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普段は静かな建物の中が、不意に騒がしくなった。

先程目覚めたと連絡があったのだ。

もしも本当なら、これが最初の成功例かもしれない。

水面下に沈めるのが限界に近付いて来た中で、ようやく見えた希望だ。

最も、色々問題があるのは確かで。

厄介事が増えただけのような気もするけれど。

白衣を着た男が、心底面倒そうに廊下を歩いて行く。

そして一つの部屋の前で足を止めて頭をかいた。

目覚めたのは良いが、一体どんな者なのか。

こちらの思惑を理解して動いてくれるのか。

「全く、面倒事ばっか押し付けやがる……」

一人呟いてから、ドアを開ける。

「あ、お父さん」

中のベッド脇の椅子に座っていた娘が、ドアが閉まる音に気付いて立ち上がった。

「報告、ご苦労だったな。神無【かんな】」

軽く頭を下げる娘、清世【きよせ】神無を一言労ってから、ベッドに目を向ける。

そこに体を起こして警戒の目を向けて来るのは、まだ年若い青年。

顔つきは大人びてはいるが、少年と言っても良いかもしれない。

「起きたか。名前、何だって?」

「氷月【ひづき】さん、だそうです」

「氷月?聞いた事ねえな。どうせなら源義経とか織田信長とかが来てくれれば心強かったんだが……」

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