注意
性格が捏造されています
かっこいいジェイド、優しいティアはいません
なんでもござれ!な方のみお進みください
シルフデーカン・レム・14の日。世の乙女たちが淡い気持ちをチョコレートにのせて伝える日。
宿屋のキッチンを間借りしたアニスは、万全の態勢で女性陣を集めた。
「今からみんなでチョコレート作るよ!」
「え、めんどくさい」
「こんな時間に食べたら太ってしまいますわ」
「眠いわ」
「やる気ゼロかよ!」
自由に感情を吐露した名前、ナタリア、ティアに対し、アニスは目くじらを立てた。
今日という日にチョコレートを作る意味を、アニスが改めて説明するとナタリアは首を傾げる。
「名前、ばれんたいんとはなんですの?」
「一年でもっとも滅んでいい日だよ」
「ちっがああう!なに物騒なこと言ってんの!」
「私も名前の意見に賛成するわ」
「カップルや片想いの子の変な高テンション…」
「今か今かと落ち着かない男たちの熱視線…」
「うざいったらない」
「うざいったらないわ」
重なる名前とティアの言葉。ふたりは意気投合し今度お茶をする約束を交わした。
初っ端から不穏な空気を察知したアニスは頭を抱えながらも、気持ちを切り替えるため大きな声で今日の予定を宣言した。
「とーにーかーく!今からバレンタインにのっとって男共にチョコを作るから!」
「まあ!腕が鳴りますわね!」
楽しそうに笑うナタリアの発言に、誰もが言葉を失う。彼女は根っからの料理音痴であった。
「あら。どうなさいましたの?」
「なんでもないよ!うん、ナタリアは普段通りでいいよ。…大丈夫だから…うん」
自分に言い聞かせている名前の呟きを、ティアとアニスも心の中で言い聞かせたあと、アニスがひとつ咳払いをして空気を変える。
「じゃ、これからあたしたちで野郎共にチョコを作りまーす!あたしはイオンさま、ティアはルーク、名前は大佐、ナタリアは…ガイ」
「……ガイ、さようなら」
「惜しい人を亡くすな…」
「わたくしにお任せなさい!それで、早速なにをすればよろしいですの?」
ティアと名前が合掌し、ナタリアが自信満々に胸に手を当て、ようやくチョコレート作りが開始される。
Lesson.1 チョコを砕きましょう。
「簡単ですわね!」
「うん、そうだね」
「ちょっと待てええい!」
意気揚々とチョコレートを砕く準備をしたナタリアと名前に、アニスがすかさず止める。
待ったをかけられたナタリアは首を傾げ、名前は不思議そうにアニスを見つめた。
「なに?」
「なにじゃないよ!なんで武器構えてんの!?」
「わたくしの矢に砕けぬ物はなくてよ!」
「粉にする気かッ!名前は!?」
「だって食べるのジェイドでしょ?譜術入りなら譜術が強化され…」
「ないから!お願いだから普通にしてよお!」
そのやりとりを見ていたティアが、持っていたものをそっと背後に隠した。
「ティア、今なんか隠さなかった?」
「なんでもないわ」
訝しげに見つめるアニスに悟られないよう、いつも通りに返答したティアの後ろ手には、しっかりとメイスが握られていた。
Lesson.2 湯煎にかけましょう。
「湯煎とはいったい?…はっ!きっとお煎餅のことですわね!?」
「閃いた!みたいに言ってるけど違うから!」
ぜえはあ、と肩で息をしながらも全力で突っ込むアニスに「あんま無理しないでね」と名前が労わるが、アニスは「あんたのせいでもあるから」と心の中で毒づきながらも「大丈夫」と精いっぱいの笑顔を見せた。
「お湯の上にボウルを置き、そのボウルの中に砕いたチョコを入れてゆっくり溶かすことよ」
「あら、簡単ですのね!」
「本当に大丈夫ぅ?さっきもそう言って…」
「あ、焦げましたわ」
「早ッ!ほらぁ、言わんこっちゃない〜!」
「ナタリア、砂糖入れてみたら?」
「そっそうですわね!お砂糖、お砂糖…あら?」
「どっさりと入ったわね」
「なにやってんの、もうー!」
「っていうか、これしょっぱくない?」
「塩だよこれぇ!」
「わたくしとしたことが間違えましたわ!?」
密かに「まあ食べるのガイだし別にいいか」と考えている名前とティアの不穏な空気を察知したアニスが怪訝な表情でふたりを見つめる。
「アニス、なんだか焦げ臭いですわ」
「ああああああ!?」
Lesson.3 型に入れてトッピングしましょう。
「…あとは好きな型に溶かしたチョコを入れてトッピングしたら冷蔵庫で数時間冷やすだけだよ」
はちゃめちゃなナタリアたちに構ううち、自分のチョコレートも少し焦がしてしまったアニスは意気消沈していた。
そんなアニスを見かねて、疲れているなら休むよう心配そうに声をかけてくれたナタリアに、アニスは「あんたらのせいだよ!」と怒りたいところをまたもグッと堪えて笑ってみせた。
「どんなトッピングでもいいのかしら」
「うん。材料はそこに置いてあるから自由に使っていいよ」
「それには及ばないわ」
ずらりと、ティアが机の上に並べたものは薬草だった。キッチンには似つかわしくない匂いが立ち込める。
「この薬草ってどんな効能があるの?」
「理解力、集中力、無言率アップ」
「なるほど。つまりティアは、仮にも本編の主人公であるルークに黙れと?」
「ええっ」
ティアの今日イチ眩しい笑顔に、名前は思わず目を細めた。考えていることが別のことならただの可憐な少女なのにと残念に思いながら。
「ふたりとも、できたぁ?」
「ええ、完成したわ。あとは冷やすだけよ」
「一応わたしも。……ナタリアは?」
「わたくしも完成しましてよ!」
胸を張って答えるナタリアの作品に3人は目を背けた。共通した感情はガイへの哀れみである。
「じゃ、じゃあ冷蔵庫投入ー!」
どたばたクッキング
(さあ、ガイ!腕によりをかけて作りましてよ!召し上がってくださいな!)
(ありがとう。い、いただくよ……うっ!?)
(ガイが倒れてしまいましたわ!?)
(すみません、イオンさま…。みんなに構っていたらチョコレート焦げちゃって…)
(トッピングのおかげで苦味はほとんどしないので大丈夫ですよ。ありがとう、アニス)
(えへへ〜!どういたしまして!)
(ぶはっ!なんだよこれ!?苦ぇぞ!)
(薬草が足りなかったのかしら。より多く摂取すればそのうち効いてくるはずだから完食して)
(…こんな苦いのを全部って鬼かよ、おまえは。まあ、せっかくだから食べるけどよ…)
(なぜ板チョコ型なんですか)
(元は板チョコだし)
(市販じゃないでしょうね?…しかしまあ、私がいちばんまとものようですね。よかっ…)
(ミュウにはこれね)
(ありがとうですの、名前さん!かわいいハート型ですの!嬉しいですの!)
(え。ちょっと、本当に市販じゃ…)
(ミュウ、おいしい?)
(はいですの!とってもおいしいですの!)
(ねえ、聞いてます?市販じゃないですよね?)
(うるさい。邪魔すんな)
(…………)