好き以上になりたい
※近藤×幼なじみ主


ずっとここに来たかった。
みんなと別れたあの日からずっと、一緒に過ごすことを考えて今日までを過ごしてきた。
新しい一歩を踏み出すため、意を決して前を向く。


「あの、すみません。近藤はいますか」
「局長に御用ですか。何かお約束でも?」
「あ、えっと、俺近藤の幼なじみで会いたくて来ちゃったんですけど…」

門番に声をかけたけれどじろじろと向けられる視線。
よく考えたら今じゃテレビで活躍を見るほどだ。約束もなしにそんな人とすんなり会えるわけが無い。
どうしよう。完全に怪しまれてる。それすらも考えられないほど勢いのまま出てきてしまったことを今更後悔した。
幼なじみなのに会うことすら出来ないなんて、また置いて行かれたような感覚に悔しくなるが、そんなことがこの人たちに伝わるわけもなくただ問われるだけだ。

「なまえさん!?」

うまい言葉が出てこなくて戸惑っていると、大きな声で名前を呼ばれ顔を上げる。
門の先、そこにはあの3人がいた。
ばっちり目が合うと真っ先にこちらへ駆け寄ってきたのは総悟だった。
門番の人は本当に知り合いだったのかと納得して通してもらうと同時に、すらっと伸びた手で俺にぎゅうっと抱きつく総悟。
こんなにでかくなっても中身は可愛い子供のまま変わっていないなと感じて懐かしさがあふれてくる。

「お久しぶりでさァ、なまえさん」
「久しぶり、総悟大きくなったね」
「ったく来るなら手紙のひとつでも寄越しゃいいのに」
「十四郎…!ごめん、びっくりさせたくて」

ちくりと小言を言いながらこちらへ来た十四郎。でも少し顔が笑ってるの見逃さなかったぞ。
その後ろには今にも泣きそうなほど目をうるうるとさせた勲がいて思わず笑ってしまった。

「みんなといたいから追っかけて来ちゃった」
「なまえ〜!!」

あ、勲が泣いちゃった。
俺もなんだけどね。


***

「活躍もよくテレビで見てたよ。総悟がバズーカ持ってるとこばっかりだけど」
「総悟はまだまだやんちゃでなぁ!こないだもお店の椅子を全部破壊して大変だったぞ」
「おかげで無駄な仕事が増えるばかりだ」
「土方の野郎が避けなきゃ仕事は増えないんですがねィ」
「相変わらず仲が良いみたいで安心したよ」
「「良くねーよ」」

部屋に通されてからは武州にいたころのような時間を過ごしていた。
みんなと向かい合って話しながらも、その姿をまじまじと見てはみんなかっこよくなったなぁと時間の流れに浸る。
総悟はもう彼女できたりしたかな。十四郎はあれだけど、勲もやっぱりこっちで誰かと…ふわふわとした気持ちを見抜くように鋭い目つきをした十四郎がこちらをみていた。
そろそろ本題を話せってことだろう。理由なんてひとつしかないのわかってるくせに。

「俺も真選組に入りたい」
「ええええなまえ本当?!どうしよう何番隊がいいかな!?」
「俺と同じ隊にしやしょう。ただし危ないんでなまえさんは食堂の安全を守ってください」
「そんなん仕事じゃねぇだろうが!」

また一緒だと喜んでくれる勲と総悟とは反対に、十四郎だけは目をきつく釣り上げたままだ。

「お前がなんであそこに残ったかわかってんのか」
「親のことならちゃんと説得したよ。後から全部きいた」

置いて行かれたあの日、てっきり自分も一緒に江戸に向かうのだと思っていたのに別れを告げられた。
旅立つ背中を見れないほどぼろぼろに泣いて、幼なじみの勲から広がった仲間の輪は本当は俺だけいらなかったのかとすら思った。
みんなとの想い出が頭の中を駆け巡るたび、毎日さみしくって女々しいほどに泣いてれば流石に気の毒に思われたよ。
まさか親が連れて行かないでほしいとお願いしてた、なんて俺だけが知らなかったんだ。

「やっぱり俺だけ違うとこにいるのは、さみしいよ」

さっきまでみんなを捉えていた視界がにじんでぼやける。
毎日その言葉しか出てこなかったんだ。置いてかれた理由を知ってからは尚更ね。
みんなが俺のことを思ってくれたのも痛いほどわかる、それでもさみしいものはさみしかった。

「なまえごめんなぁ。無理やりにでも連れていくべきだった、しかし…」
「みんなは悪くないよ。むしろ迷惑かけちゃってごめん」

勲が手をとって謝ってくるから、そんなの俺のほうこそ困らせてしまったのに申し訳なくなる。
総悟も俺のもとへ寄って来たかと思えば、ぎゅうと抱きついて頭をぐりぐり当ててくるから、その昔と変わらず甘えたな様子がかわいくって勲と顔を見合わせて笑った。

「なまえさんはずっとここに居るって今決めやした。近藤さん、これ局長命令ですよねィ」
「おう!なまえはずっと俺たちといること!これを罰するものは切腹!」
「オイ、何勝手に決めてんだ。まだ決まったわけじゃ…」
「土方さんひでーや。なまえさんと一緒にいたくねーなんて頭までマヨネーズに犯された証拠でさ」
「マヨネーズ関係ねえだろ!別に俺だってなまえを置いていきたかった訳じゃねぇし」
「なら決まりだな!ようこそ真選組へ!」

