注意
前作「ガールズ」既読推奨
性格が捏造されています
なんでもござれ!な方のみお進みください
「なあ、あいつら集まってなにしてんだ?」
散歩からの帰り道でキッチンの前を通ったルークは男部屋に戻るなり、目撃して感じた疑問を口にした。ルークと散歩を共にしていたミュウは「甘い匂いがしたですの!」と目を輝かせている。
「今日はみなさんで料理をするそうですよ。なんでもバレンタインという行事だとかでアニスが張り切っていました」
「ばれんたいん?」
「女性が男性にチョコレートを渡す日らしいぜ」
「へえ。ラッキー!」
「そうとも限りませんよ」
窓際の椅子に座り、優雅に足を組んで本を読んでいたジェイドが、ページを捲る手を止めて眼鏡のブリッジをあげる。
「なんでだよ?」
「考えてもみなさい。料理ですよ?あの中に誰がいると思っているのですか?」
「誰って、ティアと名前とアニスと…あ」
女性陣の名前を指折り数えたルークは、料理をさせてはいけない名前にたどり着き絶句した。同時に察したガイの表情も青ざめていく。
「だ、大丈夫ですよ!アニスがついていますし、名前やティアもいるじゃないですか」
「おふたりの料理、美味しいですの!」
「いや、それはどうかな」
安心しているイオンとミュウをよそに、ガイは不穏な言葉を漏らした。ガイの言葉にふたりは首を傾げる。
「名前の料理は美味いんだが…なあ?」
「うん。精神的ショックを受けるときがある」
「精神的ショックですか?」
同意を求められたルークもまた、当時を思い出しているのか眉間に皺を寄せながら小刻みに震えていた。明らかに怯えている様子から、相当なものなのだろうとイオンはごくりと喉を鳴らした。
「名前を怒らせた日に、あいつ料理作ってくれたんだけど、美味いステーキが出てきて黙々と食べてたら突然、昨日たくさん散歩させた甲斐があったわ、なんて満面の笑みで言われてさ…。もちろん嘘だったんだけど、名前を怒らすと必ずそういう精神攻撃をしてくるんだよ」
「それは、なんといいますか…」
「無理に庇わなくていいんだ、イオン。俺たちはもう慣れた。それに名前を怒らせなければいつも通りの美味い飯が食えるから」
「上等ですね。私なら返り討ちにしますが」
ジェイドの自信満々な言葉に、ルークとガイは思わず顔を歪めた。まるで可哀想なものを見る目でこそこそと肩を寄せ合い小声で話す。
「旦那がいちばん危ないんだがな…」
「あいつ、ジェイドの余裕綽々な態度が気に入らないってカトラス折りながら言ってたもんな…」
「なにか言いましたか?」
世の中には知らないほうがいいこともある。ルークとガイは揃えて首を横に振った。
「僕の分はアニスが担当するそうですが、みなさんは誰に作っていただけるんでしょうね」
「は?ちょっと待て。チョコってあいつら全員で作ったものを俺たちが食うんじゃないのか?」
「いえ。みなさん一緒に作りますが、個人で作ったものを個々に割り振られるそうですよ」
「ってことは…」
「ナタリアの料理が…」
「誰かに当たりますねえ」
その瞬間、男部屋が凍りつく。
必死な声で静寂を切り裂いたのはルークだった。
「俺ヤダ!ぜぇってえヤダ!」
「落ち着けって。ルークの担当がナタリアだって決まったわけじゃないだろ?」
「ならガイはいいのかよ!?」
「嫌だよ。まだ死にたくない」
もはや涙目のルークに落ち着けと言う割に、ガイはあっさりと拒否の言葉を口にした。彼の頬に冷や汗が垂れる。
「それなら名前の料理のほうがマシだ!」
「おや、ティアはどうなんです?」
「なんつーか、最近のティア怖いんだよな…」
喋るたびに冷たい視線を浴びせられたり、戦闘で危うく譜術を当てられそうになったり、とルークはティアの暴挙を恐る恐る口にした。
「なに入れられるかたまったもんじゃねーよ…」
「なら俺はティアの料理がいいな。俺に被害ないし。旦那は名前の料理がいいのか?」
「ええ、もちろん」
ガイの問いかけに即答するジェイド。さも当然と頷き、いまだ必死な形相のルークに挑戦的な視線を投げかける。
「ルーク、名前は渡しませんよ?」
「俺だって名前は誰にも渡さねえ!」
恐らくジェイドは名前本人と料理のことを、ルークは名前の料理のことを指して言っていることに対して「誤解を生むようなことを…」とガイは呆れた様子で笑った。
「ふふ、楽しみですね」
「楽しみですのー!」
そして悪夢がはじまる
(ガイ!大丈夫ですか!?)
(うっ……うぅ…)
(ルーク?話せますか?)
(…………)
(ジェイド…泣いているのですか?)
(……ぐすっ…)
(みなさんチョコレートの犠牲に…)
(みゅーっ!名前さんにもらったハート型のチョコレート美味しいですの!イオンさん?どうしたんですの?)
(……ブタザル)