好きじゃないです多分 2
※変態山崎×ツンデレ主
※♡多用


とりあえずメールから始めて欲しいとお願いした。
そう、これは俺の身を守るためでもある。いくらす、す……すきかも(小声)とはいえあいつはAからZまでひとっ飛びしてくる。
俺は痛い思いも怖い思いもしたくない。人にはペースというものがあるからして、少しずつ知って少しずついろんな意味で慣らしていきたい。

というのも案の定、手っ取り早くお互いを知るために脱ごうねって全裸にされそうになったからだ。
覚悟を決めて精一杯の上目遣いと高めの声で「メールでぇ、いろいろやり取りしてぇ、仲良くなってくのが理想で…♡」と言えばあいつは「わかったよぉ♡」と甘ったるい声ですんなり聞き入れた。どうやら俺は余計な術を身につけつつあるようだ。

しかし立派だったのは返事だけ。その日のうちに小説のように長いメールが送られてきたのを見て、やっぱり付き合うなんて辞めればよかったと後悔した。好きなんてまやかしだ。こんな変態を相手にするなんて無理だったんだ。
今ならまだ引き返せるだろうか、と考える俺を加速させるように、今日も迷惑メールが届く。いっそのこと連絡先の名前、スパムで登録し直してやろうか?


「おはようなまえくん♡
今日は朝立ちしてたから、
なまえくんで抜いたよ♡」


いちいちお前のオナニー報告なんかいらないんだよ!しかも添付されてる写真、丸めたティッシュなんだけどそういうことか?!使った後ってことか?!
こないだだって事細かに情景描写まで書かれたメールを散々送り付けられてうんざりしたばかりだというのに。無駄に生々しくて気持ちの悪いメールに苛立っていると、また新しい着信を知らせる音。差出人は間違いなくあいつだ。


「ところでこの写真なんだけど♡
何かわかるかなぁ?♡
当たったらプレゼントがあるよ♡」


なんだこの茶色の画面。わかんないよこんなの。何かのアップ?みたいだけど近すぎる。肌色っぽいから多分顔面とか唇とかそんな感じだろ多分。当たったところで絶対プレゼントは俺♡とか言い出すしそんなの当てたくない。でも当てないとそれはそれでお仕置きって言われる気がする。俺には荷が重いよ…想像以上にめんどくさいよ…
あ、またメールきた。もしかして仕事してないのかな。


「さっきのは何かわかったかな♡
なまえくんなら余裕だよね♡
もしわからなかったらお仕置きかなぁ♡」


ほーらね!でたよお仕置き!しかも全部にハートマークをつけなきゃ死ぬ病気なのか?ツッコミどころが多すぎるメールにどうしようと頭を抱えていれば、今度は電話が鳴る。やばいことになった。なんと、俺にはメールを5分以内に返信しないと電話がかかってくる地獄のミッションがあるのだ。
無視すればいいと思うだろう。でも電源を切ると家まで来るんだよ?パトカーで来られた時は本当に焦った。そのせいでご近所さんがみょうじさんやらかしたのね、って目で見てくるようになったし、いいことなんかこれっぽっちもない。


「なんで電話出ないの?」

やたら鮮明な音声は真後ろから流れている。

「な、なんでここに…!」
「合鍵くれたじゃん」
「あげてないし…」
「もう返事来ないから何かあったのかと思って心配しちゃったよ」

今まさに何かあるんですけど。原因を作った張本人はものすごくしかめっ面をした俺のことを、かわいいかわいいと撫でまわしながら息を荒くしている。不法侵入に加えてわいせつ罪では?早くしょっぴいてほしい。お巡りさん頼むよ…仕事してよ……

「ところでさっきの答え、わかった?」
「答えって言われても、あの画像じゃわかんないですよ」
「わかんないならお仕置…」
「あっわかりました!まいう棒!ひえっじゃないですね、やだ笑顔で見つめないで怖いから!待って!今言います!」