またみんなと過ごしたい一心でひとり、江戸にやってきた。
ずっと願ってたことがすぐに叶えられてしまうなんてちょっとだけ夢みたい。
嬉しくて止まらない涙を勲にやさしく拭われて、数年分のあふれた気持ちが救われていくようだった。


***

ほどいた荷物を片付けながら準備をしていると、襖が開いて十四郎が入ってきた。
もうちょっと待って、と断って手を急がせると、その様子をじっと見ていた十四郎が口を開く。

「本当に後悔しねぇか」
「俺はみんなといたい、それはずっと変わらないよ。真選組に入るために剣術だって昔よりはましになったし」
「相変わらず上手くはねえんだな。総悟に稽古でもつけてもらえ」
「本当総悟にお願いしようかな、ってまだ心配そうな顔してる。本当にちゃんと説得して来てるから大丈夫だって」
「それは疑っちゃいねえが…近藤さんのことだ」

さっきと同じなんでもお見通しとでも言わんばかりの瞳、心臓がうるさくなる。

「全部が全部昔と同じってわけじゃねぇ。お前はそれでも平気か」

十四郎だけは昔から抱いている感情に気づいていた、俺が勲のことが好きだということを。
それを知っても尚、変わらずに接してくれるのだ。

「……十四郎は優しいね。でもみんなといたいってのも本当だから。それにさ、何があっても俺は受け止めるしかないでしょ」
「そんくらいでけぇ器がありゃ大丈夫だな」

ふたりでニヤリと笑い合う、この感覚も懐かしいな。
きりがよく準備を終えたことを伝えると、立ち上がって向かった先はお風呂だ。
十四郎はここだからとだけ伝えて動こうとしない。

「あれ?入らないの?」
「俺はもう入った。あと今、近藤さんしかいねぇから」
「はぁっ!?なんで?!」
「やっとなまえと会えたからふたりでゆっくりしてぇんだってよ」

せいぜいがんばりな、と言葉を置いて去っていく背中に恨めしさを感じるもしぶしぶ中へ入る。
ばしゃり鳴り響く水の音が人がいることを知らせると、戸惑って着物を脱ぐ手が止まってしまうのがなんだか情けない。
昔はよくみんなで風呂入ったしこのくらい普通なんだけどさ、久しぶりに会えただけで嬉しいのにこれはまだ予想してなかったというか、ふたりっきりってなんだよぉ…
でも待たせるわけにはいかないと、意を決して扉を開けばすぐに目が合う。

「なまえ〜待ってたぞ!トシがせっかくだからふたりで入ればいいってなぁ!」

風呂に浸かっていた勲が手をひらひらとさせながらこっちに近づいてきて…っタオル!タオル巻いて!じゃないと風呂入る前からのぼせちゃう!
そんな心の声なんて知らない勲はのんきに「頭洗ってやろうか」と言い出すし、されるがまま頭だけ洗ってもらって(体は触られたら絶対勃つと思って死守した)肩を並べて風呂に浸かる。

「ふぅ〜…いつもはまとめて入るから騒がしいんだが…今日だけは特別にふたりにしてもらったぞ」

特別。その言葉がくすぐったくて、気持ちを隠すように口元まで風呂に浸かってはぶくぶくと音を立てた。

「なまえ、俺はお前が来てくれて本当にうれしく思ってるぞ。恨まれてもしょうがないと思ってたからなぁ」
「恨むはずないよ。むしろ本当のこと聞くまで俺のこといらないから置いてったんだと思ってた」
「それこそありえんよ、こっちに来てもいつもなまえの話してたくらいだ」

総悟もなまえがいないと大変でな、と続いて俺がいない間にあったことを聞かされる。
ひとつひとつ思い出を知るたびに、この数年でみんなの中から俺がいなくなったわけではないのだと、離れていても必要とされていたのだと感じる。
ちゃんとみんなの中に俺が存在していたことがうれしい。

「俺もここでみんなと思い出作っていけるかな」
「当たり前だろう、それにもしなまえが悩むことがあれば遠慮せず俺に言ってくれ!」

きらきらとした瞳はあの頃とおんなじだ。この人だけは昔から変わらないんだろう。
純粋に人を大事に思いやって、優しすぎる人柄に心配することもあったけど、すべてまとめて包んでしまうほどあたたかい心。だから俺は…

「………そういうとこが昔から、好きなんだよ」
「へっ?!好き?!?!」

きょとんとした顔の勲と目が合う。
え、うそ。俺もしかして今声に出してた…?

「好き、ってなまえ…今、どういう…」
「あ、っああああーーー!なんだかのぼせちゃったから先に出るね!」

勲が後ろから呼んでもしらない!きこえない!これは全部夢だ!
でもあんな反応するとは思わなかった。気にせず「俺も好きだぞわはは(幼なじみとして)」って副音声聞こえるやつじゃないの。
そんなの余計恥ずかしい。どうしよう。もし俺の気持ちがバレちゃってたら。それこそもう帰るしかないんじゃ…
初日からこんなヘマしでかすなんて、久しぶりに会えて浮かれてたのかな。

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はじめ