へし切長谷部




ジリ、と後ずさりをすれば背中に木目の壁が当たった。固唾を飲み込みそろりと視線を下げれば、自分より背の高い男が跪き、退路を断つように腕で檻を作る。煤色の髪の近侍に見上げられるその仕草は、上から見下ろされる屈辱とは違いなぜかとても恥ずかしかった。子供を相手にするかのように、でも真摯に自分を見上げるそれとかち合って心臓が震える。
捕まってしまったのだ、主にだけ異常に敏感で生真面目なこの男に。
射抜くような眼差しが落ち着かず、平静を装いどうしたと問うより先に、こちらを見つめる長谷部が静かに口を開いた。

「主」
「な、なんだよ」

上ずりそうになる声を必死で抑えながら長谷部のまっすぐな瞳を睨み返す。

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