「ナタリアァア!」



ルークとティアを魔界に残し、アッシュを加えた一行はベルケンドに到着した。街に入るなり早々ナタリアの名前を叫びながら走ってきた少女が、効果音がつきそうなほど強く彼女に抱きついた。もはや恒例となりつつある光景に、一行はただ呆れ果てていた。



「名前!どうしてベルケンドに?」

「ナタリアがベルケンドにいるって、わたしのセンサーが察知したのさ!」

「ははは、迷惑極まりないセンサーですねえ」

「うるさいなあ、いじわる眼鏡」



ナタリアに名前と呼ばれた少女は、ジェイドのごもっともな言葉に毒づいたが、あふれ出る恐怖に負けて思わずナタリアの背中に隠れる。

そもそも名前は六神将補佐官であり本来ならば敵同士にあたるのだが、彼女自身が幼馴染であるナタリアと敵対したくないことと、ヴァンの理想に反することを理由に半分味方と化している。



「大佐。彼女をいじめるのはおよしになって」

「やれやれ、参りましたね」



ナタリアはそんな幼馴染にすこぶる甘かった。明らかにジェイドの言葉が正論でも、ナタリアは名前を怖がらせたことを理由に彼を注意した。強すぎる幼馴染同士の絆に、さすがの死霊使いもお手あげのようだ。



「おい、屑。遊んでないでさっさと報告しろ」

「いだだっ!わかった、わかったから!」



しばらくナタリアの後ろに隠れ、説教を受けるジェイドをざまあみろとでも言いたげににやにやと見ていた名前の耳を、額に青筋を立てたアッシュが思いっきり引っ張る。その顔はかなりご立腹のようで名前が睨み返してもさして意味はなかった。



「うるせえ!さっさとしろ!」

「わかったから離してよ!痛いっ耳とれる!」

「サボり魔のおまえを信用できるか!」

「ひど!ナタリアー、上司がいじめるよー!」



またもやナタリアに泣きつく名前。しかしナタリアは先ほどのように説教することを渋った。なぜなら相手は好意を寄せるアッシュであり、かつ自分にはわからない会話で喧嘩をしているからである。

幼馴染の名前のことは心から大切である。しかし、嫉妬という醜い感情がナタリアの心の邪魔をしてしまう。



「昔からそうやってナタリアに泣きつくのはやめろ!」

「ふっふーん。ナタリアは渡さないもんねー」

「まあ、名前ったら…」

「……ッチ!」



一方、アッシュは名前に抱きつかれているナタリアを羨ましく思っていた。誘拐事件のあと窓の外にいる自分に唯一気がついて「ルーク」と呼び、全てを投げ出して自分についてきてくれた名前に恋心を抱いているからだ。つい愛情ゆえに手を出したり、暴言を吐いてしまう自分を悔やみながら名前との攻防戦を続ける。



「ナタリアは抱き心地最高だねえ」

「ふふ、名前も心地よくってよ」



一方、名前はアッシュなど目にもとめておらず彼女の視界にはいつもナタリアだけが映っていた。彼女の頭は1にも2にもナタリアでできている。すでに幼馴染の領域を越えたそれがどこからきているのか、というのは彼女とナタリアの過去に繋がるのだが今は割愛しよう。とにもかくにも名前は親馬鹿ならぬナタリア馬鹿なのである。



「アッシュなんか怖くないもんね。わたしにはナタリアがいるもーん」

「おい名前!いい加減にしろ!」

「アッシュも名前もおやめになって!」



めぐりめぐって三角形の感情を抱く幼馴染を傍観している仲間たちは全ての事情を知っており、ある人物は鋭く目を光らせ、ある人物は苦笑いを浮かべ、ある人物は愉快そうに笑むのだった。

また喧騒な三角関係の攻防戦がはじまる。





まるで漫才のような三角関係
(相変わらずうるさくて飽きませんねえ)
(ははは…誰か止めてやれよ)
(それなら幼馴染のあなたが止めてあげては?)
(嫌だよ、まだ死にたくない)
(だめですよぉ!こんなに面白い話滅多にないんだからもう少し好きにさせましょ!)
(しょ、性悪だ…)


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