俺が答えに詰まる様子を嬉しそうに見つめている。悔しい。でもあんなのわかるわけない。

「えっとぉ…………その、う〜ん…、山崎さん?」
「の?」
「の?!」
「本当に見てわかんない?なまえくんいつも欲しがって離さないだろ」
「それはどの世界線の俺ですか」

お前を欲しがったことなんて一度もない。記憶が改ざんされている。
とはいえ当てなくてはとんでもないことをされてしまう。いや当たっても絶対いいことなんてないんだけど。
携帯の画面に目を移してまた悩んでいれば、突然後ろから抱き寄せられる。すっぽりと腕の中に納まってしまった俺は抵抗しようと振り向くと、あまりにも顔が近くにあってびっくりしてしまった。
その目を見たら動けなくなって、縮められた距離にこのどきどきが違う意味を持ち始めていることをわかってしまう。やばいかもこれ。

「そんな赤くなってどうしたの?」
「これは別に……あっ山崎さん、あたって……!」
「なぁに?」
「あの、下………」
「わかんないなぁ。ちゃんと言ってごらん」
「やっ…やめ、」

ぐりぐりと押し付けるように腰を擦りつけられて、逃げようとしてもがっちりと押さえた手が離してくれない。

「なまえくんがいつも欲しがってるやつだよ?ね、恥ずかしがらずに俺に教えて」
「…………もしかしてあの写真」

山崎さんはにっこりと笑って頷いた。

「そういうとこ直せ変態ぃいい!!!!!」

なんてもの送り付けてきてんだ!とちょっとばかし手が出て当の本人は床に倒れてしまった。そもそも暴力的になってしまうのはこの変態のせいで、俺は別に殴ったりしたいわけじゃない。こんな変態に少しでもドキドキしたのかと思うと大きなため息が出た。さっきまでの気持ちを返せよぉ…

それでも次の日には懲りずに新しいメールが届くんだから本当にめげないよなぁ。
添付されてる写真にはかなり警戒するようになったけど。この人、自分で自分の首絞めてるってなんでわかんないのかな。
わざわざ教えてなんてあげないからな。



でも、こんな俺のどこがいいんだろ。そんなに執着されるほどできた人間でもないのに。
そう、こういうふうに「なまえくんもメールにもっとハートマークつけて」とか「ずっと電話つなげてて。寝てるときもずっとだよ」「今日の下着ってペドロ柄のやつだよね?お気に入りの」って変態なところさえなかったら俺だってもっと……いや下着は本当に何で知ってんの?
俺の抵抗すら受け入れるのもある意味包容力というか、なんだかんだ嫌だと言えば引いてくれるところもある。まぁ引くまでが長いけど。だけどその一線を見極めてくれているところはすごいと思っていたのに。最近やたらとしつこく迫ってくるようになった。どうやら同僚に彼女ができて諸々先を越されたらしい。

「付き合ってもう三か月だよ?!もうそろそろ良い頃だと思うんだけどなんで避けるのさ!」
「こういうのはぁ、気持ちがぁ、大事だと思うんですけど♡」
「もうその手にはのらないよ。かわいいってわかりながらやってんだからタチ悪いよね」
「騙されてください…♡」
「うっ…かわいい…でも今日こそK点突破するって決めたんだ。気持ちならだれにも負けないよなまえくんに痛い思いは絶対させないし絶対気持ちよくしてあげるからほら安心して俺にその体をゆだねてよ。大丈夫怖いことなんてない、ふたりなら何でも乗り越えていけるから信じて」

せっかく身に着けた猫かぶりも効かなくなってきて、ついには呪文のように聞きたくないワードを唱え始める。
その隙に逃げ出そうとしたけれど、山崎さんは目ざとく俺の肩をぐっと掴む。ここで負けたら俺はいろんなものを失ってしまう、と反撃に出ようとしたはずだった。

「今ならあの抽選予約でしか買えないゲーム機も買ってあげるから!」

その言葉に殴りかけた手を止めて、目を細める。

「…………そんなにしたいんですか?」
「今すぐハメたい」
「ひぇっっっっっっ」

やっぱり無理と思ってバシバシと叩く。いつもなら「でも、だって」とたんまり言い訳をこさえて迫ってくるのに今日はやけにおとなしい。俺の攻撃を受け入れながら、しゅんとした様子が少しだけ心配になってその場に留まる。

