時代に不謹慎かとも考えましたが、歌を途絶えさせたくはなくて」
「そうでしたか。私もそう思いますよ。是非これからも歌い続けて行って下さいね」
「はい」
「それでは、私はこれで。素敵な歌を有り難うございました」
娘に別れを告げ、背を向けて歩き出す。
後ろから、見送るように歌声が聞こえて来た。
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