レオン・S・ケネディ




「日本人ってのはみんなアンタみたいに酔狂な奴ばかりなのか?オマケに自己犠牲心が強い。アンタだけか?」

差し出した手を力強く掴んだ男がひどく呆れた声で言った。
余計な問いかけには一切答えず、立ち上がった男を横目に瓦礫の山をかき分けた。積み上げられた木材や崩れたコンクリートに触れるたびに砂埃が舞い、咳き込むまえに二の腕の内側で口と鼻を覆う。ここはどこも息苦しい。
遠くで建物が崩れ落ちる音が響き、瞬く間に火の手が上がる。崩れた瓦礫を踏みつけた先、錆びた手すりに指をかけて階下へ目を向けるとウイルスに侵された、元は人間だったものが街を徘徊している姿が見えた。遠くでまた、爆発音が轟く。この場所は幸いにも安全地帯だが、崩れかけたビルの上から目にした光景はあまりにも残酷だった。

「……夢でも見てるみたいだ」
「そうだと願いたいね」

センチネルナインをリロードしながら涼しい顔で男が答える。
隣接するビルから爆破音と共に飛び込んできたタフな男。とうに割れて熱波と砂埃を吸い込むだけの窓枠に辛うじて届いたその手を咄嗟に掴んだのは条件反射だった。



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レオンに「酔狂」と言わせたかっただけなんですが、うっかり苦手なシチュエーションで書きはじめてしまったのでこちらで供養。

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