「せめて少しずつ距離を縮めさせてよ。俺ばっか好きみたいで寂しいんだ」
「それは…」
「何でも買ってあげるよ?」

これはもうお付き合いというより売春が近いのでは?と一瞬思ったが、それをぐっと飲み込んだのはなんとなく、本当になんとなーく可哀想になった。それだけで深い意味はない本当に。肩に回された手を許したのはゲーム機とかじゃつられないんだから、ね…



慣れた手つきで俺の家の鍵を開ける。鍵をあげた記憶はないが当たり前のように開けられるのを今日は黙ってみてた。
中に入れば俺のことをじっと見つめてくる。その真面目な表情、いつもとは違う雰囲気に充てられたのか、熱っぽい瞳を吸い込まれるように見つめてた。

「本当にいいの?」
「……うん。あ、でもちょっとずつ、してください……」
「はいよ。ちょっとずつね」

顔に手を添えられて、親指が俺の唇をなぞる。それに素直にドキドキしてしまう自分が自分じゃないみたいだった。

「目、閉じて?あっキス顔かわいい」
「うるさい…そういうこと言うとしないぞ」
「やだ。俺といっぱいキスしよ?」
「いっぱいはしな…っん、……う、んっ」

触れるだけのキスを何度もした。
そもそもキスなんて数える程度しかしたことない。俺が嫌がるから不意打ちのような形ばかりで、その度に山崎さんはいたずらっ子のように笑っていたのに。
好き、好きだよってくちびるがくっつく度にそう言われているような気がして、この人になら許してもいいかなって少しだけ思い始めてしまう。

「ん……っは、ぁ…」
「ねぇ、次はいつもよりえっちなキスしてもいい?」
「えっち…?」
「くちあけて」
「ん、あっ………んむ、っ…ふ、ぁ……」

ふわふわした頭で言われたとおりにくちをあけたら、にゅるりと中に入ってくる感覚。
これが舌だと気づいた時にはすでにぐちゅぐちゅと熱が絡まって、今までに感じたことのない気持ちになってしまう。
すべてを暴かれてしまうような舌使いにされるがまま。応えるのに必死で息だってうまくできない。助けを乞うように山崎さんの腕をぎゅっとつかんだ。

「…ん、大丈夫?」
「ふっ、こんな…、したことない…」
「そういうこと言われると、嬉しくなっちゃうんだけどな」
「んんっ……はぁ、…、ん、んぅ……っ」

やめてくれるという選択肢はないらしい。徐々に力が抜けていって、もはや山崎さんに支えられて立っているようなものだ。じわじわと目から涙だってあふれて、食べられちゃうのかなって思ったら少しだけ怖くなった。

「やまざき、さっ…、もう、しんじゃう……」
「ごめん、ちょっと急ぎすぎちゃった。今日はここまでにしとくね」

もっとえっちなことされるかと思ったのに。今すぐハメたいって言ってたのに。なのに、やめてくれるんだって思った。

「なぁにその顔。もしかして期待してくれてた?今晩はエロい顔したなまえくんをおかずに抜きます」
「そういうことは言わなくていい…」
「なまえくんがかわいいのがいけないんだよ。でも、もうちょっとだけこうしててもいい?」
「う、うん……」

山崎さんは俺のことを抱きしめながら大きく息を吐いた。自分を制するかのように。
ごめん、本当は下に当たってるものに気づいてた。でもそれに気づかないふりして、そもそも今日この先に進むほどの余裕なんて俺にはなくて。
山崎さんも無理に擦りつけたりしてこなかったし、本当にこれ以上は手を出さないんだって思った。こないだは嫌というほどしてきたのに今更紳士ぶって何だよ。

山崎さんの優しさに触れた気がして嬉しくなって、その体をそっと抱きしめ返した。
それだけで嬉しそうに俺の名前を呼んでくれる姿が、好きだと思った。

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はじめ