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大地はアパートの裏に回ると、一瞬足を止めた。

そこには人目を避けるように、ひっそりと小さな神社がある。

近くに住んでいても存在に気付いていない人がいるかと思われる程、それは山の斜面に繁る緑とアパートに挟まれながら静かにそこにある。

大地が会いに来た女性は、この天照【てんしょう】神社を一人で管理しているのだ。

赤い鳥居をくぐって中に一歩踏み込むと、はっきりと空気が変わるのを感じた。

体の細胞の一つ一つまで洗い清められるような、少しひんやりとしていて心地良い空気の流れが常に此処にはある。

この周囲の綺麗な空気の源は此処だと、大地は思っている。

質素な佇まいの社に向かって歩いて行くと、そこから赤い袴と白い千早に身を包んだ巫女が出て来た。

大地を見て頭を下げる。

「おはようございます。大地さん」

「おはよう。朝早くに申し訳無いな」

「いいえ、とんでもありません。困っている時はお互い様ですから」

大地はそう言って微笑んだ巫女を見返して息をつく。

今目の前にいる女性は、年齢は大地より少し下の22、3歳位だろうと思われた。

すらりとした体に袴と千早を全く違和感無く着こなし、長い黒髪を後ろで束ねている。

巫女と聞いたら大抵の人が想像するままの姿だ。

動作も静かで物腰も丁寧なのだが、初めて会った時の印象を引きずっているせいか少々苦手な感が拭えない。

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